特殊な性質をもつ粒子にコロイド粒子があります。なぜ私たちはコロイドを学ぶのかというと、ほかの粒子にはない特徴があるからです。
コロイドには種類があり、疎水コロイドと親水コロイドに分かれます。疎水コロイドと親水コロイドでは性質が異なるため、それぞれの特徴を覚えましょう。
またコロイド粒子ではチンダル現象、ブラウン運動、電気泳動、透析と呼ばれる特殊な性質があります。それぞれが何を意味しているのか理解しましょう。
コロイド粒子の基本を学ぶとき、計算問題はありません。つまり、コロイドの特徴を覚えていることが重要です。そこで、コロイドの特徴を解説していきます。
もくじ
コロイド粒子の定義と特徴
まず、コロイドとは何でしょうか。私たちの身の回りには、多くのコロイド溶液が存在します。例えばバターや牛乳、ヨーグルト、インク、塗料はコロイド溶液です。また霧やスモッグ、煙もコロイドです。
直径が10-9~10-7mの粒子をコロイド粒子といいます。また、コロイド粒子が均一に分散している状態をコロイドといいます。
牛乳であれば、水溶液の中に脂肪(コロイド)が均一に分散して存在しています。長時間放置しても沈殿することはなく、水溶液中に常に浮遊しています。こうした粒子がコロイド粒子です。
またコロイド粒子は正または負の電荷をもつ性質があります。つまり、以下の2つの性質を有するのがコロイド粒子です。
- 直径が10-9~10-7m
- 正または負の電荷をもつ
なおコロイドの中でも、溶液中にコロイド粒子が均一に分散して存在しているときはコロイド溶液となります。そのため、牛乳はコロイド溶液です。
なおコロイド溶液の中でも、牛乳や、ヨーグルト、インクなどのように流動性があるコロイド溶液はゾルと呼ばれます。
一方、ゼリーやプリンのように流動性のないコロイド溶液をゲルといいます。ゲル(Gel)はGelatin(ゼラチン)に由来しています。ゼラチンはゼリーを作るときなどに利用され、液体を固体にするときに使われます。
ゾルとゲルの覚え方では、ゲルの名前の由来を理解しましょう。「ゲル=ゼラチン=固体」と覚えれば、ゲルも理解できるようになります。
疎水コロイドによる凝析と親水コロイドによる塩析
なおコロイドを性質で分類すると、疎水コロイドと親水コロイドに分類されます。疎水コロイドについては、少量の電解質を加えることによって沈殿します。
前述の通り、コロイド粒子は正または負の電荷をもちます。例えば正の電荷をもつコロイド粒子の場合、同じ電荷をもつコロイドが水溶液中に存在することによって反発しあい、水溶液中で均一に分散します。
このとき電解質を溶かすとイオンとなり、プラスとマイナスの電荷を帯びるようになります。そこでコロイド溶液に電解質を加えると、電解質がもつ影響によってコロイド粒子同士の反発が打ち消されます。例えば正の電荷をもつコロイド粒子に対して、マイナスの電荷をもつイオンが影響を与えます。
これによってコロイド粒子同士の反発力がなくなり、疎水コロイドは沈殿します。これを凝析といいます。水への親和性が低い無機物質は疎水コロイドであり、少量の電解質を加えることでコロイド粒子同士の反発力が失われます。
一方でタンパク質やデンプン、ゼラチンなどは水との親和性が強いです。水との親和性が強いコロイド粒子は有機物質に多く、少量の電解質を加えても沈殿しません。ただ、多量の電解質を加えると、疎水コロイドと同様に沈殿します。
こうした性質をもつコロイド粒子を親水コロイドといいます。また、親水コロイドへ多量の電解質を加えることにより、沈殿する現象を塩析といいます。
親水コロイドが少量の電解質で沈殿しない理由としては、溶液中に電解質が存在しても、水分子と吸着(水和)できるため、水溶液中を浮遊できるからです。少量の電解質では水分子と親水コロイドを引き離すことができないため、塩析を起こすためには多量の電解質が必要になるのです。
保護コロイド:親水コロイドで疎水コロイドを保護する
なお親水コロイドの性質を利用することにより、疎水コロイドの沈殿(凝析)を防ぐ方法があります。
疎水コロイドが存在する水溶液に対して、一定量以上の親水コロイドを加えると、親水コロイドが疎水コロイドの表面を取り囲みます。
こうして、疎水コロイドは親水コロイドと似た性質をもつようになります。つまり、少量の電解質を加えても沈殿しにくくなります。このように、疎水コロイドを取り囲むことで保護しているコロイドを保護コロイドといいます。
保護コロイドは私たちにとって身近です。例えばマヨネーズでは卵黄(親水コロイド)が油滴を取り囲んでいます。つまり、卵黄は保護コロイドとして機能しています。
コロイド溶液の性質
次に、コロイド溶液の性質を学びましょう。コロイド特有の性質としては以下が有名です。
- チンダル現象
- ブラウン運動
- 電気泳動
- 透析
それぞれの性質を確認していきます。
チンダル現象:光を当てると散乱する
すべての人がチンダル現象を見たことがあります。霧や煙がコロイドであることからわかる通り、コロイド粒子は目に見えます。つまり粒子の中でも、比較的サイズの大きい粒子がコロイド粒子です。
そのためコロイド粒子に光が当たると、光が散乱することで光の筋が見えます。例えば霧や滝から落ちる水しぶきなどに光が当たると、光の筋が見えます。この現象をチンダル現象といいます。
以下は太陽の光によってチンダル現象が起きている様子です。
霧やホコリに光が当たると光の筋が見えるのはチンダル現象が起こっているからです。
ブラウン運動:コロイド粒子は不規則に動く
物体に力が加わると、通常は一定方向に動きます。ただコロイド粒子の場合、動く方向が常に変化しています。例えば左に進んでいたコロイド粒子は0.1秒後に右に動き、その0.1秒後には下に移動します。このように、コロイド粒子は動きが不規則なのです。これをブラウン運動といいます。
なぜコロイド粒子がブラウン運動をするかというと、その他の分子がコロイド粒子に衝突するからです。
例えばコロイド溶液では、水分子が絶え間なくコロイド粒子に衝突しています。ただ水分子が衝突する向きは異なります。左側から多くの水分子が衝突するときがあれば、0.1秒後には上側から多くの水分子が衝突することもあります。こうして、コロイド粒子はブラウン運動をします。
水分子は目に見えません。一方、コロイド粒子は目に見えます。その結果、コロイド粒子が不規則な動きをしているように見えるのです。
電気泳動:電気を加えるとコロイドが移動する
先に述べた通り、コロイドは正または負の電荷を有しています。そのため、電気を流すことによって正極または負極にコロイドが移動します。この現象を電気泳動といいます。
コロイドが正と負のどちらの電荷を有しているかというと、代表例は以下になります。
正コロイド | 水酸化アルミニウム、水酸化鉄(lll)、タンパク質 |
負コロイド | デンプン、石けん、粘土、硫黄、金、銀、白金 |
このように確認すると、ほとんどが負の電荷を有していることがわかります。参考までに、正の電荷を有するコロイド粒子は基本的に金属水酸化物とタンパク質のみです。
なお電気を流すと、正コロイドは負極へ移動し、負コロイドは正極へ移動します。電気泳動はアミノ酸やたんぱく質、DNAの分析でも重要な実験操作であり、多くの場面で利用されています。
透析:半透膜を利用し、小さい分子やイオンを取り除く
コロイドは大きい粒子であるため、半透膜を通過することができません。一方、半透膜に存在する穴の大きさを調節すれば、水などの小さい分子だけでなく、水に溶けているイオンも通過できます。
そこでコロイドとイオンが混ざっている溶液を半透膜の袋の中に入れれば、小さい分子(水など)やイオンのみ袋の外へ移動できます。一方、コロイド粒子は移動しません。
半透膜を利用すれば、不純物(イオン)とコロイドが混ざっている溶液について、半透膜の袋の中にコロイドのみを残すことができます。不純物は半透膜の袋の外へ排出されるからです。このようにして、コロイド粒子を分離する方法を透析といいます。
透析は人工透析や人工腎臓(血液のろ過)など、多くの場面で応用されています。不純物を取り除くとき、コロイドの性質は大きな役割を果たすのです。
コロイドの特徴を理解する
化学でコロイドを学ぶとき、コロイドの性質を覚えるのがメインになります。計算問題が出されることはありません。
ただコロイドの性質を理解するのは非常に重要です。コロイド粒子は私たちの身の周りに存在しており、日常生活の多くの場面で応用されているからです。そこで疎水コロイドや親水コロイドの種類を覚えましょう。また、保護コロイドの役割を理解しましょう。
その後、コロイドに特徴的な性質を学ぶ必要があります。チンダル現象やブラウン運動、電気泳動、透析はコロイドの特徴です。
私たちは毎日、コロイドによる自然現象を見ていますし、コロイドの性質を利用して料理を作っています。そこで、コロイドの特徴を理解しましょう。