物質同士の化学反応を取り扱う学問が化学です。化学を学ぶとき、最初に習う内容の一つが純物質や混合物、単体、化合物の違いです。
物質には複数の種類があります。化学で学ぶ内容は純物質がメインであり、混合物ではありません。そこで、まずは純物質と混合物の違いを見極めましょう。また純物質には単体と化合物があり、それぞれの違いを知りましょう。
なお同じ原子で構成されているものの、大きく性質が異なるケースがあります。これを同素体といいます。同じ純物質であるにも関わらず、性質が違うのです。
化学の初歩では、物質の分類分けを行えるようになりましょう。そこで、純物質・混合物・単体・化合物の違いと同素体の概念について解説していきます。
もくじ
すべての物質は原子・分子で構成されている
化学を学ぶのが重要なのは、すべての物質は原子と分子で構成されているからです。私たちの体は原子と分子で構成されていますし、地球や宇宙も原子と分子の集まりです。
このとき、物質の最小単位が原子です。つまり、最も小さい物質が原子なのです。厳密には、原子は中性子や陽子など、その他の構成要素に分けることができます。ただ化学では、原子が最も小さい物質と考えます。
最も小さい物質が原子であるため、原子を半分に分割することはできません。また、一つの原子が二つに分裂したりすることもありません。
なお原子が複数集まることによって分子になります。多くの場合、物質は原子ではなく分子で存在しています。また化学では、原子や分子はアルファベットを利用して記載するルールになっています。例えば以下のようになります。
- 水素:H2
- 酸素:O2
- 窒素:N2
- 水:H2O
- 二酸化炭素:CO2
- 塩(塩化ナトリウム):NaCl
化学では水素をHと表記します。ただ実際には、水素原子が2つ結合することによって、水素はH2で存在しています。原子が2つ以上、結合している場合は分子といいます。また水の場合、水素原子2つと酸素原子1つが結合することにより、水分子H2Oとなります。
ひとまず、このようなルールがあると理解できれば問題ありません。
純物質と混合物の違い
それでは、純物質と混合物の違いには何があるのでしょうか。純物質というのは、一つの物質だけが存在する状態を指します。
例えば純水であれば、そこに存在するのはH2Oだけです。一つの物質だけが存在する場合、純物質といいます。一方、食塩水ではどうでしょうか。食塩水には、水(H2O)と塩(NaCl)が混ざっています。つまり、二つの物質が存在している状態です。こうした物質を混合物といいます。
また酸素(O2)や窒素(N2)は純物質です。一方、空気はどうでしょうか。空気には以下の物質が含まれています。
- 酸素:O2
- 窒素:N2
- 二酸化炭素:CO2
そのため、空気は混合物であるとわかります。
純物質なのか混合物なのかを見極める方法は簡単です。単一の化学物質のみ含まれているのか、それとも2つ以上の化学物質が含まれているのか確認すればいいです。
例えば、水に溶けている物質はすべて混合物です。食塩水やアンモニア水、塩酸などは混合物に分類されます。これらは水(H2O)との混合物だからです。
・純物質と混合物では性質が異なる
なお純物質と混合物では性質が変わります。例えば水の場合、純水では沸騰する温度(沸点)が100℃です。一方、食塩水では沸点が100℃よりも高くなります。また、どれだけ沸点が高くなるのかについて、水に溶けている塩(NaCl)の濃度が高くなるほど沸点が上昇します。
また水に塩を加えると、融点(固体が液体へ、または液体が固体へ変化する温度)を下げることが可能なのは多くの人が既に知っています。濃い食塩水の場合、-20℃であっても凍りません。このように混合物では、物質の性質が変化することを理解しましょう。
純物質には単体と化合物が存在する
また純物質には、単体と化合物の二種類があることを認識しましょう。単体というのは、一種類の原子から構成される物質を指します。例えば水素(H2)や酸素(O2)、銅(Cu)などが単体に該当します。
一方、2種類以上の原子で構成されている場合は化合物といいます。例えば水(H2O)の場合、2つの水素原子(H)と1つの酸素原子(O)で構成されています。また二酸化炭素(CO2)であれば、一つの炭素原子(C)と2つの酸素原子(O)で構成されています。そのため、これらは化合物です。
なお純物質と混合物を区別することは重要であるものの、単体と化合物を区別することは重要ではありません。そのため、単体と化合物の違いは知識としてもっておく程度で問題ないです。
同じ元素で構成される単体が同素体:SCOP
ここまで、原子と分子について純物質と混合物の違いを解説してきました。純物質の場合、元素(原子の種類)が同じなのであれば性質も同じです。
ただ同じ原子で構成されているにも関わらず、性質が大きく異なる例外ケースがあります。この例外を同素体といいます。同素体としては以下が知られています。
硫黄S | 斜方硫黄S8、単斜硫黄S8、ゴム状硫黄S |
炭素C | 黒鉛C 、ダイヤモンドC、フラーレンC60 |
酸素O | 酸素O2、オゾンO3 |
リンP | 黄リンP4、赤リンP |
同素体の覚え方はSCOP(スコップ)です。元素記号の頭文字を利用して覚えましょう。
同じ元素にも関わらず、性質が大きく異なるというのは、どういう意味なのでしょうか。同素体を学ぶとき、炭素に着目すると理解しやすいです。以下は実際の黒鉛とダイヤモンドです。
黒鉛は鉛筆の芯で利用されており、黒色です。一方、ダイヤモンドは宝石で利用されていることからわかる通り、透明で美しいです。また黒鉛は簡単に壊れる一方、ダイヤモンドは非常に硬い物質として知られています。ただ、両方とも炭素(C)のみで構成されています。
黒鉛では、炭素原子は平面構造をしています。そのためはがれやすく、紙に黒色を記すことができます。それに対して、ダイヤモンドは炭素原子が正四面体にて強固につながっており、黒鉛のようにはがれ落ちることはありません。そのため非常に硬い物質であり、光の屈折率も高いのです。
同じ元素ではあっても、原子同士がどのような構造によってつながっているのかによって性質が異なるケースがあるのです。これが同素体です。
錬金術は無理だが、ダイヤモンドは作れる
原子の性質や同素体の存在を学べば、なぜ錬金術が不可能なのか理解できます。大昔から金(ゴールド)の価値は高く、古代エジプト時代から、「何とかして金を作り出すことはできないか」と人々は考えていました。
無の状態から金を作ることができれば、大金持ちになれるというわけです。古代エジプトの化学者たちが錬金術の研究をしていたのは、お金を無限に生み出せることを夢見たからなのです。
ただここまでの化学の知識を理解すれば、錬金術は不可能であるとわかります。金(Au)は一つの原子であり、新たに生み出すことができなければ、一つの金を複数の金に増やすこともできません。これは銀(Ag)も同様です。
すべての人で錬金術に成功していない理由について、原子の性質を理解すればわかります。
・ダイヤモンドは作ることができる
ただここまで解説した通り、黒鉛とダイヤモンドは同素体です。つまり、ダイヤモンドは炭素(C)から作ることができます。炭素はいくらでも存在しているため、金を作るのは不可能であっても、無からダイヤモンドを作るのは可能なのです。
そのため化学者は金の代わりにダイヤモンドに着目し、現在では人工ダイヤモンドが多くの場面で利用されています。人工ダイヤモンドを研磨剤として利用したり、宝石として販売したりしています。
もちろん天然のダイヤモンドに比べると、人工ダイヤモンドは希少価値が劣ります。つまり、価格が安いです。ただ金や銀とは異なり、ダイヤモンドは作ることが可能であるため、人工ダイヤモンドの製造はビジネスとして成り立っています。
金の製造に成功した人はゼロであるものの、ダイヤモンドの製造は一般的に行われています。この理由は、化学の初歩を学ぶことによって理解できるのです。
物質の分類を行えるようにする
高校化学を学ぶとき、最初に理解しなければいけない概念の一つが物質の分類です。物質には複数の種類があり、最初の分類が純物質と混合物です。私たちの周りには多くの混合物が存在します。
純物質では性質が決まっています。ただ混合物の場合、性質が変化します。純水と食塩水では沸点や融点が異なるため、混合物だと性質が変化する点については理解できるはずです。
ただ例外として同素体があります。一つの元素で構成されているものの、性質が大きく異なるのです。同素体はSCOP(元素記号の頭文字)を利用して覚えましょう。
すべての物質は原子または分子で構成されています。そこで、まずは物質の分類分けができるようになりましょう。