高校化学を学ぶとき、すべての人が原子の構造を覚えなければいけません。原子の構造を理解していない場合、すべての化学の問題を解くことができません。つまり原子の構造を覚えるのはスタート地点であり、覚えなければ化学の理解は不可能です。

原子の構造では、元素周期表を最初に覚えましょう。元素周期表は全員にとって必須の知識です。もちろんすべての元素周期表を覚える必要はなく、一部で問題ありません。

それに加えて、陽子や中性子、電子など原子を構成する要素を覚えましょう。そうすれば、質量数の概念を理解できます。また化学反応では、電子の動きが重要になります。そこで、原子の電子配置を学ばなければいけません。

化学を理解するためには、最初に基本となる知識を覚える必要があります。ここで述べる内容は高校化学の基礎であるため、必ずすべて覚えるようにしましょう。

高校化学では元素周期表を必ず覚える

化学を学ぶとき、元素周期表を覚えましょう。元素周期表を覚えていない場合、すべてのケースにおいて化学の問題を解くことができません。

例えば化学のテストを受けるとき、あなたが最初にしなければいけないのは、テスト用紙に元素周期表を記入することです。化学ではすべてのテストで元素周期表を書き込む必要があり、元素周期表を覚えている状態は必須です。

なお化学の教科書を開くと、必ず最初に元素周期表が掲載されています。

当然ながら、原子の数は多いです。ただ、この配置をすべて覚えるのはやめましょう。有名な化学者であっても、これら元素の配置をすべて覚えている人はいません。そこで、重要な部分のみ覚えましょう。

具体的には、以下の部分のみ覚えます。

化学を学ぶとき、この部分の元素が最も重要です。例えば化合物で水素(H)や炭素(C)、酸素(O)を含むケースは非常に多いです。一方、コバルト(Co)や金(Au)を含む化合物はほとんど存在しません。そこで、こうした重要ではない原子は無視して、重要な原子のみ配置を覚えるのです。

語呂合わせで元素周期表を覚える

元素周期表で覚えなくてもいい部分がある一方、先ほど記した部分は必ず覚えましょう。そうしなければ、確実に化学の問題を解けません。

それでは、どのように元素周期表を覚えればいいのでしょうか。覚え方としては語呂合わせを利用しましょう。高校化学を学ぶとき、すべての人が以下の語呂合わせを利用して元素周期表を覚えています。

  • 水兵リーベ僕の船 名前があるシップスクラークか

化学で最も有名な語呂合わせであり、ひとまず覚えましょう。なぜこの順番で元素が配置されているのか理由を理解する必要はありません。元素周期表を覚えないとスタート地点に立てないため、何はともあれ覚える必要があります。

元素周期表を覚えるのは、数学でいうと足し算や引き算の方法を覚えるのと同じです。元素周期表を覚えていない場合、すべての問題を解けないのは、元素周期表が足し算や引き算に該当するほど基本的な内容だからです。

原子番号は原子の重さ順になっている

それでは、原子はなぜ元素周期表の配列のようになっているのでしょうか。すべての原子には原子番号が存在します。原子番号は先ほど記した元素周期表の順番となっています。

例えば、元素周期表の最初は水素(H)です。そのため、水素の原子番号は1です。また、元素周期表の2番目にはヘリウム(He)があります。そのため、ヘリウムの原子番号は2です。

原子番号の順番というのは、原子の軽い順になっています。つまり軽い原子であるほど、元素周期表の最初のほうに記載されています。また重い原子であるほど、元素周期表の後のほうに記載されます。

例えば、遊園地で配られる風船はなぜ浮くのでしょうか。この理由として、風船の中にヘリウムが充填されているからです。

空気は窒素(N)や酸素(O)などで構成されています。先ほどの元素周期表によれば、窒素(N)は7番目に存在します。また、酸素(O)は8番目に存在します。つまりこの世に存在する原子の中で、窒素原子は7番目に軽く、酸素原子は8番目に軽いです。

一方、ヘリウム(He)は元素周期表によれば2番目に位置しており、水素(H)の次に軽い原子です。ヘリウムは窒素や酸素よりも軽いため、風船にヘリウムを充填させると宙に浮くのです。

原子の構造:原子核、陽子、中性子、電子

それでは、原子の重さや原子番号はどのように決まるのでしょうか。これを理解するため、まず原子の構造を学びましょう。

原子には必ず原子核が存在します。また、原子核には陽子と中性子が存在します。原子核は陽子と中性子の2つによって構成されていると理解しましょう。

  • 原子核=陽子+中性子

なお陽子はプラスの電気を帯びています。これを電荷といいます。中性子には電荷がないものの、陽子には電荷があるのです。

ただ、プラスの電荷のみをもつ場合は不安定です。そこで、原子はプラスの電荷(陽子)だけでなく、マイナスの電荷を帯びている物質を保有しています。それが電子です。電子にはマイナスの電荷があり、原子がもつ陽子の数と電子の数は同じです。

プラスの電荷(陽子)とマイナスの電荷(電子)の数が同じであるため、合計の電荷は0になります。こうして、原子は安定な状態を保つことができます。

このように、原子は陽子、中性子、電子によって構成されています。

また先ほど、原子番号について解説しました。元素周期表では、軽い順に原子が並べられています。このとき原子番号に対して、陽子の数と電子の数は一致します。つまり、以下のようになります。

  • 原子番号=陽子の数=電子の数

例えば水素(H)の原子番号は1です。そのため、水素原子は1つの陽子と1つの電子をもちます。また酸素(O)の原子番号は8です。そのため酸素原子は8つの陽子と8つの電子をもちます。

原子番号と質量数を利用する原子の表記法

それでは、原子の質量はどのように決まるのでしょうか。原子の質量というのは、陽子と中性子を足すことによって得られると考えましょう。

先ほど解説した通り、原子には陽子や中性子、電子が含まれています。ただ電子の重さは陽子や中性子に比べて非常に軽く、重さを無視できます。そのため、原子の重さ(質量数)は陽子と中性子で考えるのです。

  • 質量数=陽子の数+中性子の数

原子によって保有する陽子の数と中性子の数は異なります。そのため原子ごとの質量数を覚える必要はないものの、質量数では陽子の数と中性子の数が重要であることを理解しましょう。

・原子の表記法

次に原子の表記法を学びましょう。原子を記載するときにはルールがあります。例えば酸素原子(O)の場合、以下のように記載されます。

このように原子番号を左下に記載し、質量数を左上に記載します。これが原子を表記するときのルールです。

また原子番号は陽子の数を表しており、中性子を加えると質量数になります。酸素原子の場合、原子番号が8であるため、陽子の数は8です。またほとんどの場合、酸素原子が保有する中性子の数は8です。そのため、酸素原子の質量数は16になります。

電子配置:電子殻と最外殻電子(価電子)

原子の構造を学んだら、次に電子配置を理解しましょう。先ほどは陽子と中性子に着目しましたが、今度は電子に着目しましょう。

前述の通り、原子番号と電子の数は一致します。このとき、原子は電子殻をもちます。電子殻に対して、電子が収まります。電子殻について、原子核に近い順からK殻、L殻、M殻といいます。

N殻やO殻も存在します。ただ電子周期表で説明した通り、化学で利用される重要な原子は一部です。また、重要な原子は元素周期表の最初のほうに記されています。そのためN殻やO殻よりも、重要なK殻、L殻、M殻に着目しましょう。

このとき理解するべきは、電子を収納できる数です。以下のように、外側に存在する電子殻では最大の電子収容数が多くなります。

内側に存在する電子殻は小さいため、収納できる電子数は少ないです。また電子が電子殻に収まるとき、K殻から順に埋まっていきます。

なお原子の性質というのは、原子番号に加えて、最も外側に存在する電子の数によって決まります。これを最外殻電子といいます。最外殻電子は価電子とも呼ばれます。最外殻電子(価電子)の数は以下のように判断します。

例えば酸素(O)の場合、最も外側に存在する電子殻に6つの電子があります。そのため、最外殻電子の数は6つです。

・電子殻と最外殻電子(価電子)を利用すると便利

なぜ電子殻と最外殻電子(価電子)を学ぶ必要があるかというと、原子の性質に大きく関わっているからです。

先ほど、元素周期表を覚えるとき、周期表での原子の配置位置が特殊でした。この理由として、元素周期表では以下のように電子殻と最外殻電子の数を対応させる必要があるからです。

元素周期表の配置位置には意味があります。電子殻と最外殻電子の数を考慮すると、このような配置になるのです。なお、元素周期表にある元素は以下のように表現することがあります。

  • 第一周期元素:K殻に最外殻電子を含む元素
  • 第二周期元素:L殻に最外殻電子を含む元素
  • 第三周期元素:M殻に最外殻電子を含む元素
  • 第四周期元素:N殻に最外殻電子を含む元素

そのため、これらの呼び方を理解できるようになりましょう。

原子ではなく分子で存在する理由:オクテット則

なお、中には「M殻は最大で18個の電子を収容できるのにも関わらず、なぜ8個の電子までしか収容されていないのか?」と考える人がいるかもしれません。18個の電子を収容できるのであれば、最外殻電子の数が9個や10個となる原子が存在してもいいはずです。

これについては、「電子殻に8個の電子が存在すると安定状態になる」という法則があります。これをオクテット則といいます。つまり電子殻について、電子の最大収容数は重要ではありません。電子殻というのは、M殻のように多くの電子を収容できる場合であっても、8個までの電子を収容するのが一般的なのです。

なおオクテット則は経験則であるため、非常に多くの例外があります。事実、リン(P)や硫黄(S)の最外殻電子はM殻に存在するため、はオクテット則を満たさないケースが多いです。M殻を利用することによって、8個以上の電子を用いて化学結合を作るケースがあるのです。

ただ多くのケースでオクテット則を満たすため、最外殻電子が最大で8個までになるというルールは便利です。

・オクテット則を満たすように分子を形成する

なお前述の通り、最外殻電子が8つある場合、オクテット則を満たすことによって安定状態になれます。ただ水素(H)の最外殻電子は1つですし、酸素の最外殻電子は6つです。

物質は不安定な状態を好みません。そこで安定な状態になるため、最外殻電子を共有します。例えば酸素の最外殻電子は6つであるため、電子を2つずつ出し合うことによって酸素分子(O2)になります。窒素原子(N)であれば、最外殻電子は5つなので、電子を3つずつ出して窒素分子(N2)を作ります。

また水(H2O)についても、電子を共有することによって酸素原子の最外殻電子は8になり、水素原子の最外殻電子は2になります。

酸素分子(O2)に着目すると、両方の原子で最外殻電子が8になり、オクテット則を満たしているとわかります。

K殻の電子収容数は最大2つです。そのため水素については、例外的に最外殻電子が2になることで安定化します。一方で窒素原子や酸素原子については、最外殻電子が8になることで安定になります。

ほとんどの化合物では、分子を構成するすべての原子が8個の最外殻電子をもつようになっています(水素の場合は例外的に2個の最外殻電子)。原子がもつ電子の数は変わらないものの、電子を共有することは可能なのです。これが、ほとんどのケースで原子ではなく分子(2つ以上の原子から構成されている物質)で化学物質が存在する理由です。

なおオクテット則により、M殻に9個目の電子が入るよりも、N殻に1つの電子が入るほうが安定します。そのため、元素周期表でカリウム(K)とCa(カルシウム)は第三周期元素ではなく、第四周期元素としてN殻に電子をもちます。

オクテット則と閉殻は意味が同じ

なお電子配置を学ぶとき、閉殻(へいかく)を学びます。閉殻の定義について、教科書で以下のように記されていることがあります。

  • 電子殻に最大数の電子が収容されている状態

ただ、現実的には間違っています。実際に化学を学ぶ場合、閉殻については以下のように理解しましょう。

  • オクテット則を満たしている状態が閉殻:最外殻に電子が8個ある状態(K殻の場合は2個ある状態)

K殻とL殻については、最外殻にすべての電子が収容されることによって安定状態となります。この状態はオクテット則を満たしており、かつ閉殻状態でもあります。

一方、M殻はどうでしょうか。原子番号でアルゴン(Ar)の次はカリウム(K)です。カリウムでは、前述の通り電子は9番目の電子としてM殻に入るのではなく、N殻に電子が一つ入ります。

つまりM殻やN殻、O殻では、最外殻にすべての電子が収容されることはありません。M殻の場合は最大18個まで電子を収容できるものの、M殻に18個の電子が埋まることはなく、通常は8個の電子となります。

こうした理由から、実際の化学では「最外殻に8個の電子が存在する場合を閉殻とする(K殻の場合は2個を閉殻とする)」と考えるのが自然です。つまり、オクテット則と閉殻は意味が同じと理解して問題ありません。

希ガス(貴ガス)は非常に安定した原子

なお、ほとんどのケースで化学物質は原子ではなく、分子の状態で存在します。ただ、中には例外があります。それが希ガス(貴ガス)です。希ガス(貴ガス)というのは、元素周期表の一番右に存在する原子です。つまり、ヘリウム(He)やネオン(Ne)、アルゴン(Ar)が希ガスに該当します。

希ガスの場合、最外殻電子は既にオクテット則で満たされています。以下のようになっています。

  • ヘリウム(He):K殻に2個の電子が存在
  • ネオン(Ne):L殻に8個の電子が存在
  • アルゴン(Ar):M殻に8個の電子が存在

このような原子の場合、ほかの原子と電子を共有する必要がありません。そのため希ガスは非常に安定な物質であり、原子のまま存在します。

希ガスを理解すれば、遊園地で配られる風船で水素を利用せず、なぜヘリウムを利用するのか理解できます。

水素のほうが軽くて空気中に浮きやすいにも関わらず、なぜヘリウムを利用するのでしょうか。それは、ヘリウムが非常に安定な物質だからです。安定な物質というのは、ほかの分子と化学反応を起こしにくいことを意味しています。

水素分子(H2)はオクテット則を満たすものの、ものすごく安定な物質というわけではありません。事実、水素は空気中の酸素と化学反応を起こして爆発します。そのため危険性の高い水素ではなく、原子の状態で存在しており、ほかの化合物と化学反応を起こさないヘリウムを利用するのです。

・希ガスの価電子は8(ヘリウムの場合は2)

参考までに、高校化学の教科書では「希ガスの価電子は0」と記載されていることがあります。ただ、これは明らかな間違いです。最外殻電子と価電子は共通であり、希ガスの価電子は8です(ヘリウムの場合は2)。

また希ガスは安定な物質ではあるものの、絶対に分子を形成しないわけではありません。事実、希ガスを含む化合物はたくさんあります。そのため、希ガスの価電子は8が正しいことを理解しましょう。事実、世界的には「希ガスは8個の価電子を保有している」ことが常識です。

先ほど、閉殻の定義について、間違えて記載している教科書があると説明しました。事実、M殻に18個の電子を保有している原子はありません。これと同じように、希ガスの価電子についても間違った定義が記載されているケースがあることを理解しましょう。

・アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン

なお元素周期表では、希ガスと同様に呼び方が決まっている元素があります。その中でも必ず覚えないといけないのがアルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲンです。以下の部分が該当します。

化学を学ぶとき、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲンはひんぱんに出てきます。そのため、これらが何を意味しているのか覚えましょう。

原子の構造と電子の状態を覚える

ここまで解説してきたことは高校化学の基本です。そのため、すべての内容を覚えましょう。覚えない場合、化学の問題を解くことはできません。

最も重要なのは元素周期表です。すべての元素周期表を覚える必要はなく、一部を覚えましょう。このとき原子番号順に原子が並ぶことになります。言い換えると、原子の軽い順(質量数の低い順)に並びます。原子番号の低い原子が化学では重要なので、これらの原子の並び順を覚えましょう。

また原子や陽子、中性子、電子について学んだら、次は電子配置を理解しましょう。電子殻や最外殻電子(価電子)は原子の性質を表します。このとき、どのようなケースで原子や分子が安定になるのか学びましょう。原子や分子が安定になるためには、オクテット則を満たす必要があります。

原子の構造や元素周期表、電子配列をすべて覚えることにより、高校化学でのスタートラインに立つことができます。ここで述べたことはすべて重要であり、確実に覚えるようにしましょう。