合成高分子化合物で学ぶ重要な内容が合成繊維です。化合物を重合反応させることによって合成繊維を作るのです。

私たちは日常生活で合成繊維を利用しています。多くの服は合成繊維で作られています。またスポーツウェアや防弾チョッキなど、特殊な衣類も合成繊維を利用しています。このように考えると、合成繊維は私たちにとって不可欠であるとわかります。

高校化学では合成繊維の基礎を学びます。単量体(モノマー)を利用することにより、合成繊維としてどのような重合体(ポリマー)を得られるのか覚えるのです。

合成繊維には種類があります。そこで合成繊維を分類し、種類ごとに合成繊維の特徴や合成法を理解しましょう。

合成繊維の分類を行う

合成高分子化合物で合成繊維を学ぶとき、合成繊維を分類しましょう。最初に分類を学ぶことで効率的に合成繊維の種類を覚えることができます。

合繊繊維の特徴を種類別に記していきます。

・ポリアミド系:縮合重合(または開環重合)で合成

分子内にアミド結合-CONH-をもつ繊維がポリアミド系です。ナイロン66やナイロン6、アラミド繊維がポリアミド系に該当します。

・ポリエステル系:縮合重合によって合成

分子内にエステル結合-COO-をもつ繊維がポリエステル系です。ポリエチレンテレフタラートが該当します。

・ポリビニル系:付加重合によって合成

分子内にビニル基CH2-CH-をもつ繊維がポリビニル系です。アクリル繊維やビニロンが該当します。

合成繊維にはこれらの種類があることを理解しましょう。重合体を合成するときの反応や結合の種類によって合成繊維を分類分けできます。

縮合重合で合成可能な合成繊維

合成繊維の合成では、最も一般的な方法が縮合重合です。縮合重合によってアミド結合やエステル結合を作り、これによってポリマーを作るのです。

縮合重合で重要な合成繊維には以下があります。

  • ナイロン66(ナイロン6は開環重合によって合成)
  • アラミド繊維
  • ポリエチレンテレフタラート

この中でも、ナイロン66やナイロン6、アラミド繊維はアミド結合によって分子が連なっています。それに対して、ポリエチレンテレフタレートはエステル結合によってポリマーを形成しています。それぞれの合成繊維の詳細を確認していきましょう。

ポリアミド系合成繊維であるナイロン66(6,6-ナイロン)

ポリアミド系合成繊維では、名前の通り多く(ポリ)のアミド結合によって重合体が形成されています。以下がアミド結合-CONH-です。

縮合によってアミド結合を作る場合、カルボン酸とアミノ基を利用します。カルボン酸とアミノ基を反応させ、分子内からH2Oを除去することでアミド結合を作れます。

ポリアミド系の合成繊維としてナイロン66(6,6-ナイロン)が知られています。繊維産業で最も一般的な合成繊維がナイロン66です。また、ナイロン66は世界初の合成繊維です。

ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸を縮合させるとナイロン66を得られます。

原料を覚える必要はないものの、構造式を見てナイロン66であるとわかるようにしましょう。

ナイロン6は開環重合によって合成できる

通常、ポリアミド系合成繊維は縮合重合によって合成します。ただナイロン6の合成では、例外的に開環重合によって合成します。

開環重合では、環状化合物による開環と重合が同時に起こります。具体的には、ε-カプロラクタムを利用して開環重合させるとナイロン6を得られます。

ナイロン66とナイロン6を比較すると、原料である単量体(モノマー)の構造式は大きく異なります。ただ、生成化合物の構造は似ています。なお、ナイロン66とナイロン6は用途や性質も似ています。

アラミド繊維:ベンゼン環をもち、強度が強い繊維

構造式の中にベンゼン環を有する合成繊維がアラミド繊維です。ナイロン66のような脂肪族ポリアミド(炭化水素のみで構成されるポリアミド系合成繊維)と区別するため、芳香族ポリアミドをアラミド繊維と呼びます。

アラミド繊維は強度が非常に強いことで知られています。高い耐熱性があり、摩耗に対しても優れています。そのため消防士の防火服、警察が利用する防弾チョッキ、航空機の補強、スポーツ用品などでアラミド繊維が利用されています。

代表的なアラミド繊維としてはポリ-p-フェニレンテレフタルアミドがあります。p-フェニレンジアミンとテレフタル酸ジクロリドを縮合重合させることにより、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドを得ることができます。

構造式にベンゼン環があり、アミド結合でつながっている場合、アラミド繊維です。

ポリエステル系のポリエチレンテレフタラート(PET)

縮合重合によって得られる合成繊維には、アミド結合ではなく、エステル結合-COO-によってつながっている化合物もあります。多数のエステル結合によって重合体(ポリマー)を形成している場合、ポリエステルと呼ばれます。

ポリエステル系の合成繊維で有名な例がポリエチレンテレフタラート(PET)です。衣類の繊維やペットボトルの材料として利用されます。

ペットボトルを再利用して服を作れるのは、衣類もペットボトルもポリエチレンテレフタラート(PET)が原料だからです。同じ原料であっても、繊維状に加工すれば合成繊維になりますし、樹脂状に加工すればペットボトルのような合成樹脂になります。

なおエチレングリコールとテレフタル酸を縮合重合させることにより、ポリエチレンテレフタラートを得ることができます。

構造式にエステル結合がある場合、縮合重合によって合成されるポリエステル系の合成繊維と推測できます。

付加重合による合成繊維

縮合重合ではなく、付加反応を利用した重合体の合成も合成繊維では重要です。付加重合で学ぶ合成高分子化合物としてはポリエチレンが有名です。

エチレンは二重結合をもっています。そこで付加反応をさせることによって重合させると、エチレンはポリエチレンとなります。

ポリエチレンは合成繊維ではなく、合成樹脂です。いずれにしても、二重結合を利用することで重合体を合成できるのです。

付加重合させるためには、二重結合または三重結合を有する単量体(モノマー)が必要です。その中でも、ビニル基は合成繊維の合成でひんぱんに利用されます。以下がビニル基です。

ビニル基に結合している官能基は異なるものの、ビニル基を利用することによって付加重合を起こすことができ、重合体(ポリマー)を得られます。なおビニル基をもつ化合物を重合させるため、重合体はポリビニル系の合成高分子化合物に分類されます。

アクリル繊維:アクリロニトリルの付加重合

ビニル基を用いた付加重合によって合成可能な合成繊維としてアクリル繊維があります。羊毛に似た性質があり、軽くて柔らかい合成繊維です。また、保温性があります。そのためセーターや毛布、カーペットなどでアクリル繊維が利用されます。

アクリル繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)が有名です。アクリロニトリルを利用して付加重合させるとポリアクリロニトリル(PAN)を得られます。

アクリロニトリルは構造式にシアノ基CNをもちます。ビニル基の付加重合によってCNをもつ化合物を得られる場合、それはポリアクリロニトリル(PAN)と推測できます。

ポリ酢酸ビニルのけん化とアセタール化でビニロンを得られる

ビニル基を有する化合物について、シアノ基以外を利用することによって、別の用途で利用される合成繊維を合成できます。その一つにビニロンがあります。

ビニロンの合成では、酢酸ビニルを利用します。酢酸ビニルを付加重合させることにより、ポリ酢酸ビニルを合成できます。

次に、ポリ酢酸ビニルをけん化します。水酸化ナトリウムを利用してエステル結合を切断し、アルコール(ポリビニルアルコール)に変えるのです。

その後、ホルムアルデヒドとポリビニルアルコールの-OHを反応させることで縮合反応を起こさせ、-O-CH2-O-の結合を作ります。この反応をアセタール化といいます。ポリビニルアルコールがアセタール化することにより、ビニロンを得ることができます。

ポリ酢酸ビニルをけん化し、ビニロンを得る反応は以下になります。

合成繊維の中でも、ビニロンは親水性をもつので吸湿性に優れています。また強度が強く、薬品への耐性もあるので化学変化しにくいです。そのため作業着やレインコート、カバン、ロープなどでビニロンが利用されます。

合成繊維の合成方法と種類を学ぶ

私たちが毎日利用しているのが合成繊維です。天然の繊維のみを利用して生活している人はほとんどいません。そのため合成繊維を学ぶのは重要です。

合成繊維では、主に縮合重合と付加重合を利用して化合物を合成します。ナイロン6は開環重合を利用して合成するものの、それ以外は縮合重合と付加重合がメインの合成法になるのです。

縮合重合を利用すれば、ポリアミド系(ナイロン66、アラミド繊維)とポリエステル系(ポリエチレンテレフタラート)による高分子化合物が合成可能です。また付加重合によって、ポリビニル系(ポリアクリロニトリル、ビニロン)による高分子化合物を得られます。

合成繊維は構造によって用途が異なります。そこで、それぞれの化合物の構造や特徴、種類を理解しましょう。