数学の空間図形では、錐体の体積や表面積を計算する問題が出されます。角柱や円柱とは異なり、先が尖っている立体の体積や表面積はどのように計算すればいいのでしょうか。

角柱・円柱に比べると、角錐・円錐の計算は複雑になります。特に円錐の計算をする場合、新たな概念を理解しなければいけません。

そうはいっても、角柱・円柱の体積や表面積の計算方法を既に理解している場合、角錐・円錐の体積と表面積を求めることができます。角柱・円柱の応用問題にはなりますが、これまでの知識を利用することで、公式を使いながら答えを出せます。

そこで錐体の体積と表面積について、どのように公式を利用し、計算すればいいのか解説していきます。

錐体には角錐と円錐がある

先が尖っている立体として錐体があります。そして錐体には角錐と円錐の2種類があります。

円錐の場合、底面が丸です。一方で角錐では、底面が三角形だったり四角形だったりします。その場合、三角錐や四角錐と呼ばれるようになります。以下のようになります。

いずれにしても、これらの体積や表面積を計算できるようにならなければいけません。角柱や円柱とは、異なる計算方法になります。

角錐・円錐の体積は1/3が重要な数字になる

最初に、体積の求め方について解説していきます。表面積に比べて計算が簡単だからです。どのようにして角錐・円錐の体積を求めればいいのでしょうか。

角柱・円柱の体積の計算方法は既に習っています。以下の公式があります。

  • 角柱・円柱の体積 = 底面積 × 高さ

底面積と高さが分かっている場合、それぞれの掛け算によって角柱や円柱の体積を計算できます。角錐や円錐の体積の公式はこれと似ています。同じように、底面積と高さを掛けます。その後、3分の1にすることで体積が出ます。

つまり、角錐と円錐の体積を出す公式は以下のようになります。

  • 角錐・円錐の体積 = 底面積 × 高さ × \(\displaystyle\frac{1}{3}\)

例えば、以下の三角錐の体積はいくらでしょうか。

角錐・円錐の体積を出す公式に当てはめると、以下のようになります。

  • \(5×3×\displaystyle\frac{1}{2}×10×\displaystyle\frac{1}{3}=25\)

こうして、25cm3の体積であると計算できます。角錐・円錐の体積の計算方法としては、角柱や円柱に対して1/3を掛けるだけです。

なぜ、錐体の体積は1/3を掛けるのか

それでは、なぜ柱体を3等分すると錐体の体積になるのでしょうか。これについては、高校数学の積分を使わなければ証明できません。少なくとも、小学校の算数や中学校の数学では証明することができません。

そのため、なぜ錐体の体積が1/3になるのかについては、高校数学で積分を学んだときに証明するようにしましょう。

一方で小学校の算数や中学校の数学では、どうやっても1/3の掛け算をする理由を説明できないのでしょうか。この説明については、以下の図形を立方体と仮定して、3つに分けて考えましょう。

立方体を3つの四角錐に分けると、このようになります。重要なのは、3つの四角錐はすべて形が同じであることです。形が同じなので、体積はどれも同じです。これが、錐体の体積が1/3になると直感的に理解できる理由です。

もちろん、この説明方法は円錐では不可能です。立方体だからこそ可能です。より正確な証明をするためには、前述の通り高校数学で学ぶ積分を学ばなければいけません。

ただいずれにしても、このように計算しなくても、小学校の算数や中学数学であっても直感的に立体の体積を理解できます。

錐体の表面積は底面積と側面積を足す

一方で錐体の表面積はどのように計算すればいいのでしょうか。考え方としては、角柱・円柱の表面積の出し方と同じです。

柱体(角柱・円柱)の表面積を計算する場合、底面積と側面積をそれぞれ出し、両方を足します。同じように、錐体(角錐・円錐)についても底面積と側面積を出し、それぞれを足し算します。そのため、以下の公式になります。

  • 錐体の表面積 = 底面積  + 側面積

角錐・円錐の底面と側面はそれぞれ以下のようになります。

一つの計算式によって、表面積を出せることはありません。底面積と側面積の2つを計算することで、角錐・円錐の表面積を出すことができます。

円錐では母線が扇形の半径になる

角錐の表面積を出すとき、底面積や側面積の計算方法は既に習っています。また三角形や四角形の面積を計算するための公式も理解しています。例えば、四角錐の展開図は以下のようになります。

そのため四角錐では、四角形(底面)と三角形(側面)の面積を計算すればいいです。

一方で円錐の表面積はどのように計算すればいいのでしょうか。円錐には母線(ぼせん)と呼ばれる部分があります。以下が円錐の母線です。

円錐の展開図では、円と扇形の図形が表れます。扇形の半径は母線です。そのため、母線を利用して扇形の面積を出すようにしましょう。

扇形の面積は中心角が分かれば出すことができます。扇形の面積を出す公式は以下になります。

円の面積を出した後、\(\displaystyle\frac{中心角}{360°}\)を掛けることによって、扇形の面積を計算できます。その後、底面積を足すことで円錐の表面積を計算できます。

母線から考える、円錐の中心角の求め方

一方で、中心角が分からない場合はどのように側面積を計算すればいいのでしょうか。この場合、母線から円錐の中心角を求めましょう。

例えば、以下の円錐はどのように中心角を計算すればいいでしょうか。

円錐の展開図を考えると、扇形の半径は8cmです。また、扇形の弧と底面の円周の長さは同じです。円錐の底面の直径は4cmです。そのため、円周の長さ(扇形の弧の長さ)は以下の計算によって出すことができます。

  • \(4×π=4π\)

そこで、扇形の弧の長さを出す公式に当てはめてみましょう。面積と同じように、扇形の弧の長さは「円の直径を出した後、中心角の割合に応じて数字を減少させる」ようにします。公式は以下になります。

この公式を利用することで、扇形の中心角を出しましょう。扇形の半径は8cmなので、直径は16cmです。また前述の通り、扇形の弧の長さは\(4π\)cmです。中心角を\(x\)とすると、以下の式を作ることができます。

  • \(16×π×\displaystyle\frac{x}{360}=4π\)

この式を解くと、以下のようになります。

\(16×π×\displaystyle\frac{x}{360}=4π\)

\(x=4π×360×\displaystyle\frac{1}{16π}\)

\(x=90\)

こうして、中心角は90°と分かります。

中心角なしに扇形の面積を出す計算方法

先ほど説明した方法によって中心角を計算すれば、扇形の面積を計算できます。その後、底面積を出すことで、円錐の表面積を計算できます。

ただ、中心角を出した後に扇形の面積を計算するとなると面倒です。より簡単な方法によって、扇形の面積を計算できないのでしょうか。これについては、中心角なしに扇形の面積を出す公式が存在します。以下の公式です。

  • 円錐の側面積 = 母線 × 底面の半径 × \(π\)

この公式を覚えてもいいです。ただ利用頻度の少ない公式なので、忘れる可能性が高いです。そこで、公式の導き出し方を理解するようにしましょう。公式の作り方を学べば、公式を覚えることなく扇形の面積を出せるようになります。

扇形について、弧の長さと面積を出す公式は以下になります。

  • 扇形の弧の長さ = 半径\(×2×π×\displaystyle\frac{中心角}{360°}\)
  • 扇形の面積 = 半径\(×\)半径\(×π×\displaystyle\frac{中心角}{360°}\)

この2つの式を見比べたとき、「似ている」と思わないでしょうか。そこで、扇形の弧の長さを出す公式に対して、両辺に「半径\(×\displaystyle\frac{1}{2}\)」を掛けましょう。そうすると、以下のようになります。

なお、扇形の弧の長さは前述の通り、底面の円周の長さと同じです。そのため、以下のようになります。

こうして、以下の公式が成り立つと証明できました。

  • 円錐の側面積 = 母線 × 底面の半径 × \(π\)

扇形の面積というのは、円錐の側面積と意味が同じです。中心角なしであったとしても、このように円錐の側面積を出すことができます。

練習問題:角錐・円錐の体積と表面積

Q1. 次の円錐の体積と表面積を計算しましょう。なお、円周率は\(π\)とします。

A1. 解答

・円錐の体積の求め方

角錐や円錐の体積を出すとき、公式に当てはめるようにしましょう。最初に底面積を計算します。上図の円錐では、底面積は以下になります。

  • \(3×3×π=9π\)

その後、公式に代入して錐体の体積を出します。

  • \(9π×4×\displaystyle\frac{1}{3}=12π\)

・円錐の表面積の求め方

底面積と側面積を別々に計算しましょう。円錐の底面積は先ほど計算した通り、\(9π\)cm2です。

一方で円錐の側面積はどう計算すればいいのでしょうか。扇形の面積の計算方法としては、中心角を計算した後、面積を出す方法があります。ただ、母線から扇形の面積を出すことが可能です。以下の公式です。

  • 円錐の側面積 = 母線 × 底面の半径 × \(π\)

この公式に代入することで、円錐の側面積を出せます。以下のようになります。

  • \(5×3×π=15π\)

円錐の側面積は\(15π\)cm2です。底面積の面積は\(9π\)cm2なので、足し算をしましょう。

  • \(15π+9π=24π\)

なお側面積の公式を忘れた場合、公式を導き出して計算しましょう。または中心角を出した後、扇形の面積を計算することもできます。

公式を覚え、母線の概念を理解する

錐体の体積や表面積を計算するとき、重要なのが公式を覚えることです。角錐・円錐の体積を出すとき、公式を覚えていなければ体積を計算することはできません。角柱や円柱の体積に対して、1/3を掛けることで錐体の体積を出せます。

それに対して、表面積は側面積と底面積を出して足しましょう。展開図を考えて、それぞれの面積を出すといいです。

なお、円錐の表面積を出すときは少し考え方が複雑です。母線という概念を理解しなければいけません。円錐の母線は扇形の半径と長さが同じです。この性質を利用することで、中心角や扇形の面積を計算しましょう。

これらのことを学べば、角錐・円錐の体積と表面積を計算できます。中学数学の空間図形で錐体の体積と表面積は重要なので、どのように計算すればいいのか理解しましょう。