数学では文字を利用して計算をします。これを文字式(代数式)といいます。文字式を勉強する前では、数字だけを利用しての計算でした。ただ文字式を習った後は、数学は記号を利用した計算がメインになります。
文字式にはルールがあります。そのため、どのように文字式を表せばいいのか学ばなければいけません。
また、記号によって表す式にはいくつか種類があり、単項式や多項式があります。これらの式にはどのような違いがあるのでしょうか。文字式のルールを理解していないと、これらの式の足し算や引き算をすることはできません。
そこで文字式のルールや単項式・多項式の違い、さらにはこれらの式の足し算と引き算のやり方について解説していきます。
もくじ
文字式・代数式では、分からない数を記号にする
中学数学で学ぶ文字式(代数式)とは、どのような計算になるのでしょうか。文字式では、以下のようにアルファベットを使って式を表します。
- \(10+a\)
- \(2x+y\)
- \(2a^2b\)
記号が含まれる式をみると、何だか内容が難しそうに思えてしまいます。
ただ文字式を学ぶ前から、私たちは小学校の算数で文字式を勉強しています。例えば、以下の\(☐\)には何が入るでしょうか。
- \(10-☐=4\)
このような問題を解いたことがあるはずです。☐に入る数字は6です。分からない数について、☐を用いることで式を作っています。その代わり文字式では、分からない数字をアルファベットで表します。
例えば、先ほどの問題では\(☐\)を\(x\)に置きかえて以下のように記すことができます。
- \(10-x=4\)
これが文字式です。分からない数字を\(x\)や\(y\)、\(a\)、\(b\)などのアルファベットを使って表し、式を作ります。
・文字式は計算で非常に便利
なぜ、文字式を利用するのでしょうか。それは、数学の計算で非常に便利だからです。数学は日常生活で頻繁に利用されます。そうしたとき、答えは既に分かっているものの、途中の過程をどう表現すればいいのか分からないケースがほとんどです。
例えば、以下のようになります。
- 1,000kmを365日(1年)で歩くには、1日何kmを歩けばいいのか
1,000kmを歩くという答えは既に分かっています。ただ、「1日何kmを歩けばいいのか」という過程が分かりません。そこで、分からない数字を\(x\)などの記号に置きかえて計算します。
途中の数字が分からなかったとしても、式を組み立てて計算することができるのです。これが、数学で文字式を多用する理由です。
文字式(代数式)のルールを理解する
それでは、文字式(代数式)ではどのようなルールになっているのでしょうか。文字式では、必ず以下のルールに従うようにしましょう。
- 掛け算では×を省略する
- 数字を前に書き、アルファベット順にする
- 同じ文字の掛け算は指数を使う
- 1や-1は省く
- 割り算は利用せず、分数の掛け算を使う
ルールについては、内容は難しくありません。ただ、必ず理解するようにしましょう。
・掛け算では×を省略する
掛け算をするときは必ず×という記号を利用します。ただ文字式では、掛け算をするとき×を省略します。そのため、以下のようになります。
\(2×b\)ではなく、\(2b\)と記します。他には、\(a×b\)ではなく\(ab\)と記します。文字式では、×が省略されます。
・数字を前に書き、アルファベット順にする
文字式ではどの順番で記せばいいのでしょうか。このルールとしては、数字を必ずアルファベットの前に記します。また、いくつもの文字がある場合はアルファベット順にします。
例えば、以下の掛け算を文字式で表すと以下のようになります。
- \(a×4×b=4ab\)
最初に数字を記すため、4を書きます。またアルファベット順に記すため、\(4ab\)という表記になります。
・同じ文字の掛け算は指数を使う
文字式(代数式)では、同じ文字の掛け算をすることが頻繁にあります。例えば、\(a×a\)などです。ただ、文字式では\(aa\)と表記することはありません。同じ文字の掛け算では、指数を使います。例えば、以下のようになります。
- \(a×a=a^2\)
- \(3×y×y×y=3y^3\)
・1や-1は省く
なお最初に数字を記すのであれば、以下のように書かなければいけないように考えてしまいます。
- \(1×a=1a\)
- \(-1×b=-1b\)
ただ、1や-1は省かなければいけません。1は無限に掛け算できるため、\(1×1×1×a\)などのように表現できます。これを防ぐため、1や-1の数字は省きます。-1については、\(-\)だけ残して\(-b\)などのように記します。そのため、以下のようになります。
- \(1×a=a\)
- \(-1×b=-b\)
・割り算は利用せず、分数の掛け算を使う
文字式では割り算を利用しません。そもそも割り算は利用場面が限られており、数学で割り算を利用する人はほとんどいません。事実、中学校や高校の数学で割り算を利用する人はいません。
割り算は分数の掛け算に直すことができます。文字式では割り算を利用せず、掛け算のみの式にしましょう。
分数の文字式や逆数を学ぶ
文字式を理解するとき、最も難しい概念の一つが「割り算を分数の掛け算に直すこと」です。そこで、文字式の割り算をどのように分数に変換すればいいのか説明していきます。
割り算は逆数を取ることで、以下のように分数の掛け算に直すことができます。
同じことは文字式にもいえます。以下のように、文字式の割り算は逆数を取ることで、分数の掛け算に直すことができます。
なお文字式の掛け算では、アルファベットを分子に記載してもいいし、分数の横に記してもいいです。そのため、以下のようになります。
どちらの表記でも正解です。どちらを利用してもいいですが、両方とも書けるようにしておきましょう。
注意点として、分母に文字がある場合、アルファベットは必ず分母になければいけません。分数の隣にアルファベットを記してはいけません。そのため、以下のようになります。
前述の通り、分子にあるアルファベットがある場合、分子に記載してもいいし、分数の隣に記載してもいいです。ただ分母にアルファベットがある場合、必ず分母に記すようにしましょう。
代数式の単項式と多項式の違い
これら文字式(代数式)についてルールを理解した後は、言葉の意味を理解しなければいけません。文字式を勉強するとき、必ず習う言葉が単項式と多項式です。単項式と多項式の両方とも、文字と数字を利用した式です。
両者の違いとしては、以下のようになります。
- 単項式:掛け算だけの式
- 多項式:足し算と引き算が混じっている式
単項式とは、要は一つの文字式のことだと理解すればいいです。
文字式では、掛け算をするときに×を省略すると説明しました。その結果、掛け算だけの文字式では、数字と記号が並ぶようになります。このとき、数字と文字の塊が単項式です。
ただ数学では、掛け算だけの式とは限りません。割り算は掛け算に直すことができるものの、足し算や引き算は掛け算にすることができません。
そのため式の中に足し算や引き算があると、いくつもの単項式が存在することになります。式の中に足し算や引き算が含まれることで、複数の単項式が存在する場合、多項式といいます。
単項式と多項式の違いとしては、足し算または引き算が式の中に含まれるかどうかで判断しましょう。プラスまたはマイナスによって、式に複数の単項式が存在するのが多項式です。
単項式と多項式の係数・項・次数
参考までに、文字式(代数式)で単項式と多項式を習うとき、係数や項、次数という言葉が出てきます。それぞれ、以下のようになります。
- 係数:単項式の数字
- 項:数字と文字を含めた単項式
- 次数:\(x\)や\(a\)など、文字の数
これらの言葉の定義を理解し、覚える必要はありません。ただ、単項式と多項式を説明する教科書には必ず出てくる単語なので、どのような意味になるのかザックリと理解しましょう。
係数については、単項式の数字を指します。例えば、以下のようになります。
プラスやマイナスを含め、文字の前にある数字が係数だと理解しましょう。
それに対して、それぞれの単項式を項といいます。先ほどの式であれば、以下が項です。
係数と項の見分け方は簡単です。ただ、数学で係数と項は重要な言葉ではありません。それよりも重要な言葉が次数です。
次数とは、単項式に含まれている文字(アルファベット)の数を指します。
なお多項式では、次数の異なる単項式が複数含まれます。これら単項式の中でも、最も高い文字の数を次数にします。
次数の定義を理解するのは、多項式で重要になります。多項式に含まれている単項式の中で、最も大きい文字の数が多項式の次数です。例えば、以下の式にはいくつかの単項式が含まれています。
この式では、最も大きい次数が2です。そのため、この多項式は2次式です。
数学では一次関数や二次関数などの公式を学びます。一次関数なのか、それとも二次関数なのかについては、どのように見分けるのでしょうか。これについて、多項式の次数がいくつかによって見分けることができます。
多項式の足し算と引き算:同類項をまとめる
単項式と多項式の文字式(代数式)について学んだあと、次に理解しなければいけないのが足し算と引き算です。私たちは既に足し算と引き算について学んでいます。ただ、アルファベットが含まれる文字式の足し算と引き算はどのようにすればいいのでしょうか。
\(x\)や\(y\)などの文字が式の中に含まれていたとしても、これらの文字式は数字と同じです。例えば、以下の式があるとします。
- \(3x+1\)
\(x\)には自由に数を入れることができます。そのため以下のように答えは変わります。
重要なのは、文字式であっても答えとして具体的な数字を出せることです。
そうしたとき文字式では、文字が完全に同じ場合、足し算または引き算によってまとめることができます。多項式では、文字が同じ項を同類項といいます。同類項は以下のように見分けます。
文字が完全に同じ場合は同類項なので、まとめることができます。つまり、同類項同士で足し算や引き算をすることができます。
複数の同類項について、足し算と引き算をすることで一つにすることを「同類項をまとめる」といいます。同類項をまとめる場合、以下のようになります。
同類項を並べた後、係数同士で足し算または引き算をします。例えば、\(x^2\)の係数は1です。また、\(-3x^2\)の係数は-3です。そのため、上図で示した計算になります。
もう一度、記すと以下のようになります。
\(x^2-3x^2\)
\(=(1-3)x^2\)
\(=-2x^2\)
多項式の足し算と引き算では、同類項をまとめましょう。そのためには、同類項を並べる必要があります。文字が完全に一致しているものの、数字(係数)が異なる単項式が同類項です。
なお次数が違う場合、同類項ではありません。例えば、以下は同類項ではありません。
次数を含め、文字の部分が完全に一致している単項式のみ同類項です。例えば、以下の単項式はそれぞれ同類項ではありません。
- \(2x^2\)
- \(4xy\)
- \(3a^2\)
- \(-3x\)
- \(5y\)
なぜ、これらは同類項ではないのでしょうか。それは、文字や次数が違うからです。同類項をまとめられるのは、文字が完全に一致しているときだけだと理解しましょう。同じ性質がある同類項だからこそ、足し算または引き算をすることができます。
多項式の引き算はマイナスに注意
なお、文字式(代数式)の足し算と引き算では、特に引き算で注意しなければいけません。多項式の引き算でかっこがある場合、多くの人が計算ミスをします。より具体的にいうと、かっこの前にマイナスがある場合、計算ミスが多発します。
かっこの前にマイナスがある場合、かっこを外すときに符合が変わります。例えば、以下のようになります。
つまり、かっこの中の符合がすべて変わります。なぜ、かっこの前にマイナスがあると、かっこの中の符合がすべて変わるのでしょうか。それは、かっこ内は一つの数字とみなすからです。
数学では、かっこの中を先に計算するルールがあります。この理由として、かっこの中に式があったとしても、それらの式を含めて一つの数字と捉えるからです。一つの数字である以上、先に計算しなければいけません。
例えば\(-(1+3)\)の計算式があったとき、どのように計算するでしょうか。以下のように計算します。
この式では、かっこがあるので先に\(1+3\)をします。その後、マイナスをかけることで-4が答えです。
一方で、先にかっこを外す場合はどのように計算すればいいのでしょうか。この場合、両方の数字に対して-1を掛けます。かっこの中の符合をすべて変えるのです。その結果、以下のように先ほどと答えが同じになります。
かっこの中の式については、同じ数字とみなさなければいけません。これが、かっこの前にマイナスがある場合には、かっこを外すときにすべての符合を変えなければいけない理由です。同じ数字とみなすにも関わらず、かっこを外すとき、式の一方だけの数字のみ符合を変えてはいけません。
そのため、同類項をまとめるときは以下のように計算します。
多項式の足し算については、トラブルなく問題を解くことができます。それに対して、多項式の引き算では多くの人が計算ミスをします。計算ミスをする部分は決まっています。引き算でかっこを外すとき、計算ミスが多発します。
どの場所で計算ミスが起こりやすいのか理解しましょう。また、正しい問題の解き方を学びましょう。そうすれば、多項式の足し算と引き算での計算ミスを防げるようになります。
練習問題:単項式と多項式の足し算と引き算
Q1. 次の計算をしましょう
- \(2a÷(-5)\)
- \(3b÷2x÷y\)
A1. 解答
単項式の計算では、割り算を掛け算に直さなければいけません。そこで逆数を使い、すべて掛け算の分数に直しましょう。そうすると、以下のようになります。
(a)
\(2a÷(-5)\)
\(=2a×\left(-\displaystyle\frac{1}{5}\right)\)
\(=-\displaystyle\frac{2a}{5} \left(または-\displaystyle\frac{2}{5}a\right)\)
(b)
\(3b÷2x÷y\)
\(=3b×\displaystyle\frac{1}{2x}×\displaystyle\frac{1}{y}\)
\(=\displaystyle\frac{3b}{2xy} \left(または\displaystyle\frac{3}{2xy}b\right)\)
Q2. 次の計算をしましょう
- \(\displaystyle\frac{1}{2}x-\displaystyle\frac{1}{3}x\)
A2. 解答
同類項の文字式であれば、足し算や引き算をすることができます。もちろん、分数や小数であっても同類項同士は足し算や引き算が可能です。
\(\displaystyle\frac{1}{2}x-\displaystyle\frac{1}{3}x\)
\(=\displaystyle\frac{3}{6}x-\displaystyle\frac{2}{6}x\)
\(=\displaystyle\frac{1}{6}x\)
Q3. 次の計算をしましょう
- \(x^2+3-3x-7x^2+5x-10\)
- \((-2x+4y)+(9x-8y)\)
- \((x+3y)-(3x-6y)+4x\)
A3. 解答
多項式では、同類項同士をまとめるようにしましょう。そうすれば、足し算や引き算を行えるようになります。
かっこの前の符合がプラスの場合、注意するべき点はありません。一方でカッコの前の符合がマイナスの場合、かっこを外すときの計算ミスが頻繁に発生します。かっこを外すとき、符合を変えなければいけないからです。
(a)
\(\color{red}{x^2}+3-\color{blue}{3x}\color{red}{-7x^2}+\color{blue}{5x}-10\)
\(=\color{red}{x^2- 7x^2}\color{blue}{-3x+5x}+3-10\)
\(=\color{red}{(1-7)}x^2+\color{blue}{(-3+5)}x+(3-10)\)
\(=-6x^2+2x-7\)
(b)
\((\color{red}{-2x}+\color{blue}{4y)}+(\color{red}{9x}\color{blue}{-8y})\)
\(=\color{red}{-2x+9x}+\color{blue}{4y-8y}\)
\(=\color{red}{(-2+9)}x+\color{blue}{(4-8)}y\)
\(=7x-4y\)
(c)
\((x+3y)\color{red}{-(3x-6y)}+4x\)
\(=x+3y\color{red}{-3x+6y}+4x\)
\(=x-3x+4x+3y+6y\)
\(=(1-3+4)x+(3+6)y\)
\(=2x+9y\)
文字式の定義と計算方法を学ぶ
数学で文字式(代数式)を勉強した後、計算問題はほぼすべて文字式になります。そのため文字式のルールを理解しなければ、数学の計算問題を解くことはできません。そこで、必ず文字式のルールを覚えるようにしましょう。
ルールがあるからこそ、私たちは正しい計算をすることができます。また何も考えずにルールを覚えるのではなく、理由を含めて学びましょう。
なお、多項式の足し算と引き算では同類項をまとめる作業が重要です。特にかっこの前にマイナスの記号がある場合、計算ミスが起こりやすいです。プラスとマイナスの符合が正しいかどうか確認しながら問題を解きましょう。
数学で非常に重要な学習が文字式です。あらゆる数学の問題で文字式が出てくるため、文字式の定義や理由まで含めて、基礎を学ぶようにしましょう。