正の数と負の数について、足し算・引き算・掛け算・割り算を学んだあと、それぞれが混ざった式の計算を行えるようになる必要があります。
加法・減法・乗法・除法の4つをまとめて四則(しそく)といいます。
中学数学では四則計算(四則演算)を勉強します。ただ、正の数と負の数を学んだあとの四則計算では、計算するときのルールを事前に理解しなければいけません。数学の計算では、正しい問題の解き方の順序があるので覚える必要があります。
それでは、どのように正負の数の四則計算をすればいいのでしょうか。累乗や優先順位、かっこのルールを含めて解説していきます。
もくじ
四則計算(四則演算)で重要なルールを覚える
何かをするためには、ルールを覚える必要があります。例えばサッカーをするとき、ボールを手で持ってはいけません。そのようなルールが決められているからです。ルールを守るからこそ、フェアプレイができるようになります。
また、人々が法律を守るからこそ犯罪件数を抑えることができます。「略奪や強盗が罰せられる」という法律(ルール)がない場合、多くの犯罪が起こってしまいます。
同じように、数学にはルールがあります。ルールに従って計算することで、正しい計算を行えるようになります。四則計算で認識するべきルールとしては、以下の順番に計算しなければいけないことがあげられます。
- 累乗の計算を行う
- かっこの中を計算する
- 掛け算と割り算を行う
- 足し算と引き算を行う
この順番でなければ、数学で正しい答えを導き出すことはできません。例えば、以下はかっこの場所を変えただけですが、答えが違います。
- \((2×3)+4=10\)
- \(2×(3+4)=14\)
記号の位置や種類が変わることで、答えが大きく異なります。高校や大学の数学、簿記、プログラミングなど、あらゆる場面で四則計算が重要です。そこで、数学のルールを覚えましょう。
最初に累乗の計算を行う理由
四則計算で最初に考えるべきは累乗です。式の中に累乗がある場合、先に計算しなければいけません。
なぜ、累乗の計算を最初に計算しなければいけないのでしょうか。それは、一つの数字だからです。累乗が計算式の中にある場合、最初に累乗を計算せずに答えを出すのは不可能です。
数学では、数字を明確にしなければ計算できません。例えば、以下のように累乗の計算を先に行います。
- \(2×\color{red}{4^2}=2×\color{red}{(4×4)}=2×\color{red}{16}=32\)
42の答えは16です。そこで、事前に42を16に置きかえなければいけません。「\(4^2=16\)」である以上、この計算を先に行う必要があります。
一方で累乗の計算を無視して、数字同士の掛け算をすると間違った答えになります。例えば、以下の計算は間違いです。
- \(\color{red}{2×4}^2=\color{red}{8}^2=8×8=64\)
42が一つの数字であるにも関わらず、累乗の計算をせずに他の数字との掛け算または割り算をすると、間違った答えになります。そのため計算式の中に累乗がある場合、最初に計算するようにしましょう。
かっこの中を計算する
数学では、かっこを用いる場面がたくさんあります。重要なのは、かっこの中を優先して計算しなければいけないことです。
かっこの中にある式は、一つの数字として捉えます。かっこの中には式が書かれてあるものの、式を一つの数字と捉えるため、先に計算しなければいけません。
累乗について、一つの数字と捉えるため、最初に計算しなければいけないと説明しました。かっこ内の計算についても同じように考えます。一つの数字である以上、かっこ内の数字を先に導き出さなければ、計算をすることはできません。
例えば、以下の問題を解いてみましょう。
- \(2×\color{red}{(7-3)}=2×\color{red}{4}=8\)
先に\((7-3)=4\)を計算することで、正しい答えを出すことができます。一方で以下のように、かっこを無視して先に掛け算の計算をするのは間違いです。
- \(\color{red}{2×(7}-3)=14-3=11\)
かっこがある場合、かっこ内の計算を最初に行うようにしましょう。
なお、かっこの中に累乗を含むことがあります。この場合、数学のルールの通り累乗の計算をした後、かっこの中を計算します。例えば、以下のようになります。
- \(2×\color{red}{(7-3^2)}=2×\color{red}{(7-9)}=2×\color{red}{-2}=-4\)
累乗は一つの数字なので、累乗の計算をしないと、かっこの中の計算は不可能です。そのため、累乗の計算を最初にすることを理解しましょう。
掛け算と割り算は足し算と引き算より先に計算する
次に行うべき計算が掛け算と割り算です。先に掛け算と割り算を行い、足し算と引き算は後回しにします。なぜ、掛け算(または割り算)が優先されるのでしょうか。それは、単位を考慮しなければいけないからです。
数学で計算するとき、多くの問題には単位がありません。しかし実際の日常生活では、単位が存在します。数学は日常生活で用いられるため、単位を意識しなければいけません。計算式では単位を省いているだけであり、単位が隠れているのです。
そうしたとき、日常生活で足し算または引き算をする場面は限られます。足し算または引き算をするためには、単位が同じでなければいけないからです。例えば、3kgと5kgを足すと8kgになります。しかし、3kgと200円を足すことはできません。単位が違うからです。
重要なのは、自由に足し算や引き算をしてはいけないという事実です。
一方で掛け算(または割り算)であれば、単位が違ったとしても計算できます。例えば、1kg200円のバナナを3kg買う場合、以下のようになります。
- \(200\)円\(×3\)kg\(=600\)円
掛け算では式の中にkgを使っているものの、答えの単位は円です。掛け算(または割り算)では、単位を変えることができます。
前述の通り、同じ単位であれば足し算や引き算をすることができます。足し算や引き算よりも先に掛け算と割り算をしなければいけないのは、単位を揃える必要があるからです。
・最後に足し算と引き算を行う
これらのルールを理解して計算するようにしましょう。累乗やかっこ、掛け算・足し算の計算をした後、最後に足し算と引き算をします。
すべての数字を計算し、単位が揃った後であれば、足し算と引き算が可能です。数学では、こうしたルールがあることを理解しましょう。
左から順に計算する?割り算を分数の掛け算に直す
ここまで、プラスとマイナスの数について四則計算(四則演算)をするとき、優先順位とその理由について解説してきました。ただ人によっては、ここまでの説明に加えて「左から順に計算する」というルールを教えられることがあります。ただ、このルールは忘れて問題ありません。
足し算や掛け算について、どのように計算したとしても答えは同じです。前述の通り掛け算について、足し算と引き算よりも優先しなければいけないルールは守らなければいけません。ただ、左から計算しても右から計算しても、答えは同じです。
それにも関わらず、なぜ正負の数の四則計算では、左から順に計算しなければいけないのでしょうか。それは、割り算が含まれるからです。計算式の中に割り算が含まれる場合、左から計算しなければ正しい答えを導き出すことができません。
例えば、以下の計算をしてみましょう。
- \(\color{red}{6÷2}×3=\color{red}{3}×3=9\)
左から順に計算することで、答えは9になります。一方で右から順に計算するとどうなるでしょうか。以下のようになります。
- \(6÷\color{red}{2×3}=6÷\color{red}{6}=1\)
このように左から計算するのか、それとも右から計算するのかによって答えが変わります。式を確認すると、本来は2で割らなければいけないにも関わらず、間違った計算では6で割っています。このような計算ミスがあるため、一般的には左から順に計算するようにいわれています。
割り算は利用せず、すべて分数の掛け算に直す
ただ実際のところ、数学で割り算は非常に不便です。割り切れないケースは非常に多く、利便性が乏しいのです。そのため実際のところ、高校や大学を含め、中学生以上の数学で割り算を利用することはほぼありません。
割り算の代わりとして、分数を利用します。割り算は以下のように、分数の掛け算に直すことができます。
小学校の算数では割り算を利用します。ただ中学数学でプラスやマイナスの数を勉強した後の四則計算では、割り算を利用することは基本的にないと考えましょう。すべての人が割り算を分数の掛け算に直して計算しています。
そのため先ほどの計算であれば、以下のように直して計算します。
- \(6\color{red}{÷2}×3=6\color{red}{×\displaystyle\frac{1}{2}}×3=9\)
掛け算であれば、左から計算しても右から計算しても答えは同じです。また割り切れない場合であっても、分数を利用することで答えを導き出すことができます。小数の割り算であっても、分数の掛け算に直せば計算は非常に簡単です。
割り算は利便性が悪く、実際のところ数学の計算で利用するケースはほぼありません。そこで、必ず分数の掛け算に直すようにしましょう。
練習問題:プラスとマイナスの数の四則計算
Q1. 次の計算をしましょう
- \(-5-4×-3\)
- \(3+8÷(-2)\)
- \(-2^3×(5-3^2)\)
A1. 解答
プラスとマイナスの数の四則計算(四則演算)では、おさらいすると以下の順番で計算しなければいけません。
- 累乗の計算をする
- かっこの中を計算する
- 掛け算と割り算をする
- 足し算と引き算をする
この順番で計算すると、以下のようになります。
(a)
\(-5-\color{red}{4×-3}\)
\(=-5-\color{red}{(-12)}\)
\(=-5+12\)
\(=7\)
(b)
\(3+\color{red}{8÷(-2)}\)
\(=3+\color{red}{(-4)}\)
\(=3-4\)
\(=-1\)
(c)
\(-\color{red}{2^3}×(5-\color{blue}{3^2})\)
\(=-\color{red}{8}×(5-\color{blue}{9})\)
\(=-8×(-4)\)
\(=32\)
Q2. 次の計算をしましょう
- \(3^2-(-3)^2×(-2)^2\)
- \(6÷\displaystyle\frac{3}{2}×3+\displaystyle\frac{1}{2}\)
- \((7-3^2)×2^2-(-6)÷(-3)^2\)
A1. 解答
先ほどの計算に比べて、少し複雑になっています。また、割り切れない割り算もあります。割り算については、前述の通り分数の掛け算に直して計算しましょう。
そうすると、以下のようになります。
(a)
\(3^2-(-3)^2×(-2)^2\)
\(=9-9×4\)
\(=9-36\)
\(=-27\)
(b)
\(6\color{red}{÷\displaystyle\frac{3}{2}}×3+\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(=6\color{red}{×\displaystyle\frac{2}{3}}×3+\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(=12+\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(=\displaystyle\frac{24}{2}+\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(=\displaystyle\frac{25}{2}\)
(c)
\(\color{red}{(7-3^2)×2^2}-\color{blue}{(-6)÷(-3)^2}\)
\(=\color{red}{(7- 9)×4}-\color{blue}{(-6)÷9}\)
\(=\color{red}{-2×4}-\color{blue}{(-6)×\displaystyle\frac{1}{9}}\)
\(=-8-(-\displaystyle\frac{6}{9})\)
\(=-8-(-\displaystyle\frac{2}{3})\)
\(=\color{red}{-8}+\displaystyle\frac{2}{3}\)
\(=\color{red}{-\displaystyle\frac{24}{3}}+\displaystyle\frac{2}{3}\)
\(=-\displaystyle\frac{22}{3}\)
足し算・引き算・掛け算・割り算の四則計算
プラスとマイナスの数を学ぶとき、四則計算はより複雑になります。符合がどうなるのか考えなければいけないだけでなく、累乗やかっこを用いて計算するため、四則計算のルールを覚えなければいけません。
そこで四則計算のやり方について、なぜそのような数学のルールになるのか、理由を含めて解説してきました。数学で問題を解くときは正しい順番があるため、必ず順番通りに計算するようにしましょう。
また割り算については、分数の掛け算に直すといいです。割り算は利用頻度がほぼないです。事実、高校などでより高度な数学を学ぶとき、割り算を使う人はいません。その代わり、分数の掛け算を用いて計算します。そのため、いまから割り算を掛け算に直すクセをつけましょう。
数学の問題を解くときはルールやコツがあります。理由を含めて数学のルールを理解し、問題を解けるようにしましょう。