中学数学で学ぶ図形に二等辺三角形と直角三角形があります。二等辺三角形と直角三角形は特殊な三角形だといえます。
特殊な三角形なので、それぞれ特徴があります。どのような特徴があるのか学ぶことによって、角度を計算したり、図形の証明を行えたりできるようになります。
二等辺三角形と直角三角形は一緒に学ばなければいけません。これらの図形は複合問題が頻繁に出されるからです。つまり、二等辺三角形と直角三角形の両方の性質を理解することで、ようやく問題を解けるようになるのです。
そこで二等辺三角形と直角三角形について、どのような性質があるのかを解説した後、合同であることの証明条件まで含めて解説していきます。
もくじ
特殊な三角形が二等辺三角形と直角三角形
あらゆる図形の中でも、最も頻繁に出される図形の問題が三角形についてです。ただ、三角形には種類があります。特定の条件を満たす三角形の場合、別名で呼ばれるのです。
こうした三角形としては以下があります。
- 二等辺三角形
- 直角三角形
特殊な三角形の代表例としては、他にも正三角形があります。すべての辺の長さと角度が同じである三角形が正三角形です。正三角形については、非常に単純な性質を有しています。
一方で二等辺三角形と直角三角形は、正三角形に比べて覚えなければいけない性質が多くなります。また二等辺三角形と直角三角形は複合問題として出されることがよくあるため、両方の性質を理解していなければ問題を解けないことが頻繁にあります。
さらに直角三角形では、直角三角形だけ利用できる合同条件があります。この合同条件を必ず覚えなければいけません。
二等辺三角形の定義と性質・定理
特殊な図形について、その定義を理解することは重要です。二等辺三角形の場合、どのような定義になっているのでしょうか。以下の条件を満たす場合、すべての三角形は二等辺三角形と呼ばれるようになります。
- 2辺が等しい三角形
つまり2つの辺が等しい場合、必ず二等辺三角形になります。逆に考えると、すべての辺の長さが等しくない場合、二等辺三角形ではありません。定義であるため、以下の二等辺三角形では必ずAB=ACとなります。
数学の問題で二等辺三角形が出題されている場合、2つの辺については同じ長さとみなして問題を解くようにしましょう。
また二等辺三角形には、定義から導き出される性質(定理)があります。この定理としては、底角が等しいことがあげられます。二等辺三角形では2つの辺が等しいと同時に、底面にある2つの角度がそれぞれ等しくなります。
定義から導き出される性質を定理といいます。二等辺三角形の定理の一つが、底角が等しいことです。
二等辺三角形の底角が等しい証明
なお、なぜ二等辺三角形であれば底角が等しいのでしょうか。中学数学では証明を学ぶため、底角が等しくなる理由を証明しましょう。そこで点DがBCの中点となる以下の二等辺三角形を考えましょう。
証明すると以下のようになります。
- △ABDと△ACDについて
- AB=AC:二等辺三角形の定義より – ①
- BD=CD:点DはBCの中点 – ②
- AD=AD:共通の線 – ③
- ①、②、③より、3組の辺がそれぞれ等しいため、△ABD≡△ACD
- △ABD≡△ACDなので、∠B=∠C
三角形が合同であると証明することで、二等辺三角形の底角が等しいと証明することができました。二等辺三角形だと2つの辺が等しいと同時に、必ず底角が等しくなります。
直角三角形の性質と斜辺
また二等辺三角形の性質と同時に学ばなければいけない特殊な三角形が直角三角形です。三角形の中に90°の角度がある場合、その三角形は直角三角形と呼ばれます。
直角三角形には斜辺という言葉があります。一般的な三角形には斜辺がありません。ただ直角三角形は特殊な三角形であるため、斜辺を利用して直角三角形の性質を説明します。直角三角形の斜辺は以下の部分を指します。
90°の角度をもつ三角形が直角三角形の定義です。また直角三角形の場合、斜辺に加えて鋭角が2つあります。90°よりも小さい角度を鋭角といいます。直角三角形では、90°ではない2つの角度は必ず鋭角です。
直角三角形の合同条件
重要なのは、三角形の合同条件に加えて直角三角形には独自の合同条件がある点です。このとき、三角形の合同条件は以下の4つです。
- 3組の辺がそれぞれ等しい
- 2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
- 1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい
- 2組の角とその間にない1組の辺がそれぞれ等しい
※日本ではなぜか三角形の合同条件として「2組の角とその間にない1組の辺がそれぞれ等しい」を学びません。ただ、世界では合同条件4つすべてを学ぶのが基本です。
これに加えて、直角三角形だけに存在する合同条件があります。以下が直角三角形の合同条件です。
- 斜辺と他の辺がそれぞれ等しい
三角形の合同条件は全部で5つです。三角形の合同条件に加えて、直角三角形の合同条件を覚えるようにしましょう。
・斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい
なお、日本では直角三角形の合同条件として「斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい」も学びます。ただ、これは「2組の角とその間にない1組の辺がそれぞれ等しい」と意味が同じです。そのため、本来は「2組の角とその間にない1組の辺がそれぞれ等しい」が正しいです。
しかし、一応はテストで点数を取らなければいけません。そのため、直角三角形の合同条件として「斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい」も覚えるようにしましょう。
・2つの角度が等しいだけでは不十分
なお直角三角形の合同条件として、2つの角度が等しい場合はどうなるのかと考える人もいます。ただこの場合、必ずしも2つの直角三角形は合同とはいえません。以下のように、形が異なるケースがあるからです。
角度が等しいだけでは絶対に合同とはいえません。三角形の合同条件を満たさなければ、三角形は合同になりません。
練習問題:図形の証明問題
Q1. 次の図形を証明しましょう
下の図形について、△ABCはAB=ACの二等辺三角形です。BD⊥AC、CE⊥ABのとき、△BCE≡△CBDを証明しましょう。
A1. 解答
二等辺三角形と直角三角形の複合問題は頻繁に出されます。そこで、2つの図形の性質を理解するようにしましょう。
- △BCEと△CBDにおいて
- ∠BEC=∠CDB=90°:仮説より – ①
- BC=CB:共通の線 – ②
- ∠EBC=∠DCB:二等辺三角形の底角は等しい – ③
- ①、②、③より、斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しいため、△BCE≡△CBD
Q2. 次の図形を証明しましょう
下の図形について、△ABCは∠ABC=90°の直角三角形です。点Bから辺ACに対して、垂直な線BDを引きます。また∠BACの二等分線を引き、交点をそれぞれ以下のようにE、Fとします。BE=BFを証明しましょう。
A2. 解答
「辺の長さが同じ」と証明する方法としては、いくつか候補があります。最も一般的な方法は、合同な三角形を見つけるやり方です。ただ、図をみると合同になる2つの三角形は存在しないように思えます。
そこで、別の方法によって辺の長さが同じだと証明することを考えましょう。二等辺三角形の性質としては、2つの辺が等しく、かつ底角が等しいです。そのため2つの角度が同じだと説明で切れば、その三角形は二等辺三角形であり、2つの辺の長さが等しいと分かります。
まず、△ABFに着目しましょう。△ABFは直角三角形であり、∠AFBは以下のようになります。
- \(∠AFB=180°-90°-∠BAF\)
- \(∠AFB=90°-∠BAF\) – ①
一方で∠AEDはどうでしょうか。△AEDは直角三角形であり、∠AEDは以下のようになります。
- \(∠AED=180°-90°-∠EAD\)
- \(∠AED=90°-∠EAD\) – ②
また対頂角は等しいため、∠AED=∠BEFとなります。そのため②に対して、∠AEDを∠BEFに置きかえることで以下のようになります。
- \(∠BEF=90°-∠EAD\) – ③
∠BACの二等分線を引いたため、∠EADと∠BAFの角度は同じです。そのため、以下のようになります。
- \(∠AFB=90°-∠BAF\) – ①
- \(∠AFB=90°-∠EAD\) – ③を代入
- \(∠AFB=90°-(90°-∠BEF)\)
- \(∠AFB=∠BEF\)
こうして、∠AFBと∠BEFの角度が等しいため、△BEFは二等辺三角形だと分かります。また二等辺三角形なので、BE=BFです。
特殊な三角形の性質を利用し、証明する
角度の計算をしたり、図形の証明をしたりする問題は中学数学で頻繁に出されます。これら図形の問題としては、特殊な三角形を利用することがよくあります。特殊な三角形としては、二等辺三角形と直角三角形があります。
二等辺三角形の特徴は2つあります。一つ目は、2つの辺が等しいことです。もう一つは、底角がそれぞれ等しいことです。それに対して、直角三角形では合同条件があります。直角三角形だけ利用できる合同条件があるため、覚えるようにしましょう。
重要なのは、二等辺三角形と直角三角形は複合問題が出されることです。二等辺三角形と直角三角形の両方の性質を理解していないと問題を解けないケースが多いです。二等辺三角形と直角三角形の特徴を使って答えるようにしましょう。
特殊な三角形として、二等辺三角形と直角三角形は頻繁に出題されます。数学で重要な図形なので、定義や性質、合同条件を覚えたうえで問題を解きましょう。