電荷が存在する場合、電場が発生します。電位差によって電場が発生し、電気力線を書くことができます。

このとき、電場が発生している中に導体が存在する場合、電場と電荷にはどのような変化があるのでしょうか。具体的には、導体内部の電場と電荷はどのようになっているのでしょうか。理論とグラフの両方を理解しましょう。

また導体ではなく、不導体を電場内に置く場合はどのようになるのでしょうか。導体と不導体では異なる変化となります。

導体や不導体を電場内に置く場合、変化があります。そこで、導体と不導体の内部で発生する現象を解説していきます。

導体内の電荷と電場:導体内部の電場は0

正電荷と負電荷が存在する場合、電場が発生します。わかりやすくするため、一様な電場で解説していきます。まず、一様な電場が発生しているとき、電場内に導体を置く場面を考えてみましょう。

金属など、電気を通すことのできる物体が導体です。電気を通すというのは、自由電子が自由に動けることを意味しています。

電場は正電荷から負電荷の方向になります。そのため、下図の場合は導体の左側に自由電子が移動します。また電子が導体の左側に集まるため、右側は正電荷となります。

導体内部で正電荷と負電荷が発生するため、導体内で新たに電場が発生します。静電誘導により、以下のように元々の電場とは逆向きの電場が生まれます。

その結果、元々の電場と新たに発生した電場によって打ち消し合います。同じ大きさの電場が導体内で反対向きに発生するため、2つの電場が打ち消し合うことによって導体内の電場はゼロになります。

電場内に存在する導体の状態

ここまで解説した現象が起こるため、電場内に導体を置くと、以下の状態になります。

  • 導体内部の電場は0
  • 導体の表面には電荷が存在する
  • 導体内部は等電荷

なお電荷が変化するためには、電場がなければいけません。電位差\(V\)があると、電場\(E\)が作られます。

電場の公式より、\(V=Ed\)です。つまり一様な電場では、電場\(E\)は比例定数に相当します。ただ導体内部の電場が0の場合、電位差が存在しないため、導体では両端の電荷が同じになります。これが、導体内部で等電荷となる理由です。

・雷に打たれても車内では安全な理由

「落雷を避けるとき、車の中に避難すると安全」という話を聞いたことはないでしょうか。この理由は導体による静電誘導で説明できます。

雷は強力な電気であり、強い電場を有しています。ただ車は金属で作られており、導体です。そのため導体に強力な電気が当たっても、静電誘導によって先ほど説明した現象が起こり、車内の電場は0になります。つまり、車内は雷の影響がありません。

また車は地面と接しているため、電気は地面へ逃げていきます。そのため落雷があるとき、車内に避難するのは安全なのです。

導体内部での電場と電位のグラフ

次に、電場と電位がどのように変化するのかグラフで確認しましょう。一様な電場では、常に電場の大きさ\(E\)は同じです。ただ前述の通り、導体内部では電場が0になります。そのため、グラフにすると以下のようになります。

それでは、電位はどのように変化するのでしょうか。電場が存在することにより、距離が進むにしたがって電位が小さくなります。ただ導体内部には電場が存在しないため、等電荷になります。そのため、電位のグラフは以下のようになります。

電場は常に一定であるため、傾き\(-E\)は同じです。ただ導体が存在する部分については、傾きが0になるのです。

不導体は誘電分極が起こり、電場が弱まる

それでは導体ではなく、不導体を電場内に置く場合はどのような現象が起こるのでしょうか。導体では静電誘導が発生する一方、不導体では誘電分極によって少しだけ電荷の偏りが発生します。

不導体では、自由電子は存在しないため、電子は自由に物体を移動できません。そのため原子内でわずかに正電荷と負電荷に偏ることにより、弱い電場が発生します。

新たに生じる電場は弱いため、導体とは異なり、不導体では電場を完全に打ち消すことはできません。その代わり、不導体の内部では電場を弱めることになります。

不導体内部での電場と電位のグラフ

それでは、不導体を電場内に置くときの電場と電位のグラフを確認しましょう。一様な電場では、前述の通り電場は常に一定です。ただ不導体内部では、電場が弱まります。そのため、電場のグラフは以下のようになります。

一方で電位について、不導体には電場が存在するため、電位に変化があります。このとき、電場は少し弱くなるため、グラフの傾きは少し緩やかになります。そのため、以下のような電位のグラフになります。

不導体内部の電場は外部の電場よりも弱いため、こうしたグラフになります。導体で起こる現象を学べば、不導体でこのような現象がなぜ起こるのか理解できます。

導体または不導体が存在する場合の電場と電荷の様子

電場と電荷を習うとき、電場内に何も置かない状態でどのような現象が起こるのかを学びます。ただ場合によっては、電場内に導体または不導体が存在するケースもあります。

導体が電場内にある場合、導体内部の電場は静電誘導によってゼロになります。また電場がないので等電荷となり、電荷に変化はありません。

一方で不導体が電場内に存在する場合、誘電分極によって少し電場が弱くなります。それに伴い、不導体内の電荷の傾きは少しゆるやかになります。導体と不導体の違いについて、グラフを含めて理解しましょう。

導体と不導体では状況が異なります。原理は難しくないため、電場内に物体を置くとどのような現象が起こるのか学びましょう。