磁場が存在する場合、電流が流れると電流に力が加わります。公式を利用することにより、力の大きさを計算できます。

ただ、磁場から受ける影響は物質の種類によって異なります。そこで、どれだけ磁化しやすいのか(磁石になりやすいのか)を表す指標に透磁率があります。物理では、透磁率を比例定数として学ぶものの、透磁率の意味を理解しましょう。透磁率は磁化と関係しているのです。

また透磁率と磁場を利用することにより、磁束密度を得ることができます。磁場と物質の影響をまとめた指標が磁束密度です。また磁束密度を利用することにより、磁束線を描けるようになります。

それでは、透磁率や磁束密度は具体的に何を表しているのでしょうか。また、磁力線と磁束線の違いは何なのでしょうか。磁場で重要な透磁率や磁束密度、磁束線について解説していきます。

比例定数として利用される透磁率

電流が磁場から受ける力を計算するとき、透磁率\(μ\)を利用します。磁場が\(H\)、電流が\(I\)、物質の長さが\(l\)の場合、以下の公式によって力\(F\)を得ることができます。

  • \(F=μHIl\)

物質の性質により、比例定数(透磁率)\(μ\)の値は異なります。いずれにしても、磁場が電流に与える力を計算するとき、透磁率を利用します。

透磁率は磁化のしやすさを表す

それでは、透磁率とは何なのでしょうか。前述の通り、磁化のしやすさを表す指標が透磁率です。鉄は磁石にくっつきます。例えば、磁石とくっついている鉄は磁石になります。つまり、鉄が磁石としてふるまうことにより、磁石となった鉄にほかの鉄がくっつきます。

磁場による影響により、物質が磁石となる現象を磁化といいます。鉄を磁石にくっつけると、磁石と鉄を離した後であっても、磁石となった鉄は他の鉄を引き付けます(時間が経過すると、磁化した鉄は磁石の性質を失います)。

それでは、ほかの金属であっても磁化するかというと、鉄と同じように磁化するとは限りません。例えば、アルミニウムはほとんど磁化しないため、磁石にくっつきません。鉄が磁石にくっつくのは、磁場の影響を受けて磁化するからなのです。

このように、物質によって磁場に対する影響の受けやすさが異なります。透磁率というのは、磁場の影響をどれだけ受ける物質なのかを表す指標なのです。磁場の影響を受けやすい物質であるほど、外部磁場の影響によって強い力を受けるというわけです。

なお金属に限らず、空気や水も磁場による影響を受けます。ただ、水は磁石にくっつきません。アルミニウムと同じように、水は透磁率が低いです。そのため磁場が存在しても、水は磁石になりにくいのです。

透磁率と磁場をかけ、磁束密度を得る

透磁率の概念を理解した後、磁束密度とは何かを学びましょう。磁場\(H\)の影響を受けることにより、電流が流れている物質は力を受けます。また、透磁率\(μ\)は比例定数であり、物質によって異なります。

磁場によって電流が受ける力を計算するとき、必ず透磁率\(μ\)と磁場\(H\)を利用しなければいけません。そこで、透磁率\(μ\)と磁場\(H\)をセットにしましょう。「透磁率\(μ\)と磁場\(H\)をかけることにより、磁束密度\(B\)を得られる」と定義するのです。

  • \(B=μH\)

磁束密度は\(B=μH\)であるため、\(F=μHIl\)を以下のように変形しましょう。

  • \(F=BIl\)

この公式を覚える必要はなく、\(F=μHIl\)と磁束密度の定義を知っていれば簡単に公式を作ることができます。

公式を見てわかる通り、長さ1mの物質について、1Aの電流を流すときに受ける力が磁束密度です。磁束密度を利用すれば、比例定数を利用せずに力の大きさを得ることができます。なお、磁束密度の単位はT(テスラ)です。

磁力線と磁束線の違いには何があるのか

それでは、磁束密度を可視化させましょう。実際には、私たちは磁束密度を見ることができません。ただそれでは想像しにくいため、磁束密度を線で表すのです。これを磁束線といいます。

磁場が存在する場合、磁力線を描くことによって磁場の向きを可視化します。それに対して磁束線では、磁束密度を可視化し、線で表します。以下のように、磁力線と磁束線は完全に同じように思えてしまいます。

事実、磁力線と磁束線はほぼ同じものと考えていいです。それでは、なぜ磁束線を学ぶ必要があるのでしょうか。先ほどの図について、磁石の内部を含めて線を描くと以下のようになります。

このように磁石の内部まで可視化すると、磁力線と磁束線は異なるとわかります。なぜ、磁束線を学ぶのかというと、磁力線よりも磁束線のほうが磁石の性質を正確に表すことができるからです。

電荷であれば、一つの物体全体が正に帯電する(または負に帯電する)のは普通です。それに対して磁石では、一つの物体全体がN極(またはS極)であることはあり得ません。磁石の場合、一つの物体に必ずN極とS極があります。事実、磁石を切るとN極とS極が新たに作られます。

そのため磁石が作る線というのは、必ず一周します。N極とS極が必ず存在するため、N極から出た線はS極に吸い込まれるのです。そのため、磁束線を利用するというわけです。

電気力線に相当する概念が磁束線

電場を可視化するとき、電気力線を利用します。磁束線というのは、電気力線に相当する概念です。電気力線には以下のルールがあります。

  • 電場の大きさが\(E\)の場合、1m2に\(E\)[本]の電気力線を書くことができる

同じように、磁束線には以下のルールがあります。

  • 磁束密度の大きさが\(B\)の場合、1m2に\(B\)[本]の磁束線を書くことができる

ただ電気力線と磁束線は異なります。電場の様子を表すとき、正電荷から負電荷に向けて電気力線を引きます。もし負電荷が周囲に存在しない場合、正電荷から発生られた電場(電気力線)は無限遠へ伸びます。

一方で磁石では必ずN極とS極が存在するため、N極から発せられた線はS極を通ります。磁束線が無限遠へ伸びることはなく、磁束線を描くと一周するため、その点では電気力線と磁束線は性質が異なります。

透磁率・磁束密度・磁束線の概念を理解する

物理で磁場を学ぶとき、比例定数として透磁率\(μ\)を覚える人が多いです。ただ比例定数では何を表しているのかわかりません。そこで、透磁率が何を意味しているのか知りましょう。透磁率というのは、磁場の影響によって磁石にどれだけなりやすいのかを表す指標です。

また透磁率と磁場をかけることにより、磁束密度を得ることができます。磁束密度がわかれば、電流と物体の長さを利用することで、磁場によって電流が受ける力を計算できます。

なお磁束密度を線によって可視化したものが磁束線です。磁束線はN極から発せられ、S極へ向かいます。磁束線は電気力線に相当する概念であるものの、線が一周するという点で異なります。

抽象的であるため、理解しにくい内容が磁束密度です。そこで、透磁率や磁束線が何を意味しているのかを学び、磁束密度を利用できるようになりましょう。