化合物の中には、非常に大きな分子量をもつケースがあります。多くの分子が連なることによって分子量の大きい化合物となる場合、高分子化合物と呼ばれます。自然界には高分子化合物が多く、タンパク質やDNAは高分子化合物です。
また合成高分子化合物も多く、ポリエチレンやナイロンは高分子化合物です。私たちの身の回りには高分子化合物が非常にたくさんあるのです。
高校化学では高分子化合物の基礎を学びます。そこで、高分子化合物の構造を理解しましょう。高分子化合物を合成するときの方法や重合体の概念、分子量の計算方法を理解するのです。
それでは、高分子化合物の性質には何があるのでしょうか。高分子化合物を学ぶとき、最初に理解しなければいけない概念を解説していきます。
もくじ
単量体(モノマー)と重合体(ポリマー)の関係
高校化学で有機化学を学ぶとき、分子量の小さい化合物を学びます。ただ化合物の中には、分子量が非常に大きいケースが存在します。これらを高分子化合物といいます。
高分子化合物は天然に存在する化合物と合成化合物の2つに分かれます。以下のようになります。
- 天然高分子化合物:デンプン、タンパク質、DNA
- 合成高分子化合物:ポリエチレン、ナイロン、合成ゴム
高分子化合物は小さい分子がいくつも連なることによって得ることができます。小さい分子が反応し、いくつもの分子が連なることで高分子化合物を得る反応を重合といいます。
このとき高分子を重合体(ポリマー)、小さい分子を単量体(モノマー)といいます。モノマーを原料として、重合させることでポリマーを得られるのです。
高分子化合物の合成方法は3種類
それでは、高分子化合物の合成方法には何があるのでしょうか。重合によって単量体(モノマー)が重合体(ポリマー)になるとき、主に以下の3つの反応があります。
- 付加重合
- 縮合重合
- 開環重合
それぞれの合成反応を確認していきましょう。
付加重合:二重結合または三重結合を有するモノマーを利用する
アルケンやアルキンの合成反応を学んでいる場合、高分子化合物の合成法を既に知っていると思います。
二重結合は付加反応を起こすことで知られています。付加反応の中でも、反応条件によっては重合反応を起こすケースがあります。この場合、付加重合反応と呼ばれます。二重結合の切断と共にほかの分子と結合し、いくつもの分子が連なるのです。
付加反応と重合反応が同時に起こることにより、付加重合反応が進行します。
またアルキンについても付加重合反応が起こります。アルキンに対して付加反応を起こし、ビニル基をもつ化合物が生成する場合、付加重合反応が起こります。以下がビニル基をもつ化合物です。
例えばアセチレンに酢酸を反応させると、付加反応によって酢酸ビニルを合成できます。その後、触媒存在下で酢酸ビニルを付加重合させるとポリ酢酸ビニルとなります。
二重結合や三重結合をもつ化合物では、付加重合によって高分子化合物を得ることができます。
縮合重合:分子の脱離によって重合する
H2Oなど、分子の脱離を伴って重合する反応を縮合重合といいます。付加重合では、分子の脱離はありません。一方で縮合重合の場合、モノマーから分子が脱離することによって重合反応が進行します。
高校化学で学ぶ縮合重合の例としては、テレフタル酸とエチレングリコールによる縮合重合があります。芳香族カルボン酸を習っている場合、テレフタル酸を用いた縮合重合を既に学んでいると思います。
テレフタル酸はパラ位にカルボン酸が2つ結合しています。そのため重合反応を起こすことができます。またテレフタル酸とエチレングリコールを縮合重合させるとき、分子内からH2Oがなくなります。
こうしてテレフタル酸とエチレングリコールがいくつも連なることによってポリエチレンテレフタラートを得ることができます。
開環重合:環状化合物が開裂し、重合反応を起こす
化合物の中には、環状化合物が存在します。通常、環状化合物が開裂することはありません。ただ化合物によっては、結合が切れることによって重合反応を起こし、高分子化合物が生成されることがあります。
開環重合を起こす化合物としては、分子内にアミド結合-CONH-をもつ化合物が知られています。例えばε-カプロラクタムは開環重合を起こし、新たにアミド結合を作ってナイロン6となります。
原料(ε-カプロラクタム)の名前を覚える必要はありません。重要なのは、環状化合物が開裂することで重合反応を起こす事実です。
重合度の違いによる重合体の書き方
それでは、重合体(ポリマー)の構造式はどのように記載すればいいのでしょうか。単量体(モノマー)の構造式の書き方は既に理解していると思います。一方で重合体については、繰り返しの部分をカッコでくくり、重合度nを利用して閉じましょう。例えば、以下のようになります。
ただ小さい分子とは異なり、重合体には2つの記載方法があります。両方の方法を理解する必要があるため、ポリマーの構造式は少し複雑です。
・重合度nが小さい
まず、重合度nが小さいケースを考えましょう。例えば分子が5つ結合する場合、重合度は5です。分子が8つ結合する場合、重合度は8です。
このように重合度が小さい場合、重合体の両端を記載します。例えば以下のようになります。
・重合度nが大きい
ただ一般的な高分子化合物では、重合度は大きくなります。数千、数万の分子が重合によって連なるのです。
この場合、両端に存在する原子は分子全体に対して寄与度が非常に小さく、無視することができます。そのため重合度nが大きい場合、両端の原子を省きます。以下のようになります。
「nの値がいくらであれば、重合度が大きいのか、それとも小さいのか」に関する定義はありません。ただ通常、高分子化合物では重合度が数千から数万になるため、両端の原子を記載しないケースが一般的です。
重合度と分子量の計算
それでは、重合度を利用した分子量の計算をしてみましょう。化合物の分子量を計算できる場合、高分子化合物の分子量の計算は難しくありません。
実際に問題を解いてみましょう。以下の問題の答えは何でしょうか。
- H2N-CH2-COOHを縮合重合することで得られる化合物について、以下の問いに答えましょう。なお、原子量はH=1、C=12、N=14、O=16です。
- 重合度が6の場合、分子量はいくらでしょうか。
- 分子量が5.7×105の場合、重合度はいくらでしょうか。
重合体について、分子量を計算する場合は必ず構造式を記載しましょう。
1)
重合度が6の場合、重合度は小さいです。そこで、両端の原子を記載しましょう。また、以下のように重合部分と両端の部分をそれぞれ分けて計算します。
重合部分の式量は57です。そのため、6倍すると342になります。また重合度が小さい場合、両端に存在する原子を考慮します。両端に存在する原子をすべて足すと18になります。そのため、分子量は360です。
重合部分と両端を分けて計算すればいいため、分子量の計算は難しくありません。
2)
次に、分子量から重合度を計算しましょう。先ほど計算した通り、重合部分の式量は57です。これがn回繰り返されることによって、分子量は5.7×105となります。
そこで重合度nを計算すると、重合度は1.0×104とわかります。高分子化合物の分子量がわかっている場合、重合部分の式量を計算することによって重合度を計算できます。また重合度がわかっている場合、式量と重合度をかけることによって高分子化合物の分子量を得ることができます。
高分子化合物の合成反応と重合度の概念
私たちの体内には多くの天然高分子化合物が存在します。また日々の生活では、多くの場面で合成高分子化合物を利用しています。そのため高分子化合物は重要であり、高校化学でも有機化学で高分子化合物を学びます。
そこで、まずは高分子化合物を合成するときの反応を覚えましょう。高分子化合物では、重合反応によって、同じ配列にて分子がいくつも並びます。このときの重合反応には付加重合、縮合重合、開環重合があります。
また重合度を利用して構造式を描いたり、分子量を計算したりしましょう。重合度が大きいのか、それとも小さいのかによって構造式の書き方が変わります。また、構造式を描くことによって分子量の計算を行えるようにしましょう。
ここまで解説した内容は高分子化合物を学ぶための基礎です。そのため、必ずこれらの内容を理解するようにしましょう。