物体が帯電しているかどうかについて、私たちの目で直接確認することはできません。私たちの目は原子を見ることができないからです。

そこで、帯電しているかどうかを確認できる装置を利用しましょう。このような装置として箔検電器(はくけんでんき)が知られています。非常にシンプルな構造をもつ装置が箔検電器です。

なお箔検電器を学ぶとき、接地(アース)についても理解しましょう。アースを含めて箔検電器を学ぶ場合、内容が少し複雑になります。接地することによって、帯電状態がどのように変化するのか理解するのです。

それでは、箔検電器の仕組みはどのようになっているのでしょうか。箔検電器を用いて帯電状態を調べる方法を解説していきます。

箔検電器の構造と原理:箔検電器が帯電すると、金属箔は開く

金属板と金属箔がつながっている装置が箔検電器です。金属板と金属箔は両方とも金属です。そのため、電子は金属板と金属箔の間を自由に動くことができます。以下の装置が箔検電器になります。

箔検電器は構造だけでなく、使い方もシンプルです。例えば正の帯電体を箔検電器にくっつけると、正の電荷が移動することにより、金属板と金属箔はプラスの電荷を帯びます。

正に帯電するため、金属箔は反発することによって金属箔が開きます。

一方で負の帯電体を箔検電器にくっつけると、金属板と金属箔は負に帯電します。その結果、金属箔が反発することによって開きます。正に帯電しても、負に帯電しても金属箔は開きます。このように金属箔が閉じているのか、それとも開いているのかによって帯電の状態を確認できます。

正の電荷が移動するとは、どういう意味なのか

なお電子に比べて陽子は非常に重いため、陽子が動くことはありません。そうしたとき、正の電荷が動くとは何を意味しているのでしょうか。

陽子が動くことはありません。動くのは電子です。そのため正確にいうと、正の帯電体を金属板にくっつけることにより、金属板と金属箔に存在する電子が正の帯電体へ移動します。その結果、箔検電器は正に帯電します。

ただ、結果的に箔検電器が正に帯電している事実は同じです。そのため「正の電荷が流入する」と「負の電荷(電子)が出ていく」のは同じ意味として捉えることができます。

例えば相対速度であれば、どちらの物体を基準にしても答えは同じであるため、どちらを基準にしてもいいです。同じように、電気についても結果が同じである以上、わかりやすさを優先するため、「正の電荷が移動する」と考えてもいいのです。

帯電体を近づけると箔は開く

それでは帯電体と箔検電器をくっつけるのではなく、帯電体を近づける場合はどのようになるのでしょうか。この場合についても、金属箔は開きます。ただ、先ほどとは状況が異なります。

例えば正の帯電体を近づける場合、電子が金属板に集まるため、金属板は負に帯電します。また電子が金属板に集まるため、金属箔は正に帯電します。その結果、金属箔は開きます。

一方で負の帯電体を近づける場合、逆の現象が起こります。

静電気力(クーロン力)により、金属箔同士は反発します。帯電体を箔検電器にくっつける場合だけでなく、近づける場合であっても金属箔は開くのです。

接地(アース)により、物体の帯電を消す

それでは、正または負に帯電した箔検電器を中性の状態に戻すにはどうすればいいのでしょうか。この方法に接地(アース)があります。

人や地球と触れることにより、帯電している物体を中性にする操作を接地(アース)といいます。人が金属と触れると、電子は人の体を通って地面へと逃げます。

反対に物体が正に荷電している場合、人が物体に触れると、人の体を通って地球から電子が供給されます。いずれにしても、金属板に触れることによって箔検電器を中性の状態に戻せます。また箔検電器の帯電がなくなると、金属箔は閉じます。

帯電体を近づけた状態でアースをする場合の箔検電器の状態

次に、帯電体を近づけた状態でアースをする場合、箔検電器がどのような状態になるのかを学びましょう。

例えば正の帯電体を近づける場合、金属板は負に帯電します。また金属箔は正に帯電するので、反発することによって金属箔は開きます。この状態で接地する場合であっても、静電誘導(帯電体を近づけることによって導体が電荷を帯びる現象)による影響は強いため、金属板は負に帯電します。

一方で金属箔は帯電体から離れているため、静電誘導による影響を受けません。そのため人間が金属板に触れて接地(アース)することにより、人間から電子が供給され、正に帯電していた金属箔は中性になります。

つまり金属板はマイナスの電荷を帯びているものの、金属箔はアースの影響によって電荷を帯びていない状態となります。

箔検電器を用いる練習問題:静電誘導とアース

それでは、箔検電器を用いる練習問題を解いてみましょう。ここまで解説した内容を理解していれば、問題を解くことができます。以下の問題の答えは何でしょうか。

  • 帯電していない箔検電器の金属板に対して、正に帯電したガラス棒を近づけると金属箔が開きました。この状態で人が指で金属板に触れた後、指を離し、さらにはガラス棒を金属板から離しました。この場合、金属箔の状態はどうなりますか。

先ほど説明した通り、正の帯電体を金属板に近づけると、金属板は負に荷電し、金属箔は正に荷電します。この状態で指が金属板に触れ、アースすると金属箔の正電荷は地面へ逃げます。つまり、箔検電器全体では電子が過剰に存在することになります。

※先ほど解説した通り、「アースによって人間から電子が供給される」と考えても問題ありません。いずれにしても、箔検電器には過剰の電子が存在することになります。

この状態で指を離し、さらには正の帯電体を遠ざけると、金属板に存在していた電子が金属箔にも流れ込みます。

この結果、金属箔は負に帯電して開きます。静電誘導と接地(アース)を組み合わせるため内容は少し複雑ではあるものの、順に考えれば問題を解くことができます。

箔検電器を学び、帯電の仕組みを知る

帯電しているかどうかを確認できる装置が箔検電器です。私たちは電子の動きを目で確認できないものの、帯電によって金属箔が開いているのか、それとも閉じているのかを確認することは可能です。

金属箔が閉じている場合、帯電していません。一方で金属箔が開いている場合、帯電しています。帯電体を金属板にくっつけるだけでなく、金属板に帯電体を近づけ、静電誘導を起こすことによっても金属箔は帯電します。

なお帯電状態をリセットしたい場合、指を触れることで接地(アース)をしましょう。アースによって金属箔は中性になります。

なお、帯電体の利用とアースを組み合わせるケースもあります。この場合、電荷の動きがどのようになるのか確認しましょう。これにより、電気の原理や仕組みを理解できるようになります。