対数の中でも、特殊な対数に常用対数があります。底が10の場合、常用対数と呼ばれます。常用対数の計算方法は一般的な対数と同様です。
数字の桁数の計算をしたり、小数点の位を計算したりするとき、常用対数は便利です。実際の計算をしなくても、桁数を得ることができるのです。
常用対数は日常生活の多くの場面で利用されています。また物理や化学などの科学分野では、常用対数を用いての計算がひんぱんに利用されます。そのため、常用対数の概念を学ばなければいけません。
それでは、どのように常用対数を用いて桁数の計算をすればいいのでしょうか。常用対数を用いて計算する方法を解説していきます。
もくじ
常用対数の定義と意味
まず、常用対数とは何かを理解しましょう。先ほど説明した通り、底を10とする対数が常用対数です。\(N\)を正の数とすると、常用対数は以下のように表されます。
- \(log_{10}N\)
常用対数を利用して計算する場合、以下のような数字を与えられていることが多いです。
- \(log_{10}2≒0.3010\)
- \(log_{10}3≒0.4771\)
- \(log_{10}7≒0.8451\)
これらの値を覚える必要はありません。重要なのは、これらの数字を用いて計算できることにあります。
桁数の計算で常用対数が利用される
桁数の計算をするとき、常用対数が便利です。常用対数を利用すれば、答えが何ケタになるのか容易にわかるからです。桁数と常用対数の関係は以下のようになります。
- 1(1ケタ):\(log_{10}10^0=0\)
- 10(2ケタ):\(log_{10}10^1=1\)
- 100(3ケタ):\(log_{10}10^2=2\)
- 1000(4ケタ):\(log_{10}10^3=3\)
- 10000(5ケタ):\(log_{10}10^4=4\)
このように確認すると、桁数に対して1を引くことにより、常用対数の数字と一致するとわかります。また常用対数の答えが2.1や2.5であっても、桁数は二ケタです。3ケタになるためには、必ず10の3乗でなければいけません。10を2.1乗したり、2.5乗したりする場合、答えは3ケタではなく2ケタになります。
例えば100ケタの数字の場合、常用対数を利用すると、数字として99を得られます。それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。
- \(2^{100}\)は何ケタの整数でしょうか。\(log_{10}2=0.3010\)を用いて計算しましょう。
常用対数を用いて以下のように計算しましょう。
\(log_{10}2^{100}\)
\(=100log_{10}2\)
\(=100×0.3010\)
\(=30.10\)
常用対数を加えることによって、30.10を得ることができました。これはつまり、\(2^{100}\)は31ケタの数字であることを意味しています。\(2^{100}\)の計算をしなくても、常用対数を利用すれば桁数の計算が可能になります。
小数点の位を計算する
大きい数字の桁数を計算できるのであれば、常用対数を用いて小さい数の計算も可能です。小数第何位で初めて0ではない数字が表れるのか計算したい場合、常用対数が便利です。
そこで、小数と常用対数の関係を学びましょう。以下のようになります。
- 0.1:\(log_{10}10^{-1}=-1\)
- 0.01:\(log_{10}10^{-2}=-2\)
- 0.001:\(log_{10}10^{-3}=-3\)
- 0.0001:\(log_{10}10^{-4}=-4\)
- 0.00001:\(log_{10}10^{-5}=-5\)
このように確認すると、小数第\(k\)位で初めて0ではない数字が表れる場合、常用対数の数字は\(-k\)になるとわかります。例えば常用対数を利用して得た答えが-2.1の場合、小数第2位で初めて0以外の数字が表れます。
それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。
- \(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{100}\)を小数で表すとき、小数第何位に初めて0ではない数字が表れるでしょうか。\(log_{10}2=0.3010\)を用いて計算しましょう。
常用対数を用いて以下のように計算しましょう。
\(log_{10}\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{100}\)
\(=100log_{10}\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(=100(log_{10}1-log_{10}2)\)
\(=100×-log_{10}2\)
\(=100×-0.3010\)
\(=-30.10\)
こうして常用対数を用いて計算すると、答えは-30.10になるとわかりました。つまり、小数第30位で初めて0ではない数字が表れます。
常用対数と不等式の計算
次に、常用対数と不等式を用いて計算できるようになりましょう。前述の通り、常用対数を用いて桁数の計算が可能です。例えば\(k\)ケタの数字について、整数\(N\)との関係は以下のようになります。
- \(k-1≦log_{10}N<k\)
既に説明した内容であるため、これについては問題なく理解できると思います。この性質を利用することにより、桁数に関わる問題を解くのです。例題として、以下の問題を解きましょう。
- \(3^n\)が10ケタの数となる最小の自然数\(n\)を求めましょう。なお、\(log_{10}3=0.4771\)です。
常用対数を利用して計算すると、以下のようになります。
\(log_{10}3^n\)
\(=nlog_{10}3\)
\(=0.4771n\)
10ケタの数となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- \(9≦0.4771n<10\)
そこで、この条件を満たす最小の自然数\(n\)を計算しましょう。
\(9≦0.4771n<10\)
\(\displaystyle\frac{9}{0.4771}≦n<\displaystyle\frac{10}{0.4771}\)
\(18.86…≦n<20.95…\)
こうして、最小の自然数\(n\)は19であるとわかりました。参考までに、式を確認してわかる通り\(n=19\)または\(n=20\)のとき、\(3^n\)は10ケタの数になるとわかります。
常用対数によって最高位の数と一の位の数を得る
次に、最高位の数と一の位の数を計算できるようになりましょう。最高位の数とは、一番左に存在する数字を指します。例えば84625であれば、8が最高位の数です。
それでは、どのように考えて最高位の数を計算すればいいのでしょうか。具体的な数字を利用して考えていきましょう。例えば300は3ケタの数字です。常用対数を利用すると以下のように計算できます。
\(log_{10}300\)
\(log_{10}100×3\)
\(=log_{10}10^2+log_{10}3\)
\(=2+log_{10}3\)
2ケタの数字であるため、常用対数を利用することによって2を得ることができます。それに加えて、\(log_{10}3\)を加えると\(log_{10}300\)になります。同様に計算すると、以下のようになります。
- \(log_{10}100=2\)
- \(log_{10}200=2+log_{10}2\)
- \(log_{10}300=2+log_{10}3\)
- \(log_{10}400=2+log_{10}4\)
- \(log_{10}500=2+log_{10}5\)
- \(log_{10}600=2+log_{10}6\)
- \(log_{10}700=2+log_{10}7\)
- \(log_{10}800=2+log_{10}8\)
- \(log_{10}900=2+log_{10}9\)
このように確認すると、桁数に関わらない部分(\(+log_{10}k\))を確認すれば、最高位の数を判断できるとわかります。例えば常用対数を用いて計算し、答えが\(5+log_{10}3.2\)なのであれば、最高位の数が3である6ケタの数とわかります。
計算方法を知っていないと最高位の数を得ることはできません。いずれにしても、この考え方によって最高位の数を求めましょう。それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。
- \(9^{50}\)について、最高位の数と一の位の数を求めましょう。なお\(log_{10}2=0.3010\)、\(log_{10}3=0.4771\)です。
まず、常用対数を用いて計算しましょう。
\(log_{10}9^{50}\)
\(=50log_{10}9\)
\(=50log_{10}3^2\)
\(=100log_{10}3\)
\(=100×0.4771\)
\(=47.71\)
こうして、\(9^{50}\)の桁数は48とわかります。それでは、最高位の数はいくらになるのでしょうか。先ほどの結果より、以下のように表すことができます。
- \(log_{10}9^{50}=47+0.71\)
それでは常用対数で0.71というのは、\(log_{10}k\)で表すと、どのようになるのでしょうか。ここで、以下のように、\(log_{10}5\)と\(log_{10}6\)を計算してみましょう。
・\(log_{10}5\)の計算
\(log_{10}5\)
\(=log_{10}\displaystyle\frac{10}{2}\)
\(=log_{10}10-log_{10}2\)
\(=1-0.3010\)
\(=0.6990\)
・\(log_{10}6\)の計算
\(log_{10}6\)
\(=log_{10}2×3\)
\(=log_{10}2+log_{10}3\)
\(=0.3010+0.4771\)
\(=0.7781\)
この結果より、以下の関係があるとわかります。
- \(log_{10}5<0.71<log_{10}6\)
つまり、以下のようになります。
- \(log_{10}9^{50}=47+log_{10}5.☐☐\)
\(☐\)にどの数字が入るのかはわかりません。ただ先ほど解説した通り、常用対数を利用することで\(log_{10}5.☐☐\)を加えることになるため、最高位の数は5とわかります。
・一の位の数を求める
なお、一の位の数を計算する方法は簡単です。数を累乗する場合、法則性があります。そこで法則性を見つけることにより、一の位の数を計算しましょう。例えば9の累乗では、一の位に着目すると以下のようになります。
- 9, 81, 729, 6561, 59049
このように、一の位に着目すると9と1が繰り返されます。具体的には、\(9^n\)について、\(n\)が奇数のときは一の位が9であり、\(n\)が偶数のときは一の位が1であるとわかります。そのため\(9^{50}\)では、一の位は1です。
一の位を見つける方法では、常用対数を利用しません。知識として知っているかどうかにはなりますが、規則性に着目して答えを得ましょう。
常用対数を用いて桁数を計算する
桁数を計算するとき、常用対数がひんぱんに利用されます。常用対数を用いることにより、何ケタの数なのか容易に判断できるのです。また、小数の計算でも常用対数は重要です。小数第何位に初めて0ではない数が表れるのかを計算するとき、常用対数が用いられます。
また常用対数を用いて桁数の計算ができるようになった後、常用対数と不等式を用いて答えを得られるようになりましょう。正確な値を計算しなくても、不等式を用いることにより、答えの計算が可能になります。
なお常用対数が関わる応用問題として、最高位の数の計算があります。計算方法を知っていないと問題を解くのは難しいです。そこで、どのような方法によって計算すればいいのか学びましょう。
桁数計算で利用されるため、日常生活でも重要な概念が常用対数です。音階や星の等級など、これらは常用対数が活用されています。また物理や化学の計算でも利用されるため、常用対数を学ぶことでさまざまな分野で応用できます。