等式が成り立つことを証明するとき、方法があります。等式が常に成り立つというのは、恒等式であることを証明するのと意味が同じです。

証明の方法は決まっているため、具体的な証明方法を覚えましょう。なお、証明方法は難しくありません。場合によっては条件付きの証明をすることもありますが、条件を利用して恒等式を計算すれば証明できます。

なお等式の証明では、比例式(分数式)を含む証明問題を解かなければいけないことがあります。この場合、記号を利用して証明しなければいけません。

それでは、具体的にどのように考えて等式の証明をすればいいのでしょうか。等式の証明をする方法を解説していきます。

式を変形し、等式を証明する

恒等式であることを証明するには、主に以下の3つの方法があります。

  • 左辺(または右辺)を変形し、もう一方の式に変換する
  • 左辺と右辺の両方を変形し、同じ式を作る
  • 左辺\(-\)右辺\(=0\)を記す

このうち、「左辺\(-\)右辺\(=0\)を記す」が利用されることはほとんどありません。そのため左辺または右辺を変形し、恒等式であることを証明しましょう。

左辺(または右辺)を変形し、もう一方の式に変換する

等式の証明を学ぶとき、実際に問題を解くと理解しやすいです。そこで、以下の式が恒等式であると証明しましょう。

\(x^3+y^3=(x+y)^3−3xy(x+y)\)

右辺を変形し、左辺を作りましょう。以下のように計算します。

\((x+y)^3−3xy(x+y)\)

\(=x^3+3x^2y+3xy^2+y^3\)\(-3x^2y-3xy^2\)

\(=x^3+y^3=\)左辺

こうして右辺を変形することによって左辺を作ることができました。これにより、等式が成り立つと証明できます。

左辺と右辺を変形し、同じ式を作る

なお左辺と右辺を変形し、同じ式を作る方法であっても等式の証明が可能です。次は以下の式が恒等式であると証明しましょう。

\((1+x)^3=1+x\)\(+x(1+x)\)\(+x(1+x)^2\)

両方の式が複雑なので、左辺と右辺をそれぞれ展開することによって同じ式を作りましょう。

・左辺の計算

\((1+x)^3\)

\(=1+3x+3x^2+x^3\)

・右辺の計算

\(1+x+x(1+x)+x(1+x)^2\)

\(=1+x+x+x^2+x+2x^2+x^3\)

\(=1+3x+3x^2+x^3\)

こうして左辺と右辺が同じ式になると確認でき、等式の証明をすることができました。

条件付き等式の証明

なお等式の証明では、条件が加えられていることがあります。つまり、特定の条件のときに等式が成り立つのです。条件付きの等式の証明では、条件を利用して左辺と右辺が等しいことを証明しましょう。

それでは\(a+b+c=0\)のとき、以下の式が成り立つことを証明しましょう。

  • \(a^3+b^3+c^3-3abc=0\)

条件式を利用し、式に代入することで左辺と右辺が同じであることを証明します。\(a+b+c=0\)であるため、\(a=-b-c\)です。そこで、\(a=-b-c\)を左辺の式に代入しましょう。

\(a^3+b^3+c^3-3abc\)

\(=(-b-c)^3+b^3+c^3-3bc(-b-c)\)

\(=(-b^3-3b^2c-3bc^2-c^3)\)\(+b^3+c^3\)\(+3b^2c+3bc^2\)

\(=0\)

こうして、条件付きの等式の証明をすることができました。

比例式(分数式)と等式の証明

等式の証明では比例式を取り扱うことがあります。比例式を含む等式の証明ではやり方があるため、事前に理解しましょう。具体的には、比例式(分数式)に対して\(=k\)と設定します。

例えば\(\displaystyle\frac{a}{b}=\displaystyle\frac{c}{d}\)のとき、以下の等式をどのように証明すればいいでしょうか。

  • \(\displaystyle\frac{a^2+c^2}{a^2-c^2}=\displaystyle\frac{ab+cd}{ab-cd}\)

比例式では比率が同じです。そこで、\(\displaystyle\frac{a}{b}=\displaystyle\frac{c}{d}=k\)と設定しましょう。つまり\(a=bk\)であり、\(c=dk\)です。そこで、左辺と右辺をそれぞれ計算します。

・左辺の計算

\(\displaystyle\frac{a^2+c^2}{a^2-c^2}\)

\(=\displaystyle\frac{b^2k^2+d^2k^2}{b^2k^2-d^2k^2}\)

\(=\displaystyle\frac{b^2+d^2}{b^2-d^2}\)

・右辺の計算

\(\displaystyle\frac{ab+cd}{ab-cd}\)

\(=\displaystyle\frac{b^2k+d^2k}{b^2k-d^2k}\)

\(=\displaystyle\frac{b^2+d^2}{b^2-d^2}\)

左辺と右辺が同じ式になったため、等式の証明をすることができました。比例式を含む等式の計算では、このように記号を利用しましょう。

等式の証明の応用問題:少なくとも1つが当てはまるケース

ここまで、すべての値が当てはまる式について確認しました。一方、すべての値ではなく、一部の値が当てはまる場合はどのように証明すればいいのでしょうか。つまり、少なくとも一つの値が当てはまるケースを考えるのです。

どのようにすれば、少なくとも1つが当てはまると証明できるのでしょか。例えば\(AB=0\)の場合、AまたはBのうち、どちらかが0です。つまり\(AB=0\)となる式を作ることができれば、AとBのうち少なくともどちらか一方は0であるとわかります。

また\((A+2)(B+2)=0\)の場合、AとBのうち少なくともどちらか一方は答えが-2であるとわかります。このような方針によって証明問題を解きましょう。それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。

  • \(a+b+c=1\)であり、かつ\(ab+bc+ca=abc\)の場合、\(a\)、\(b\)、\(c\)のうち少なくとも一つは値が1であることを証明しましょう。

少なくとも一つは値が1になるためには、以下の式になればいいとわかります。

  • \((a-1)(b-1)(c-1)=0\)

そこで、\(P=(a-1)(b-1)(c-1)\)として計算しましょう。

\(P=(a-1)(b-1)(c-1)\)

\(=(ab-a-b+1)(c-1)\)

\(=abc-ab-ca+a-bc+b\)\(+c-1\)

\(=(ab+bc+ca)-ab-bc-ca\)\(+(a+b+c)\)\(-1\)

\(=0\)

こうして\((a-1)(b-1)(c-1)=0\)であるとわかり、\(a\)、\(b\)、\(c\)のうち少なくとも一つは値が1であると証明できました。

少なくとも一つが当てはまるケースでは、どのような式を作らなければいけないのかあなたが理解しておく必要があります。そこで前提条件から答えを記し、計算することで証明しましょう。

等式の証明方法を学ぶ

等式の証明をするのは難しくありません。左辺と右辺が同じであると記せば、式は恒等式であるとわかります。そこで左辺(または右辺)を変形し、もう一方の式と同じ式を作りましょう。または、両方の式を変形して同じ式を作りましょう。

証明の方法は条件付きの式であっても同様です。条件を利用して、左辺と右辺が等しいと記しましょう。

なお比例式(分数式)では\(k\)などの記号を利用します。また、少なくとも一つの値が当てはまる証明問題では、答えを利用して証明します。これらは証明方法を理解していないと問題を解けないため、どのように証明すればいいのか学びましょう。

等式の証明をするとき、やり方が決まっています。そこで証明方法を学び、恒等式であることを記せるようになりましょう。