物質量(mol)について学んだのであれば、次にモル濃度(mol/L)を計算できるようにならなければいけません。実際に科学実験をするとき、必要な試薬の量を測定するときに利用するのがモル濃度です。

濃度の計算をするとき、物質量を学ぶ前は質量パーセント濃度を利用しての計算が主でした。一方、物質量を学んだあとはモル質量を利用しての計算がメインになります。モル質量を利用して濃度を得るのです。

そこで密度や質量パーセント濃度に加えて、モル質量も用いて計算できるようになりましょう。また質量パーセント濃度をモル質量へ変換できるようになりましょう。さらには、水和物を溶かすときのモル濃度計算ができることも重要です。

化学だけでなく、物理実験や生物実験など試薬を利用する場面ではモル質量の計算を行います。そこで、どのように濃度計算をすればいいのか解説していきます。

溶質(g)と溶液(g)の割合が質量パーセント濃度(%)

まず、溶液に関する基本的な言葉を学びましょう。液体に物質が溶けているとき、以下のように表します。

  • 溶質:溶けている物質
  • 溶媒:溶かしている液体
  • 溶液:溶質と溶液を合わせたもの

例えば食塩水であれば、溶質は塩化ナトリウム(NaCl)、溶媒は水、溶液は食塩水そのものになります。

質量パーセント濃度は溶質(g)と溶液(g)の割合を表します。例えば200gの水酸化ナトリウム水溶液に対して、5gの水酸化ナトリウム(NaOH)が溶けている場合、質量パーセント濃度は2.5%です。

\(\displaystyle\frac{5}{200}×100=2.5\)

質量パーセント濃度の単位はパーセント(%)です。そのため、100をかける必要があります。

モル濃度(mol/L)は溶液(L)の中に存在する溶質の物質量(mol)を表す

一方、モル濃度(mol/L)は溶液(L)の中に存在する溶質の物質量(mol)を表します。そのため、利用するのは物質量(mol)と溶液の体積(L)です。

例えば、以下の問題の答えは何でしょうか。

  • 2Lの水酸化ナトリウム水溶液に対して、120gの水酸化ナトリウム(NaOH)が溶けています。モル濃度はいくらでしょうか。ただし、NaOHの式量を40とします。

まず、溶液に含まれている物質量を計算しましょう。そうすると、3molの水酸化ナトリウムが溶けているとわかります。

\(\displaystyle\frac{120}{40}=3\)

また3molの水酸化ナトリウムが2Lの水に溶けているため、モル濃度は1.5mol/Lです。1Lに溶けている物質量(mol)を計算すればいいため、概念は難しくありません。

単位が異なる場合、単位換算を行う必要がある

なお単位がリットル(L)ではない場合、単位換算をしましょう。例えば、以下の問題の答えは何でしょうか。

  • 200mLの水酸化ナトリウム水溶液に対して、2gの水酸化ナトリウム(NaOH)が溶けています。モル濃度はいくらでしょうか。ただし、NaOHの式量を40とします。

この水溶液には\(\displaystyle\frac{2}{40}=0.05\)molの水酸化ナトリウムが溶けています。また200mLは0.2Lであるため、以下のように計算しましょう。

\(\displaystyle\frac{0.05}{0.2}=0.25\)

こうして、0.25mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液と計算できます。溶液の体積がmLの場合、Lに直しましょう。

密度や質量パーセント濃度を利用して計算する

モル濃度を計算するとき、溶質の重さを得なければいけません。ただ、溶液中に溶けている溶質の重さがわからないケースもあります。この場合、どのようにして溶質の重さを計算すればいいのでしょうか。

化学の問題を解くとき、溶質の重さが提示されていないのであれば、代わりに以下の値が提示されていることがあります。

  • 密度(g/cm3
  • 質量パーセント濃度(%)

これらを利用して、溶けている化合物の重さを計算できるようになりましょう。

・密度(g/cm3)を利用して質量(g)を得る

1cm3当たり、どれだけの重さがあるのかを表すのが密度です。氷や発泡スチロールが水に浮くのは、水よりも密度が薄いからです。また、密度の単位はg/cm3であるため、体積(cm3)をかければ質量(g)を得られることがわかります。

密度が提示されている場合、体積をかけましょう。これにより、質量を得ることができます。

・質量パーセント濃度(%)に溶液の重さ(g)をかけて質量(g)を得る

一方、質量パーセント濃度を利用するとき、どのように質量(g)を計算すればいいのでしょうか。前述の通り、溶質の重さ(g)と溶液の重さ(g)の割合を表すのが質量パーセント濃度です。そのため、溶液の重さ(g)をかけることによって溶質の重さ(g)を出せることがわかります。

質量パーセント濃度に対して溶液の重さ(g)をかけると、当然ながら溶質の重さ(g)を計算できます。注意点として、質量パーセント濃度では単位がパーセントであるため、100で割る必要があります。

・密度や質量パーセント濃度を利用して必要な量を計算する例題

それでは、密度と質量パーセント濃度を利用して必要な量を計算してみましょう。以下の問題の答えは何でしょうか。

  • 2%水酸化ナトリウム水溶液(密度1.0g/cm3)を4L作るには、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液がいくら必要でしょうか。ただし、NaOHの式量を40とします。

2%水酸化ナトリウム水溶液を作るとき、何gの水酸化ナトリウム(NaOH)が必要なのか知る必要があります。つまり、2%水酸化ナトリウム水溶液に含まれる水酸化ナトリウムの量を計算しましょう。

密度が1.0g/cm3の水酸化ナトリウム水溶液が4L(4000cm3)ある場合、水酸化ナトリウム水溶液の重さは4000gです。2%の水酸化ナトリウム水溶液が4000gあるため、80gの水酸化ナトリウムが水溶液の中に含まれているとわかります。

\(4000×0.02=80\)

つまり、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を利用して、80g分の水酸化ナトリウム(NaOH)になるように調節すればいいとわかります。そこで、80gを物質量に直しましょう。NaOHの式量は40なので、80gは2molに当たります。

\(\displaystyle\frac{80}{40}=2\)

そこで10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液について、何リットルを利用すれば2molを得られるのか計算しましょう。

1Lで10molを得られるとき、\(x\)Lでは2molとなります。そこで比例式を利用して計算すると、10mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液について0.2Lを利用すればいいとわかります。

\(1:10=x:2\)

\(10x=2\)

\(x=0.2\)

このように計算することで答えを得ることができました。特定の濃度をもつ溶液を薄めるとき、溶媒や溶液の量は変化するものの、溶質の量は同じです。そこで溶質に着目して計算式を作りましょう。

質量パーセント濃度からモル濃度を求める

次に、質量パーセント濃度からモル濃度を求めてみましょう。質量パーセント濃度からモル濃度へ変換する計算問題では、密度は提示されるものの、体積が与えられていません。この場合、1Lの溶液を想定して計算します。

モル濃度の単位はmol/Lです。質量パーセント濃度からモル濃度への変換では、単位を変えることができれば十分です。そのため、mol/Lへ変換するときに最も都合の良い1Lの溶液を想定するのです。

注意点として、1L(=1000cm3)の質量は1000gとは限りません。水に化学物質が溶けている場合、密度が高いことはよくあります。そこで、1Lが何グラムに相当するのか計算して問題を解きましょう。例えば、以下の問題の答えは何でしょうか。

  • 4%水酸化ナトリウム水溶液(密度1.4g/cm3)の質量モル濃度を求めましょう。ただし、NaOHの式量を40とします。

1L(=1000cm3)の水酸化ナトリウム水溶液について、密度が1.4g/cm3の場合は何グラムの水溶液でしょうか。1cm3で1.4gなので、1000cm3では1400gになります。

\(1.4×1000=1400\)

水の場合、1Lは1000gです。ただ化合物が溶けている場合、多くのケースで1Lは1000gではありません。そのため、密度を考慮して溶液の重さを計算しましょう。

次に、1400gに何グラフの水酸化ナトリウム(NaOH)が存在するのか計算しましょう。4%水酸化ナトリウム水溶液なので、56gのNaOHが溶けているとわかります。

\(1400×0.04=56\)

それでは、56gのNaOHは何molでしょうか。計算すると1.4molです。

\(\displaystyle\frac{56}{40}=1.4\)

また前述の通り、1Lの水溶液を想定して計算しています。1Lに1.4molの水酸化ナトリウムが溶けているため、4%水酸化ナトリウム水溶液(密度1.4g/cm3)の質量モル濃度は1.4mol/Lです。

なお、モル濃度から質量パーセント濃度への変換を問う問題もひんぱんに出されます。この場合、先ほどの計算とは逆の順番によって答えを出しましょう。

水和物を溶かした場合の濃度の計算

ここまでの内容を理解したら、次に水和物を溶かす場合の濃度を計算できるようになりましょう。まず、水和物とは何でしょうか。

化合物によっては、水分子(H2O)が結合して存在していることがあります。つまり化合物単体で存在するのではなく、化合物に水が結合することでその分だけ分子量が多くなっているのです。これを水和物といいます。

水和物には例えば以下の種類があります。

  • 硫酸銅(Ⅱ)五水和物:CuSO4・5H2O
  • 炭酸ナトリウム十水和物:Na2CO3・10H2O
  • シュウ酸二水和物:(COOH)2・2H2O

乾燥した硫酸銅(CuSO4)は白い粉末です。ただ硫酸銅には吸湿性があり、空気中の水分を取り入れて水和物(CuSO4・5H2O)になります。こうして、硫酸銅(Ⅱ)五水和物は以下のように青色になります。

水和物というのは、「水分子と結合した分子」と理解しましょう。そのため水和物のモル濃度を計算する場合、水(H2O)の分子量を考慮して計算する必要があります。例えば、以下の問題の答えは何でしょうか。

  • 100gの硫酸銅(Ⅱ)五水和物(CuSO4・5H2O)を500mLの水に溶かしました。モル質量と質量パーセント濃度はいくらでしょうか。ただしH=1、O=16、S=32、Cu=64とします。また、水溶液の密度を1.1g/cm3とします。

まず、CuSO4・5H2Oの式量を計算すると250になります。

\(64+32+16×4+5×18=250\)

100gのCuSO4・5H2Oを利用するため、物質量は0.4molです。

\(\displaystyle\frac{100}{250}=0.4\)

なお、0.4molの化合物を500mL(0.5L)の水に溶かすことになります。そのため、モル濃度は0.8mol/Lになります。

\(0.4:0.5=x:1\)

\(0.5x=0.4\)

\(x=0.8\)

次に質量パーセント濃度を計算しましょう。先に説明した通り、1Lの水溶液がある場面を想定します。

1L(=1000cm3)の水溶液の重さはいくらでしょうか。水溶液の密度は1.1g/cm3なので、1Lの重さは1100gとわかります。

\(1.1×1000=1100\)

それでは、水溶液に溶けている硫酸銅(Ⅱ)五水和物の質量(g)はいくらでしょうか。0.8mol/Lの水溶液であるため、1Lには0.8molの化合物が溶けています。CuSO4・5H2Oの式量は250です。そのため、0.8molは200gに該当します。

\(0.8×250=200\)

つまり溶液1100gに対して、200gの硫酸銅(Ⅱ)五水和物が溶けています。そのため、質量パーセント濃度は18.2%です。

\(\displaystyle\frac{200}{1100}×100≒18.2\)

こうして、水和物のモル質量と質量パーセント濃度を計算することができました。

モル濃度と質量パーセント濃度の計算を行う

科学実験をするとき、非常に多くの場面で試薬を使います。必要な試薬の量を計算するとき、必須になるのがモル濃度の計算です。場合によっては質量パーセント濃度の計算をすることもあります。

そこでモル濃度と質量パーセント濃度の計算を行えるようになりましょう。また密度を利用することによって、質量パーセント濃度をモル濃度に直すことがあります。反対に、モル濃度を質量パーセント濃度に直すこともあります。

それに加えて、水和物の計算を行えるようになりましょう。分子量や式量に対して、水分子の分子量を加えることによって、水和物の分子量(または式量)を出すことができます。その後、モル質量や質量パーセント濃度を計算しましょう。

濃度の計算は一見すると複雑です。ただ計算方法は決まっているので、やり方を理解して濃度の計算を行えるようになりましょう。