精密機器を含め、テクノロジー分野でひんぱんに利用される部品が半導体です。また、導体と不導体(絶縁体)の中間の役割を示す部品が半導体です。

半導体には、n型半導体とp型半導体があります。同じ半導体ではあるものの、性質が異なります。化学の知識が必要になりますが、物理で半導体の性質を理解するとき、2種類の半導体がどう異なるのか学ばなければいけません。

また半導体を組み合わせることでダイオードとなります。半導体ダイオードを使用すれば、交流を直流に変換できます。

それでは、半導体にはどのような働きがあるのでしょうか。また、半導体ダイオードはどのようなメカニズムによって交流を直流に変換するのでしょうか。半導体の仕組みや種類、電気を通すときの原理を解説していきます。

半導体とは何か?真性半導体と不純物半導体

まず、「半導体とは何か」を学びましょう。通常、物体は導体または不導体(絶縁体)です。金属は導体であり、電気を通します。それに対して、木やプラスチックなど金属以外の物体は一般的に不導体です。これらの不導体には自由電子がなく、電子は勝手に動くことができません。

ただ物体の中には、導体と不導体の中間の性質をもつケースがあります。つまり金属のように電気を通すわけではないものの、不導体のように電気をまったく通さないわけでもないのです。こうした物体が半導体です。

半導体としてはSi(シリコン)やGe(ゲルマニウム)が知られています。これらの元素の結晶は単体で半導体としての性質を示します。不純物が含まれていないシリコンやゲルマニウムの半導体を真性半導体といいます。

ただ真性半導体が実用で利用されることはなく、実際にはシリコンやゲルマニウムに対して不純物を加えて利用します。このような半導体を不純物半導体といいます。半導体では、不純物を加えることによって実用性が向上するのです。

不純物半導体には、主に以下の2種類があります。

  • n型半導体
  • p型半導体

n型半導体とp型半導体では、電子を運ぶ方法が異なります。半導体で電気を運搬する役割を担う物体をキャリアと呼び、n型半導体とp型半導体ではキャリアが違うと理解しましょう。

n型半導体:余った電子がキャリアになる

それでは、不純物半導体が電子を運搬するときの仕組みはどのようになっているのでしょうか。n型半導体から確認していきましょう。

シリコンやゲルマニウムは14族元素であり、価電子が4つあります。そのため炭素原子(14族元素)と同様に、4カ所でほかの原子と結合できます。以下がシリコンの結晶であり、それぞれの原子が共有結合することによって結晶となります。

ここにP(リン)などの15族元素を混ぜると、どうなるでしょうか。リンは5つの価電子があるため、不純物として存在すると、電子が一つ余ります。

電子が余るため、金属に存在する自由電子と同じように、電子は半導体の中を動き回ることができます。不純物として加えるリンは微量であるため、導体のように自由電子は多くありません。ただ半導体では自由電子に相当する電子があるため、電気を通すのです。

n型半導体では、余った電子がキャリアとなります。電子はマイナスの電荷を有しているため、電圧をかけることで電場を発生させると、電子は電場とは逆向きに進みます。つまり、電子は正電荷に向かって進みます。

n型半導体は電子が多く存在するため、電子の動きにはこのような特徴があります。

p型半導体:ホール(正孔)は正電荷の性質をもつ

一方でp型半導体では、不純物としてB(ベリリウム)やAl(アルミニウム)などの13族元素を利用します。これら13族元素では、価電子が3つです。そのため14族元素と結合をする場合、結合するために必要な電子が一つ足りません。

つまり、p型半導体では電子が不足することによって孔(あな)ができます。この孔をホール(または正孔)といいます。

p型半導体では、ホールがキャリアとなります。電子が存在しない場所がホールであるため、ホールは正電荷と同じ役割を果たします。

電圧をかけることで電場が発生すると、以下のように、電子が移動することでホールを埋め、新たなホールが発生します。

これを繰り返すことで電子が移動します。ただ全体では、電子ではなく、ホール(正電荷)が移動しているとみなすことができます。「電子が動いている」と考えてもいいですが、動く電子は常に異なります。そのため、ホール(正電荷)が動いていると考えるほうがシンプルです。

n型半導体とp型半導体は性質が異なり、p型半導体には正電荷としての役割をもつホールが存在します。また、ホールがキャリアとして機能すると理解しましょう。

名前の由来を理解し、半導体の性質を理解する

なおn型半導体とp型半導体では、どのように電荷の性質を区別すればいいのでしょうか。区別の方法は簡単であり、名前の由来を確認しましょう。nとpはそれぞれ以下の頭文字となります。

  • n型半導体:negative
  • p型半導体:positive

電子は負電荷を有するため、キャリアとして機能する電荷は負(negative)です。そのため、n型半導体と呼ばれています。またホールは正電荷を有するため、電荷は正(positive)です。キャリアが正電荷であるため、ホール(正孔)をもつ半導体はp型半導体と呼ばれています。

このように不純物半導体の名前の由来を確認すれば、負電荷と正電荷のどちらの性質を有しているのか区別できます。

半導体ダイオードによる整流作用:交流を直流に変える

不純物半導体を学べば、半導体ダイオードを理解できます。ダイオードで最も有名な製品はLED(発光ダイオード)です。ただ、ダイオードで重要な性質は光ることではなくほかにあります。具体的には、整流作用がダイオードで最も重要な性質です。

ダイオードは電流を一方方向にしか流しません。これが整流作用です。以下のように、一方の方向では電流を通すものの、反対方向では電流を通しません。

私たちが利用する電気は交流です。交流の場合、常に電圧が変化するので電流の向きが変化します。そこでダイオードを利用すれば、整流作用により、電流の方向を片方のみに変えることができます。つまり、交流を直流に変換できます。

半導体ダイオードを利用するとき、電流が流れる方向を順方向といいます。それに対して、半導体ダイオードを利用するとき、電流が流れない方向を逆方向といいます。

それでは、なぜ半導体ダイオードによって整流作用を得られるのでしょうか。先ほどのn型半導体とp型半導体の性質を学べば、整流作用を得られる原理がわかります。

順方向でダイオードに起こる現象

それでは、半導体ダイオードではどのような現象が起こっているのでしょうか。ダイオードはn型半導体とp型半導体を接合した部品です。なぜ、n型半導体とp型半導体をくっつけると整流作用を得られるのでしょうか。まず、順方向でダイオードに起こる現象を確認しましょう。

以下のように電圧をかけ、n型半導体とp型半導体が並んでいるとします。

n型半導体では電子が余っているため、電子は正電荷に引き寄せられます。またp型半導体では、電子はp型半導体の右端でホールと結合し、p型半導体の左端へと運ばれます。そのため、全体では図のように電子が動くことで電流が生まれます。

なお、p型半導体に存在するホールは正電荷と同じ役割であるため、電圧をかけることで負電荷の方向に進みます。また上図のp型半導体では、電子がp型半導体の左端に到着することによって、電子は導線を伝って流れていきます。つまり、新たなホール(正孔)が生まれます。

つまり図の左端でホールが生まれ、ホールは負電荷に引き寄せられるように右へ進み、n型半導体との接合部分(p型半導体の右端)で電子を受け取ることでホールが消えます。これを繰り返すことにより、電流が流れるのです。また、このような電圧のかけ方が順方向です。

逆方向ではダイオードに電流が流れない

それに対して、順方向とは逆向きに電圧をかける方法が逆方向です。逆方向の場合、以下の図を作ることができます。

電圧の向きが逆になるため、先ほどと比べて電場の向きも逆になります。この場合、n型半導体では電子が図の右側に移動します。またp型半導体では、ホールは図の左側に移動します。

ホールは電子を格納できるため、p型半導体の左端にホールが移動することにより、電子と結合して消滅します。ただ順方向とは異なり、逆方向では電子がn型半導体の右向きに動いているため、n型半導体とp型半導体の接合部分に電子はほとんどありません。つまり、新たなホールは供給されません。

こうしてn型半導体では電子が右側に移動して右端が負に帯電し、p型半導体ではホール(正電荷)が左に移動することによって左端が正に帯電します。そのため2つの半導体の接合部分では、n型半導体では電子が少なくなった分だけ正に帯電し、p型半導体ではホールが少なくなった分だけ負に帯電します。

また時間が経過すると、n型半導体とp型半導体の接合部分の電圧は電源由来の電圧と等しくなります。こうして、電流は流れなくなります。これが、逆方向で電流が止まる理由であり、整流作用を得られる原理です。

半導体とダイオードの原理を知る

化学の知識は必要になるものの、電気や原子の分野で重要な内容の一つが半導体です。半導体の特徴を学び、不純物半導体でなぜ電流が流れるのか理解しましょう。

不純物半導体にはn型半導体とp型半導体があります。n型半導体は15族元素を微量に加えることにより、電子が過剰に存在する状態を作ることができます。またp型半導体では、13族元素を利用することでホール(正孔)を作り、これがキャリアになります。

なおn型半導体とp型半導体をくっつけることにより、半導体ダイオードとなります。順方向ではダイオードに電流が通り、逆方向ではダイオードに電流が通りません。これにより、整流作用を得ることができます。

最先端技術の開発で利用される部品が半導体とダイオードです。そこで、これらの部品がどのような特徴をもつのかを学び、原理を理解しましょう。