連立漸化式では、異なる漸化式を利用することにより、一般項を得ることができます。連立漸化式では解き方が決まっているため、答えを得る方法を覚えなければいけません。
なお、連立漸化式には3つの解き方があります。どの方法を利用しても問題ありません。また、異なる方法を利用して同じ解を得ることにより、答えの見直しとして利用してもいいです。
それでは、連立漸化式はどのような式なのでしょうか。また、どのように一般項を計算すればいいのでしょうか。連立漸化式の問題を解く方法を解説していきます。
異なる漸化式を利用する連立漸化式:対称型の計算
2つの式を利用して答えを得る方法に連立方程式があります。連立漸化式も同様であり、2つの漸化式を利用することによって一般項を得ることができます。
それでは、どのように考えて連立漸化式を解けばいいのでしょうか。最も単純な連立漸化式としては、対称型の連立方程式があります。以下のように、式が対称になっている場合が該当します。
- \(a_{n+1}=\color{red}{p}a_n+\color{red}{q}b_n\)
- \(b_{n+1}=\color{red}{q}a_n+\color{red}{p}b_n\)
この場合、足し算と引き算の両方をすることで2つの数列を作り、一般項を計算しましょう。例題として、以下の問題を解きましょう。
- \(a_1=4\)、\(b_1=1\)、\(a_{n+1}=3a_n+b_n\)、\(b_{n+1}=a_n+3b_n\)によって定められる数列\(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の一般項を求めましょう。
以下の2つの漸化式を利用して足し算と引き算をしましょう。
- \(a_{n+1}=3a_n+b_n\) – ①
- \(b_{n+1}=a_n+3b_n\) – ②
その後、それぞれの数列について一般項を計算します。
・\(①+②\)より
- \(a_{n+1}+b_{n+1}=4(a_n+b_n)\)
数列\(\{a_n+b_n\}\)は初項\(a_1+b_1=5\)、公比4の等比数列なので、一般項は以下になります。
- \(a_n+b_n=5·4^{n-1}\) – ③
・\(①-②\)より
- \(a_{n+1}-b_{n+1}=2(a_n-b_n)\)
数列\(\{a_n-b_n\}\)は初項\(a_1-b_1=3\)、公比2の等比数列なので、一般項は以下になります。
- \(a_n-b_n=3·2^{n-1}\) – ④
次に、③と④を利用すると数列\(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の一般項がわかります。
・\(③+④\)より
\(2a_n=5·4^{n-1}+3·2^{n-1}\)
\(a_n=\displaystyle\frac{5}{2}·4^{n-1}+\displaystyle\frac{3}{2}·2^{n-1}\)
・\(③-④\)より
\(2b_n=5·4^{n-1}-3·2^{n-1}\)
\(b_n=\displaystyle\frac{5}{2}·4^{n-1}-\displaystyle\frac{3}{2}·2^{n-1}\)
こうして、\(a_n\)と\(b_n\)を得ることができました。2つの漸化式が対称になっている場合、計算は難しくありません。
連立漸化式で重要な2通りの解き方
ただ2つの式が対称ではないケースがひんぱんにあります。この場合、どのように連立漸化式の答えを得ればいいのでしょうか。答えを得るためには、以下の2通りの方法があります。
- 2つの漸化式を利用することにより、等比数列型へ変形する
- 隣接3項間の漸化式へ変形する
どちらの方法を利用しても問題ありませんが、両方を利用できるようになりましょう。
漸化式を等比数列型へ変形する
等比数列型へ変形することにより、数列の一般項を得ることができます。そこで、2つの漸化式を以下の形へ変形します。
- \(a_{n+1}+αb_{n+1}=β(a_n+αb_n)\)
この形であれば、先ほど計算した等比数列型の漸化式と同じとわかります。なお、これを公式として覚える必要はありません。等比数列型の漸化式を作ればいいと理解すれば、必ずこの式の形にしなければいけないとわかります。
それでは、以下の練習問題を解くことにより、計算方法を学びましょう。
- \(a_1=1\)、\(b_1=2\)、\(a_{n+1}=2a_n+b_n\)、\(b_{n+1}=4a_n-b_n\)によって定められる数列\(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の一般項を求めましょう。
まず、\(a_{n+1}+αb_{n+1}=β(a_n+αb_n)\)の左辺に着目しましょう。左辺に\(a_{n+1}=2a_n+b_n\)と\(b_{n+1}=4a_n-b_n\)を代入すると以下のようになります。
\(a_{n+1}+αb_{n+1}\)
\(=2a_n+b_n+α(4a_n-b_n)\)
\(=(2+4α)a_n+(1-α)b_n\)
こうして、式として\(a_{n+1}+αb_{n+1}=(2+4α)a_n+(1-α)b_n\)を得ることができました。
また\(a_{n+1}+αb_{n+1}=β(a_n+αb_n)\)であるため、\(a_{n+1}+αb_{n+1}=βa_n+αβb_n\)です。そのため、以下の条件が成り立ちます。
- \((2+4α)a_n+(1-α)b_n=βa_n+αβb_n\)
この条件を満たすため、以下の式を作ることができます。
- \(2+4α=β\)
- \(1-α=αβ\)
そこで、αとβの値を計算しましょう。\(2+4α=β\)を\(1-α=αβ\)へ代入すると以下のようになります。
\(1-α=αβ\)
\(1-α=α(2+4α)\)
\(4α^2+3α-1=0\)
\((4α-1)(α+1)=0\)
こうして、\(α=-1,\displaystyle\frac{1}{4}\)とわかりました。また、αを利用してβを計算すると以下のようになります。
\((α,β)=(-1,-2)\)
\((α,β)=\left(\displaystyle\frac{1}{4},3\right)\)
αとβがわかったため、\(a_{n+1}+αb_{n+1}=β(a_n+αb_n)\)へ代入すると、以下の2つの式を作ることができます。
- \(a_{n+1}-b_{n+1}=-2(a_n-b_n)\)
- \(a_{n+1}+\displaystyle\frac{1}{4}b_{n+1}=3\left(a_n+\displaystyle\frac{1}{4}b_n\right)\)
\(a_{n+1}-b_{n+1}=-2(a_n-b_n)\)について、数列\(\{a_n-b_n\}\)は初項\(a_1-b_1=-1\)、公比\(-2\)の等比数列です。そのため、以下の式を作れます。
- \(a_n-b_n=-(-2)^{n-1}\) – ①
また\(a_{n+1}+\displaystyle\frac{1}{4}b_{n+1}=3\left(a_n+\displaystyle\frac{1}{4}b_n\right)\)について、数列\(\left\{a_n+\displaystyle\frac{1}{4}b_n\right\}\)は初項\(a_1+\displaystyle\frac{1}{4}b_1=\displaystyle\frac{3}{2}\)、公比3の等比数列です。そのため、以下の式を作れます。
- \(a_n+\displaystyle\frac{1}{4}b_n=\displaystyle\frac{3}{2}·3^{n-1}\)\(=\displaystyle\frac{3^n}{2}\) – ②
そこで、2つの式を利用することで\(a_n\)と\(b_n\)を計算しましょう。
・\(①+②×4\)より
\(5a_n=-(-2)^{n-1}+2·3^n\)
\(a_n=\displaystyle\frac{-(-2)^{n-1}+2·3^n}{5}\)
・\(①-②\)より
\(-\displaystyle\frac{5}{4}b_n=-(-2)^{n-1}-\displaystyle\frac{3^n}{2}\)
\(b_n=\displaystyle\frac{4·(-2)^{n-1}+2·3^n}{5}\)
こうして、数列\(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の一般項を得ることができました。αとβの係数を得た後、等比数列型の漸化式を作ることによって計算できます。
隣接3項間の漸化式へ変形する
隣接3項間の漸化式を作ることができれば、一般項を得ることができます。そこで、連立漸化式に存在する\(a_n\)または\(b_n\)を消去することで隣接3項間の漸化式へ変形しましょう。
例題として、先ほどの問題を再び記します。
- \(a_1=1\)、\(b_1=2\)、\(a_{n+1}=2a_n+b_n\)、\(b_{n+1}=4a_n-b_n\)によって定められる数列\(\{a_n\}\)と\(\{b_n\}\)の一般項を求めましょう。
以下の2つの式を利用することで\(a_n\)または\(b_n\)を消去しましょう。
- \(a_{n+1}=2a_n+b_n\) – ①
- \(b_{n+1}=4a_n-b_n\) – ②
まず、①を利用して以下のように変形します。
\(a_{n+1}=2a_n+b_n\)
\(b_n=a_{n+1}-2a_n\)
また\(b_n=a_{n+1}-2a_n\)について、\(n\)を\(n+1\)を変えましょう。そうすると、以下のようになります。
- \(b_{n+1}=a_{n+2}-2a_{n+1}\)
そこで、\(b_n=a_{n+1}-2a_n\)と\(b_{n+1}=a_{n+2}-2a_{n+1}\)を②へ代入しましょう。
\(b_{n+1}=4a_n-b_n\)
\(a_{n+2}-2a_{n+1}=4a_n\)\(-(a_{n+1}-2a_n)\)
\(a_{n+2}-a_{n+1}-6a_n=0\)
こうして、隣接3項間の漸化式を作ることができました。あとは、隣接3項間の漸化式の解き方を知っていれば一般項を得ることができます。特性方程式\(x^2-x-6=0\)を解くと以下のようになります。
\(x^2-x-6=0\)
\((x+2)(x-3)=0\)
\(x=-2,3\)
\(x=-2,3\)であるため、以下の2つの式を作れます。
- \(a_{n+2}-3a_{n+1}=-2(a_{n+1}-3a_n)\)
- \(a_{n+2}+2a_{n+1}=3(a_{n+1}+2a_n)\)
\(a_{n+2}-3a_{n+1}=-2(a_{n+1}-3a_n)\)に着目すると、数列\(\{a_{n+1}-3a_n\}\)は初項\(a_2-3a_1=1\)、公比\(-2\)の等比数列です。そのため、以下の式を作れます。
- \(a_{n+1}-3a_n=(-2)^{n-1}\) – ③
また\(a_{n+2}+2a_{n+1}=3(a_{n+1}+2a_n)\)に着目すると、数列\(\{a_{n+1}+2a_n\}\)は初項\(a_2+2a_1=6\)、公比3の等比数列です。そのため、以下の式を作れます。
- \(a_{n+1}+2a_n=6·3^{n-1}\)\(=2·3^n\) – ④
\(④-③\)より、以下の式を作れます。
\(5a_n=-(-2)^{n-1}+2·3^n\)
\(a_n=\displaystyle\frac{-(-2)^{n-1}+2·3^n}{5}\)
こうして、先ほどと同じ答えを得ることができました。また先ほど計算した通り、\(b_n=a_{n+1}-2a_n\)です。そこで、この式に\(a_n\)を代入しましょう。
\(b_n=a_{n+1}-2a_n\)
\(b_n=\displaystyle\frac{-(-2)^n+2·3^{n+1}}{5}\)\(-2·\displaystyle\frac{-(-2)^{n-1}+2·3^n}{5}\)
\(b_n=\displaystyle\frac{2·(-2)^{n-1}+6·3^n}{5}\)\(+·\displaystyle\frac{2(-2)^{n-1}-4·3^n}{5}\)
\(b_n=\displaystyle\frac{4·(-2)^{n-1}+2·3^n}{5}\)
こうして、\(b_n\)についても先ほどと同じ答えを得ることができました。どちらの方法を採用しても問題なく、解きやすい方法を利用して計算しましょう。
連立漸化式を解き、一般項を得る
特殊な漸化式の一つに連立漸化式があります。連立漸化式の答えを得るとき、解き方を知らなければ、一般項を得るのは難しいです。そこで、どのように問題を解けばいいのか学びましょう。
シンプルな連立漸化式としては、対称型の連立漸化式があります。この場合、足し算と引き算の両方をすることによって式を作りましょう。
ただ多くの場合、対称型の連立漸化式ではありません。この場合、漸化式を等比数列型へ変形することで2つの式を作りましょう。または、連立漸化式を利用して隣接3項間の漸化式へ変形することで一般項を得ることもできます。
漸化式の問題を解くコツは「解き方を覚えているかどうか」だけです。ヒントなしに答えを得るのは難しいため、答えを得るための過程を学びましょう。