漸化式では、特性方程式を利用して問題を解かなければいけないケースがあります。このとき、私たちが学ぶ特殊な漸化式として、隣接2項間の漸化式があります。
一方、隣接3項間の漸化式に関する問題も存在します。連続する3つの項を利用することにより、漸化式が形成されるのです。隣接3項間の漸化式の問題を解くとき、方法が決まっています。つまり、問題を解けるかどうかというのは、解き方を知っているかどうかが重要になります。
隣接3項間の漸化式は3パターンに分けることができます。そこで、それぞれのパターンを覚えるようにしましょう。
それでは、隣接3項間の漸化式についてはどのように考えて計算すればいいのでしょうか。隣接2項間の漸化式に関する知識も必要になるため、漸化式で必要な知識をすべて利用して問題を解けるようになりましょう。
もくじ
隣接2項間の漸化式と隣接3項間の漸化式
両隣に存在する項を利用して表すのが隣接2項間の漸化式です。例えば、以下は隣接2項間の漸化式です。
- a_{n+1}=3a_n+4
このように、a_nとa_{n+1}を利用することによって漸化式を表すことができます。一方で隣接3項間の漸化式は以下のような式が該当します。
- a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0
このようにa_n、a_{n+1}、a_{n+2}と3つの連続する項を利用することにより、式が表されています。
隣接3項間で利用される特性方程式
漸化式を変形し、一般項を得られる形にするために特性方程式が利用されます。隣接3項間の漸化式についても、特性方程式を利用して式を変形しましょう。
このとき隣接3項間の漸化式では、a_n=1、a_{n+1}=x、a_{n+2}=x^2とみなします。このように考えると、隣接2項間の漸化式と同様に、漸化式を最適な形へ変形することができるからです。例えばa_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0であれば、特性方程式は以下のようになります。
- x^2-3x+2=0
因数分解すると(x-1)(x-2)=0であるため、x=1,2です。つまり、隣接3項間の漸化式ではx=1のとき、x=2のときの2パターンがあります。
なお隣接3項間の漸化式について、二次方程式px^2+qx+r=0の解をα、βとすると、以下のように変形することができます。
- a_{n+2}-αa_{n+1}=β(a_{n+1}-αa_n)
- a_{n+2}-βa_{n+1}=α(a_{n+1}-βa_n)
この関係は覚えてしまいましょう。参考までに、解と係数の関係を利用することにより、この式へ変形できることを証明できます。ただ毎回、解と係数の関係を利用して公式を得るのは大変であるため、特性方程式を利用する式の変形法を覚えるというわけです。
なお先ほど解説した式a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0であれば、特性方程式を利用することにより、x=1,2とわかりました。そのため、以下の2つの式を作ることができます。
- a_{n+2}-a_{n+1}=2(a_{n+1}-a_n)
- a_{n+2}-2a_{n+1}=a_{n+1}-2a_n
特性方程式の利用法を覚えていない場合、隣接3項間の漸化式を解くことはできません。そのため、この公式を覚えるのは必須です。
隣接3項間の漸化式を解く方針
漸化式は解き方が決まっており、隣接3項間の漸化式を解く方法も決まっています。前述の通り、隣接3項間の漸化式についても特性方程式を利用して一般項を計算します。このとき、特性方程式の解によって問題の解き方の方針が異なります。
具体的には、以下のようにパターン分けをしましょう。
- 特性方程式の解に1を含む場合
- 特性方程式の解に1を含まない場合
- 特性方程式の解が重解の場合
すべての解き方を覚えれば、隣接3項間の漸化式を解けるようになります。それでは、それぞれの解き方を学びましょう。
特性方程式の解に1を含む場合、階差数列を用いる
まず、特性方程式の解に1を含むケースを確認していきます。この場合、階差数列を利用できます。それでは、以下の問題を解いてみましょう。
- a_1=2、a_2=7、a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0によって定められる数列\{a_n\}の一般項を求めましょう。
先ほど解説した通り、a_{n+2}-3a_{n+1}+2a_n=0について、特性方程式はx^2-3x+2=0です。また、x^2-3x+2=0の解はx=1,2であるため、以下の2つの方程式を作れます。
- a_{n+2}-a_{n+1}=2(a_{n+1}-a_n)
- a_{n+2}-2a_{n+1}=a_{n+1}-2a_n
このうちx=1のとき、つまり以下の漸化式に着目しましょう。
- a_{n+2}-a_{n+1}=2(a_{n+1}-a_n)
この漸化式では、階差数列になっています。階差数列\{a_{n+1}-a_n\}は初項a_2-a_1=5、公比2の等比数列です。そのため、階差数列の一般項は5·2^{n-1}です。また、階差数列の公式を利用することによって以下のように一般項a_nを計算できます。
a_n=2+\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}{5·2^{k-1}}
a_n=2+\displaystyle\frac{5(2^{n-1}-1)}{2-1}
a_n=5·2^{n-1}-3
なおn=1のとき、a_1=2です。そのため、a_n=5·2^{n-1}-3となります。
こうして、階差数列を用いることで一般項を得ることができました。特性方程式の解に1が含まれる場合、階差数列を作ることができるため、階差数列の公式を用いて計算しましょう。
特性方程式の解に1を含まない場合の解き方
次に、特性方程式の解に1を含まないケースの解き方を確認していきましょう。この場合は階差数列を用いることができません。その代わり、2つの式を利用することによって等比数列を作ることができます。
以下の練習問題を解いてみましょう。
- a_1=0、a_2=1、a_{n+2}=a_{n+1}+6a_nによって定められる数列\{a_n\}の一般項を求めましょう。
特性方程式を利用して式を変形するという方針は同じです。そこで、以下のように特性方程式の解を計算しましょう。
x^2-x-6=0
(x-3)(x+2)
x=-2,3
そのため、以下の漸化式へ変形できます。
- a_{n+2}+2a_{n+1}=3(a_{n+1}+2a_n)
- a_{n+2}-3a_{n+1}=-2(a_{n+1}-3a_n)
a_{n+2}+2a_{n+1}=3(a_{n+1}+2a_n)を確認すると、数列\{a_{n+1}+2a_n\}は初項a_2+2a_1=1、公比3の等比数列であるため、以下のように表すことができます。
- a_{n+1}+2a_n=3^{n-1} – ①
またa_{n+2}-3a_{n+1}=-2(a_{n+1}-3a_n)を確認すると、数列\{a_{n+1}-3a_n\}は初項a_2-3a_1=1、公比-2の等比数列であるため、以下のように表すことができます。
- a_{n+1}-3a_n=(-2)^{n-1} – ②
①-②をすると、以下のように計算できます。
5a_n=3^{n-1}-(-2)^{n-1}
a_n=\displaystyle\frac{3^{n-1}-(-2)^{n-1}}{5}
こうして、一般項を得ることができました。特性方程式を利用して2つの式を作った後、それぞれの漸化式を一般項で表しましょう。その後、引き算をすることによって数列の一般項を計算できます。
特性方程式の解が重解の場合の解き方
特性方程式を利用することにより、重解を得られることもあります。この場合、二次方程式px^2+qx+r=0の解をαとすると、以下のように変形することができます。
- a_{n+2}-αa_{n+1}=α(a_{n+1}-αa_n)
重解であるため、α=βです。βをαに変えればいいだけなので新たな公式を覚える必要はありません。また特性方程式を利用することにより、隣接2項間の漸化式へ変形できます。その後、一般項を計算しましょう。
それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。
- a_1=1、a_2=2、a_{n+2}+6a_{n+1}+9a_n=0によって定められる数列\{a_n\}の一般項を求めましょう。
特性方程式を利用すると、以下のように計算できます。
x^2+6x+9=0
(x+3)^2=0
x=-3
そのため、漸化式を以下のように変形できます。
- a_{n+2}+3a_{n+1}=-3(a_{n+1}+3a_n)
数列\{a_{n+1}+3a_n\}は初項a_2+3a_1=5、公比-3の等比数列であるため、以下のように表すことができます。
- a_{n+1}+3a_n=5·(-3)^{n-1}
こうして、隣接2項間の漸化式へ変形することができました。
それでは、この漸化式を利用して一般項を得るにはどうすればいいでしょうか。a_{n+1}=pa_n+q^nのように、指数を含む漸化式では、両辺を指数で割ることによって計算できるとすでに学んでいると思います。
漸化式は計算方法が決まっているため、こうした計算方法を覚えていないと答えを得ることができません。先ほどの式であれば、式に(-3)^{n-1}が存在します。そこで、両辺を(-3)^{n+1}で割りましょう。
\displaystyle\frac{a_{n+1}}{(-3)^{n+1}}+\displaystyle\frac{3a_n}{(-3)^{n+1}}=\displaystyle\frac{5·(-3)^{n-1}}{(-3)^{n+1}}
\displaystyle\frac{a_{n+1}}{(-3)^{n+1}}+\displaystyle\frac{3a_n}{-3·(-3)^n}=\displaystyle\frac{5·(-3)^{n-1}}{(-3)^2·(-3)^{n-1}}
\displaystyle\frac{a_{n+1}}{(-3)^{n+1}}-\displaystyle\frac{a_n}{(-3)^n}=\displaystyle\frac{5}{9}
こうして、数列\left\{\displaystyle\frac{a_n}{(-3)^n}\right\}は初項\displaystyle\frac{a_1}{(-3)^1}=-\displaystyle\frac{1}{3}、公差\displaystyle\frac{5}{9}の等差数列とわかります。そこで、以下のように計算しましょう。
\displaystyle\frac{a_n}{(-3)^n}=-\displaystyle\frac{1}{3}+(n-1)\displaystyle\frac{5}{9}
\displaystyle\frac{a_n}{(-3)^n}=\displaystyle\frac{5n-8}{9}
a_n=\displaystyle\frac{5n-8}{9}·(-3)^n
こうして、一般項を得ることができました。特性方程式が重解をもつ場合、等差数列を作ることができます。等差数列を得た後、一般項を計算しましょう。
隣接3項間の漸化式は計算方法が決まっている
漸化式は解き方が決まっているため、解き方を覚えているかどうかが重要になります。これは、隣接3項間の漸化式を計算するときも同様です。
隣接3項間の漸化式を計算するとき、必ず特性方程式を利用することになります。このとき、特性方程式の解によって一般項の計算方法が異なります。そこで、どのように計算すればいいのか覚えるようにしましょう。
解に1を含む場合、階差数列を利用します。また解に1を含まない場合、2つの漸化式を利用して引き算をしましょう。重解の場合、隣接2項間の漸化式を作った後、両辺を指数で割ります。
解き方を知っていれば、隣接3項間の漸化式の計算は簡単です。一方、解き方を知らなければ答えを得るのが難しいです。そこで、事前に解き方を学びましょう。