二次方程式の問題を解くとき、便利な公式に解と係数の関係があります。答えがわからなくても、二次方程式の係数を確認することによって、足し算やかけ算の答えを得ることができるのです。
解と係数の関係は覚えなければいけない内容の一つです。解と係数の関係について、証明方法は簡単です。そこで、どのように解と係数の関係を利用して計算問題を解けばいいのか理解しましょう。
なお解と係数の関係を利用することにより、二次式の因数分解をすることができます。複素数を含む因数分解であっても可能です。それに加えて、解と係数の関係を利用して二次方程式を作ることもできます。
それに加えて、解の存在範囲を把握できるようになりましょう。解と係数の関係は実数解を得る条件としても利用されます。そこで、解と係数の関係を利用して計算する方法を解説していきます。
もくじ
解と係数の関係と証明
まず、解と係数の関係が何を表しているのか学びましょう。二次方程式\(ax^2+bx+c=0\)の解を\(α\)、\(β\)とすると、以下の関係が成り立ちます。
- \(α+β=-\displaystyle\frac{b}{a}\)
- \(αβ=\displaystyle\frac{c}{a}\)
これが解と係数の関係です。二次方程式の解が不明であっても、解を利用して足し算やかけ算をするときの値を知ることができるのです。
・証明方法は簡単
解と係数の関係について、証明方法は簡単です。\(ax^2+bx+c=0\)について、解の公式より、2つの答えは以下のようになります。
- \(α=\displaystyle\frac{-b+\sqrt{D}}{2a}\)
- \(β=\displaystyle\frac{-b-\sqrt{D}}{2a}\)
※\(D=b^2-4ac\)
そこで、それぞれの答えを利用して足し算やかけ算をしましょう。
・\(α+β\)の計算
\(\displaystyle\frac{-b+\sqrt{D}}{2a}+\displaystyle\frac{-b-\sqrt{D}}{2a}\)
\(=\displaystyle\frac{-2b}{2a}\)
\(=-\displaystyle\frac{b}{a}\)
・\(αβ\)の計算
\(\displaystyle\frac{-b+\sqrt{D}}{2a}×\displaystyle\frac{-b-\sqrt{D}}{2a}\)
\(=\displaystyle\frac{b^2-D}{4a^2}\)
\(=\displaystyle\frac{b^2-(b^2-4ac)}{4a^2}\)
\(=\displaystyle\frac{c}{a}\)
こうして、解と係数の関係を導き出すことができました。
二次方程式の解を得る
それでは、解と係数の関係を利用して計算問題を解きましょう。対称式(αとβを入れ替えても同じになる式)の計算では、解と係数の関係が非常に役立ちます。
実際に練習問題を解くと、対称式でどのように解と係数の関係を使えばいいのかわかります。それでは\(x^2-2x+3=0\)の2つの解を\(α\)、\(β\)とすると、次の式の値は何でしょうか。
- \((α-1)(β-1)\)
- \(α^2+β^2\)
解と係数の関係より、\(α+β=2\)、\(αβ=3\)です。
1) \((α-1)(β-1)\)の計算
\((α-1)(β-1)\)
\(=αβ-(α+β)+1\)
\(=3-2+1\)
\(=2\)
2) \(α^2+β^2\)の計算
\(α^2+β^2\)
\(=(α+β)^2-2αβ\)
\(=2^2-2×3\)
\(=-2\)
このように式を変形し、\(α+β\)と\(αβ\)を含む式を作ることで答えを得ることができます。
条件がある場合の解と係数の関係
それでは、条件がある場合は解と係数の関係を利用してどのように問題を解けばいいのでしょうか。以下の問題を解きましょう。
- \(x^2+bx+2=0\)について、一つの解がもう一方の解の2倍であるとき、\(b\)と2つの解を求めましょう。
一つの解を\(α\)とすると、もう一方の解を\(2α\)と表すことができます。そのため解と係数の関係より、以下のようになります。
- \(α+2α=-b\)
- \(α×2α=2\)
\(2α^2=2\)であるため、\(α=±1\)です。そのため、以下のように場合分けをしましょう。
・\(α=1\)のとき
答えは\(1,2\)であり、\(b=-3\)となる。
・\(α=-1\)のとき
答えは\(-1,-2\)であり、\(b=3\)となる。
こうして、解と係数の関係を利用することによって答えを得ることができました。
二次式の因数分解:虚数を含む因数分解
解と係数の関係を学べば、複素数の範囲で因数分解できるようになります。つまり、解が虚数であっても因数分解できるのです。
二次方程式の2つの解を\(α\)、\(β\)とすると、\(ax^2+bx+c=0\)を以下のように変形できます。
\(ax^2+bx+c=0\)
\(a\left(x^2+\displaystyle\frac{b}{a}x+\displaystyle\frac{c}{a}\right)=0\)
\(a(x^2-(α+β)+αβ)=0\)
\(a(x-α)(x-β)=0\)
こうして、2つの解がわかれば因数分解できるとわかります。重要なのは、\(α\)、\(β\)が虚数解であっても因数分解できることです。例題として、以下の二次方程式を因数分解してみましょう。
- \(2x^2+x+1=0\)
解の公式を利用すると、2つの解は以下のようになります。
\(x=\displaystyle\frac{-1±\sqrt{7}i}{4}\)
そのため、先ほど解説した式の変形を利用すると、\(2x^2+x+1=0\)を以下のように因数分解できます。
\(2\left(x+\displaystyle\frac{1+\sqrt{7}i}{4}\right)\left(x+\displaystyle\frac{1-\sqrt{7}i}{4}\right)\)
ヒントなしで虚数解を含む二次方程式の因数分解をするのは難しいです。ただ解と係数の関係を利用すれば、複素数を利用して因数分解できるようになります。
解の公式から二次方程式を作る
次に、解と係数の関係を利用して二次方程式を作れるようになりましょう。二次方程式の2つの解が\(α\)、\(β\)であり、\(x^2\)の係数が1の場合、前述の通り以下のように因数分解できます。
- \((x-α)(x-β)=0\)
つまり、式は以下のようになります。
- \(x^2-(α+β)x+αβ=0\)
そのため2つの解がわかっている場合、二次方程式の一つを作ることができます。2つの解\(α\)、\(β\)について、\(α+β\)と\(αβ\)を計算することにより、\(x^2-(α+β)x+αβ=0\)へ値を代入すれば式を作れるのです。
それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。
- \(\displaystyle\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}\)と\(\displaystyle\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}\)を解にもつ二次方程式を一つ作りましょう。
\(α+β\)と\(αβ\)を計算すると以下のようになります。
- \(α+β=-1\)
- \(αβ=1\)
そのため、二次方程式は\(x^2+x+1=0\)です。
参考までに、\(x^2+x+1=0\)に対して解の公式を利用すると、答えは\(x=\displaystyle\frac{-1±\sqrt{3}i}{2}\)となります。そのため二つの解を利用して二次方程式を作るというのは、「二次方程式に対して解の公式を利用する過程の逆」であるとわかります。
解の存在範囲:実数解の符号
それでは、解と係数の関係を利用して解の存在範囲を計算できるようになりましょう。解の存在範囲については、既に学んでいると思います。グラフを利用することにより、以下のように実数解の符号を計算します。
- 異なる2つの正の解:\(D>0\)、\(f(0)>0\)、軸が0より大
- 異なる2つの負の解:\(D>0\)、\(f(0)>0\)、軸が0より小
- 異符号の解:\(f(0)<0\)
これらの条件の代わりとして、二次方程式の2つの解\(α\)、\(β\)を利用して表しましょう。以下のようになります。
- 異なる2つの正の解:\(D>0\)、\(α+β>0\)、\(αβ>0\)
- 異なる2つの負の解:\(D>0\)、\(α+β<0\)、\(αβ>0\)
- 異符号の解:\(αβ<0\)
証明方法は簡単です。2つの解が\(α>0\)、\(β>0\)である場合、\(α+β>0\)、\(αβ>0\)が成り立つのは当然です。また2つの解が\(α<0\)、\(β<0\)である場合、\(α+β<0\)、\(αβ>0\)が成り立ちます。同様に異符号の解では\(αβ<0\)となります。
なお、虚数には大小関係がないものの、実数には大小関係があります。そのため数字の大小関係(正や負の概念)がある場合、実数解でなければいけません。そこで、2つの解が両方とも正または負の場合、\(D>0\)を条件に加えましょう。
\(D>0\)が条件で必要な理由としては、虚数解である可能性があるからです。例えば2つの解が\(1+i\)と\(1-i\)の場合、\(α+β=2\)、\(αβ=2\)となります。そのため、判別式を利用して解が実数であることを確認しましょう。
それでは\(x^2-4ax+a+2=0\)が異符号の解をもつ条件は何でしょうか。\(αβ=a+2\)であるため、この値が負になると異符号の解をもちます。つまり、以下のようになります。
\(a+2<0\)
\(a<-2\)
こうして、答えは\(a<-2\)であるとわかります。なお、グラフを用いて計算する方法であっても、以下のように答えは同じです。
\(f(0)=a+2<0\)
\(a<-2\)
解と係数の関係を利用する場合であっても、グラフを用いる場合であっても、計算内容は同じです。
なお、解と係数の関係を利用して解の存在範囲を計算する場合、単純な問題のみ利用できます。複数の条件が存在する複雑な問題では、解と係数の関係ではなく、グラフを利用して問題を解かなければいけません。そのため解の存在範囲を計算するとき、グラフを利用する方法を理解するほうが優先度は高いです。
解と係数の関係を学び、応用問題を解けるようにする
数学で重要な内容の一つが解と係数の関係です。二次方程式の係数に着目すると、答えを得ていなくても、2つの解の関係がわかります。証明方法は簡単であるため、なぜ解と係数の関係が成り立つのか把握しましょう。
対称式の答えを得るとき、解と係数の関係が役立ちます。式の展開や因数分解を行い、\(α+β\)と\(αβ\)によって構成される式を作り、答えを得ましょう。これは、条件がある場合も同様です。
また解と係数の関係を学べば、虚数を含む因数分解を行えるようになります。ヒントなしで虚数を含む因数分解をするのは難しいですが、解と係数の関係を利用すれば因数分解は簡単です。さらには、2つの解を利用して二次方程式を作れるようになります。
二次方程式の係数を確認することで、2つの解の足し算やかけ算をするときの結果がわかります。この関係を利用して問題を解けるようになりましょう。