高校数学では、文字を含む分数の計算をしなければいけません。かけ算と割り算では、特に苦労なく分数を計算できます。一方、分数の足し算または引き算では、分母が同じでなければいけません。そのため、約分または通分をすることによって分母をそろえる必要があります。
そこで因数分解をしたり、分母と分子の両方に同じ値をかけたりすることにより、分母をそろえるようにしましょう。
なお分数式の計算では、帯分数を利用することによって計算を簡単にできることがあります。また繁分数式を計算したり、部分分数分解を利用したりすることで計算する方法もあります。
分数に文字式を含む整数について、どのように計算すればいいのか学びましょう。そこで、分数式の計算方法を解説していきます。
もくじ
分数式の意味と約分・割り算
分母と分子が整式(単項式と多項式による式)となっている分数を分数式といいます。例えば、以下は分数式です。
- \(\displaystyle\frac{1}{x}\)
- \(\displaystyle\frac{x-1}{x^2+y}\)
一方、分母または分子が整式でない場合は分数式ではありません。例えば、\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{x}}\)は分数式ではないです。
・分数式の約分
なお、分数式では約分が可能です。小学校で学んだ計算方法と同じであり、分母と分子に同じ値がある場合、割ることによって値を消すことができます。例えば以下の計算では、因数分解することによって約分しましょう。
\(\displaystyle\frac{x^2-1}{x^3+1}\)
\(=\displaystyle\frac{(x+1)(x-1)}{(x+1)(x^2-x+1)}\)
\(=\displaystyle\frac{x-1}{x^2-x+1}\)
因数分解によって同じ値を得ることができれば、このように通分することができます。
分数式の通分・かけ算:足し算や引き算を分数式で行う
なお分数式の足し算または引き算をする場合、必ず分母が一致している必要があります。そのため、通分をしなければいけません。分数では、分母と分子に同じ値をかけることができます。そこでかけ算を行い、分母をそろえましょう。
こうして通分をすれば、足し算や引き算を行えるようになります。それでは、以下の計算をしてみましょう。
\(\displaystyle\frac{1}{x^2+x}-\displaystyle\frac{1}{x^2-1}\)
因数分解をした後、分母をそろえると計算することができます。以下のようになります。
\(\displaystyle\frac{1}{x^2+x}-\displaystyle\frac{1}{x^2-1}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{x(x+1)}-\displaystyle\frac{1}{(x+1)(x-1)}\)
\(=\displaystyle\frac{x-1}{x(x+1)(x-1)}-\displaystyle\frac{x}{x(x+1)(x-1)}\)
\(=-\displaystyle\frac{1}{x(x+1)(x-1)}\)
分母がそろっていない場合、通分によって分母をそろえましょう。足し算や引き算で分母をそろえる必要があるのは、すべての分数で共通しています。
仮分数を帯分数へ変換し、計算する
場合によっては、仮分数を帯分数へ変換すると計算しやすくなることがあります。分母と分子が同じ場合、わり算によって約分すれば、値を消すことができます。そこで、仮分数の形を変えるのです。
例えば、\(\displaystyle\frac{x^2+3x+5}{x+1}\)を帯分数に変換する場合、どのようにすればいいでしょうか。分母が\(x+1\)であるため、分子に\(x+1\)を作ればいいとわかります。そこで、\(x+1\)を含む式を分子に作りましょう。
ただ因数分解だけでは式を作ることができません。そこで、因数分解と足し算(または引き算)を利用しましょう。そうすると、\(x^2+3x+5=(x+1)(x+2)+3\)となります。そこで、以下のように式を変形します。
\(\displaystyle\frac{x^2+3x+5}{x+1}\)
\(=\displaystyle\frac{(x+1)(x+2)+3}{x+1}\)
\(=x+2+\displaystyle\frac{3}{x+1}\)
整式と分数式を一つにまとめる計算をすることは多いです。このとき、一つの分数式を整式と分数式に分けられるようになることも重要です。
例えば、以下の問題の答えは何でしょうか。
\(\displaystyle\frac{x^2+x+2}{x+1}-\displaystyle\frac{x^2-x+2}{x-1}\)
この式を計算するとき、通分によって引き算をしてもいいです。ただ、その計算方法では面倒です。そこで、仮分数を帯分数に変えて計算しましょう。以下のようになります。
\(\displaystyle\frac{x^2+x+2}{x+1}-\displaystyle\frac{x^2-x+2}{x-1}\)
\(=\displaystyle\frac{x(x+1)+2}{x+1}-\displaystyle\frac{x(x-1)+2}{x-1}\)
\(=x+\displaystyle\frac{2}{x+1}-x-\displaystyle\frac{2}{x-1}\)
\(=\displaystyle\frac{2(x-1)}{(x+1)(x-1)}-\displaystyle\frac{2(x+1)}{(x+1)(x-1)}\)
\(=-\displaystyle\frac{4}{(x+1)(x-1)}\)
こうして、答えを得ることができました。
分母と分子に分数式が存在する繁分数式の計算
次に、繁分数式の計算方法を学びましょう。分母または分子に分数式が存在する場合、繁分数式といいます。例えば、以下の式は繁分数式です。
- \(\displaystyle\frac{1-\displaystyle\frac{1}{x}}{1+\displaystyle\frac{1}{x}}\)
問題の解き方は2パターンあります。一つは、わり算をかけ算に変換する方法です。分数はわり算でもあるため、以下のようにかけ算の式に変形することで計算しましょう。
\(\displaystyle\frac{1-\displaystyle\frac{1}{x}}{1+\displaystyle\frac{1}{x}}\)
\(=\left(1-\displaystyle\frac{1}{x}\right)÷\left(1+\displaystyle\frac{1}{x}\right)\)
\(=\displaystyle\frac{x-1}{x}÷\displaystyle\frac{x+1}{x}\)
\(=\displaystyle\frac{x-1}{x}×\displaystyle\frac{x}{x+1}\)
\(=\displaystyle\frac{x-1}{x+1}\)
もう一つの計算方法としては、繫分数式のまま通分する方法があります。分数の計算では分母と分子に同じ数をかけることができるため、分母が消える値をかけましょう。以下のように計算します。
\(\displaystyle\frac{1-\displaystyle\frac{1}{x}}{1+\displaystyle\frac{1}{x}}\)
\(=\displaystyle\frac{\left(1-\displaystyle\frac{1}{x}\right)×x}{\left(1+\displaystyle\frac{1}{x}\right)×x}\)
\(=\displaystyle\frac{x-1}{x+1}\)
例えば繫分数式で同じ値が分母に含まれている場合など、この計算方法のほうが楽なケースがあります。
・複雑な繫分数式の計算問題
それでは、以下の繫分数式の計算をしてみましょう。
- \(\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{1}{x+1}}}\)
このような問題については、それぞれの分数を一つずつ簡単にしていきましょう。まず、\(x+\displaystyle\frac{1}{x+1}\)に着目すると以下のようになります。
\(x+\displaystyle\frac{1}{x+1}\)
\(\displaystyle\frac{x(x+1)}{x+1}+\displaystyle\frac{1}{x+1}\)
\(\displaystyle\frac{x^2+x+1}{x+1}\)
そこで、以下のように式を変えましょう。
\(\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{x^2+x+1}{x+1}}}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{x+\displaystyle\frac{x+1}{x^2+x+1}}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{x(x^2+x+1)+x+1}{x^2+x+1}}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{\displaystyle\frac{x^3+x^2+2x+1}{x^2+x+1}}\)
\(=\displaystyle\frac{x^2+x+1}{x^3+x^2+2x+1}\)
こうして、繫分数式の計算をすることができました。
部分分数分解によって答えを得る
一つの分数式を複数の分数式へと分解する方法を部分分数分解といいます。部分分数分解の公式を知っていれば、楽に計算できるケースがあります。部分分数分解では、以下の公式を利用します。
- \(\displaystyle\frac{1}{(x+a)(x+b)}\)\(=\displaystyle\frac{1}{b-a}\left(\displaystyle\frac{1}{x+a}-\displaystyle\frac{1}{x+b}\right)\)
以下のように計算すると、公式が成り立つとわかります。
\(\displaystyle\frac{1}{b-a}\left(\displaystyle\frac{1}{x+a}-\displaystyle\frac{1}{x+b}\right)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{b-a}·\displaystyle\frac{b-a}{(x+a)(x+b)}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{(x+a)(x+b)}\)
それでは、部分分数分解を利用して計算してみましょう。以下の問題の答えは何でしょうか。
\(\displaystyle\frac{1}{(x+1)(x+3)}\)\(+\displaystyle\frac{1}{(x+3)(x+5)}\)\(+\displaystyle\frac{1}{(x+5)(x+7)}\)
通分によって計算することは可能です。ただ、その場合は計算過程が複雑になります。そこで、部分分数分解の公式を利用して計算しましょう。部分分数分解をする場合、以下のように計算できます。
\(\displaystyle\frac{1}{(x+1)(x+3)}\)\(+\displaystyle\frac{1}{(x+3)(x+5)}\)\(+\displaystyle\frac{1}{(x+5)(x+7)}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}·\left(\displaystyle\frac{1}{x+1}-\displaystyle\frac{1}{x+3}\right)\)\(+\displaystyle\frac{1}{2}·\left(\displaystyle\frac{1}{x+3}-\displaystyle\frac{1}{x+5}\right)\)\(+\displaystyle\frac{1}{2}·\left(\displaystyle\frac{1}{x+5}-\displaystyle\frac{1}{x+7}\right)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}·\left(\displaystyle\frac{1}{x+1}-\displaystyle\frac{1}{x+7}\right)\)
\(=\displaystyle\frac{1}{2}·\displaystyle\frac{x+7-(x+1)}{(x+1)(x+7)}\)
\(=\displaystyle\frac{3}{(x+1)(x+7)}\)
こうして、部分分数分解をすることによって答えを得ることができました。部分分数分解は重要ではなく、利用できる場面は少ないです。ただ、利用できる場合は計算が簡単になります。
約分や通分により、分数式の計算を行う
小学校で学ぶ分数の計算で文字は含まれておらず、数字を用いて計算することになります。そこで、整式を含む分数の計算を行えるようになりましょう。
分数に単項式や多項式が含まれていても、計算のルールは同じです。かけ算や割り算をすることにより、約分や通分をすることができます。また足し算や引き算をするとき、必ず分母をそろえるようにしましょう。
なお、分数式では繁分数式の計算をすることがあります。また場合によっては、部分分数分解が有効なケースがあります。
分数式では計算方法にルールがあるため、どのように計算すればいいのか理解しましょう。計算法は単項式や多項式を含まない場合と同じであるため、分数の計算ルールを復習して答えを得るようにしましょう。