数学では計算をしなければいけません。高校数学では、より高度な計算をすることになります。そこで、どのように実数の計算をすればいいのか学びましょう。

高校数学の実数計算では、平方根の計算方法を理解しましょう。整数とは異なり、平方根の計算ではやり方を知っていないと問題を解くことができません。また、実数の計算では絶対値も重要です。絶対値を利用すると、答えが2つ以上になります。

これら平方根と絶対値の計算を理解すれば、一次不等式の問題を解けるようになります。平方根や絶対値を利用している一次不等式の問題を解けるようにしましょう。

数学では、やり方を知っていないと解けない問題がたくさんあります。実数の計算では、問題を解けるかどうかは「解き方を知っているかどうか」の違いになります。そこで、高校数学での実数の計算方法を解説していきます。

実数には種類がある

実数には複数の種類があります。その中でも、私たちが頻繁に利用するのが有理数です。有理数には以下が含まれます。

  • 整数
  • 有限小数
  • 循環小数

整数については既に知っていると思います。0や1、-3などが整数です。また有限小数とは、0.5や\(\displaystyle\frac{1}{4}\)など、終わりのある数を指します。また循環小数では、以下のように同じ数が何度も繰り返される数字を指します。

  • \(\displaystyle\frac{1}{3}=0.33333…\)

要は、分数で表せる数が有理数と考えましょう。一方で平方根は実数の中でも無理数となります。平方根では、循環小数のような規則性はありません。高校数学では、これらの実数を利用してより高度な計算をします。

ただ有理数の計算はすでに小学校や中学校で学んでいます。そのため高校数学では、無理数の計算方法を学ぶようにしましょう。特に重要なのが分母の有理化と二重根号です。これらは解き方を理解していないと計算が難しい問題となります。

平方根での分母の有理化

平方根の足し算や引き算、かけ算、割り算の性質を既に理解している場合、次に学ぶべき無理数の計算として、分母の有理化があります。ただ一般的な分母の有理化ではなく、分母に2つの平方根をもつ分子について、分母の有理化をします。

例えば、以下の計算はどのようにすればいいでしょうか。

  • \(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}-\sqrt{2}}\)

計算方法を理解していれば、簡単に問題を解くことができます。しかし、解き方を知らなければ答えを出すことはできません。方法としては以下の乗法公式を利用しましょう。

  • \((x+a)(x-a)=x^2-a^2\)

分母の有理化をするとき、この公式を利用します。分母に何を掛ければ、二乗の式を作れるでしょうか。分子と分母に対して、\(\sqrt{3}+\sqrt{2}\)を掛けましょう。そうすると、以下のように答えを得ることができます。

\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{3}-\sqrt{2}}\)

\(=\displaystyle\frac{1×\color{red}{(\sqrt{3}+\sqrt{2})}}{(\sqrt{3}-\sqrt{2})\color{red}{(\sqrt{3}+\sqrt{2})}}\)

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}+\sqrt{2}}{\sqrt{3}^2-\sqrt{2}^2}\)

\(=\displaystyle\frac{\sqrt{3}+\sqrt{2}}{3-2}\)

\(=\sqrt{3}+\sqrt{2}\)

分母に2つ以上の平方根がある場合、乗法公式を利用して分母の有理化をしましょう。

二重根号を簡略化する

高度な数学では、二重根号の簡略化も行います。平方根の中に平方根がある計算はどのようにすればいいでしょうか。例として、以下の問題を解きましょう。

  • \(\sqrt{9-2\sqrt{14}}\)

平方根を外すためには、必ず二乗を作らなければいけません。そこで、以下の乗法公式を利用しましょう。

  • \((x+a)^2=x^2+2ax+a^2\)
  • \((x-a)^2=x^2-2ax+a^2\)

この公式を使えば、二乗の式を作ることができます。つまり、以下を満たす式を見つけなければいけません。

  • \(\sqrt{9-2\sqrt{14}}=\sqrt{(\sqrt{x}-\sqrt{a})^2}\)

ここで、右辺を展開してみましょう。

  • \(\sqrt{9-2\sqrt{14}}=\sqrt{x+a-2\sqrt{ax}}\)

つまり、\(x+a=9\)かつ\(ax=14\)となる数字を見つければいいことがわかります。このように考えると、以下のように式を変形できます。

\(\sqrt{9-2\sqrt{14}}\)

\(=\sqrt{(\sqrt{7}-\sqrt{2})^2}\)

\(=\sqrt{7}-\sqrt{2}\)

因数分解では、たし算とかけ算を利用することによって問題を解きます。因数分解の応用問題が二重根号です。

なお、計算するときに\(\sqrt{(\sqrt{2}-\sqrt{7})^2}\)\(=\sqrt{2}-\sqrt{7}\)としてはいけません。理由としては、\(\sqrt{2}-\sqrt{7}\)では答えがマイナスになるからです。

例えば、\((-\sqrt{2})^2=2\)であり、\((-\sqrt{2})^2=-2\)ではありません。そのため二重根号でマイナス記号がある場合、「ルート内の数字をマイナスにしてはいけない」という条件があります。二重根号の中にある記号がプラスの場合、注意点はありません。一方、記号がマイナスの場合は答えの出し方に注意しましょう。

絶対値を利用すると答えが2つになる

ここまでの内容を理解すれば、絶対値についてより深く学べるようになります。絶対値の概念については既に理解していると思います。たとえマイナスの記号があるとしても、プラスの答えになるのが絶対値です。プラスやマイナスに関係なく、0からいくら離れているのかを示すのが絶対値です。

例として、以下の問題を解きましょう。

  • \(|x-2|=3\)

この式では、\(x-2=3\)の式を解けば答えがでます。また\(|-3|=3\)なので、\(x-2=-3\)になればいいです。そのため、答えは\(x=5,-1\)です。

なお\(x-2=-3\)について、両辺に-1をかけましょう。そうすると、\(-(x-2)=3\)となります。\(|x-2|=3\)と\(-(x-2)=3\)を比べると、絶対値を外して-1を掛ければいいことがわかります。言いかえると、絶対値の中にある値がマイナスになる場合、絶対値を外すときに-1をかけるようにしましょう。

平方根の二乗と絶対値の関係

ここまでの内容を理解すれば、平方根の二乗の計算ができるようになります。例えば、以下の式はどのように考えればいいでしょうか。

  • \(\sqrt{(a-2)^2}=3\)

\(\sqrt{(a-2)^2}\)では、二乗しているので必ず答えはプラスになります。\((a-2)\)の値がプラスであってもマイナスであっても、二乗すれば答えはプラスです。つまり、\(\sqrt{(a-2)^2}=|a-2|\)に変換することができます。

そのため、以下の関係になることを理解しましょう。

  • \(\sqrt{A^2}=|A|\)

つまり、先ほどの式は以下のように計算することができます。

\(\sqrt{(a-2)^2}=3\)

\(|a-2|=3\)

そこで\(a-2=3\)と\(-(a-2)=3\)を解くことにより、\(a=-1,5\)と答えを得られます。重要なのは、\(\sqrt{(a-2)^2}=a-2\)としてはいけないことです。\(\sqrt{(a-2)^2}=|a-2|\)です。つまり、答えが2つあります。

・根号の外し方を学ぶ

先ほど、以下のように計算してはいけないと解説しました。

  • \(\sqrt{(\sqrt{2}-\sqrt{7})^2}=\sqrt{2}-\sqrt{7}\)

ここまでの内容を学んだ場合、この理由を理解できます。\(\sqrt{(\sqrt{2}-\sqrt{7})^2}=|\sqrt{2}-\sqrt{7}|\)です。\(\sqrt{2}\)よりも、\(\sqrt{7}\)のほうが数は大きいです。そのためルート内の数字がマイナスになる場合、プラスに変えなければいけません。つまり、以下のようになります。

\(\sqrt{(\sqrt{2}-\sqrt{7})^2}\)

\(=|\sqrt{2}-\sqrt{7}|\)

\(=-(\sqrt{2}-\sqrt{7})\)

\(=\sqrt{7}-\sqrt{2}\)

このように絶対値を学ぶことによって、無理数の計算方法がわかるようになります。

絶対値を含む一次方程式

それでは、絶対値を含む一次方程式はどのように計算すればいいのでしょうか。絶対値の数字がプラスなのか、それともマイナスなのかによって場合分けをしましょう。数字がマイナスになる場合、絶対値の記号を外すときに-1をかける必要があるからです。

例として、以下の計算をしてみましょう。

  • \(|x-3|+|x-2|=x\)

これまで説明した通り、プラスなのかマイナスなのかによって絶対値を外すときの符合が変わります。そこで、以下のように場合分けをして答えを出しましょう。

・\(x≧3\)の場合

\(|x-3|+|x-2|=x\)

\((x-3)+(x-2)=x\)

\(x=5\)

\(x≧3\)を満たすため、答えとして適する。

・\(2≦x<3\)の場合

\(|x-3|+|x-2|=x\)

\(-(x-3)+(x-2)=x\)

\(x=1\)

\(2≦x<3\)を満たさないため、答えとして不適。

・\(x<2\)の場合

\(|x-3|+|x-2|=x\)

\(-(x-3)-(x-2)=x\)

\(-3x=-5\)

\(x=\displaystyle\frac{5}{3}\)

\(x<2\)を満たすため、答えとして適する。以上より、答えは\(x=5,\displaystyle\frac{5}{3}\)です。

連立一次不等式の計算方法

ここまでの内容を理解した後、連立一次不等式の解き方を学びましょう。2つの不等式を満たす数字を出すのです。2つの不等式を満たす答えを探すだけなので、連立一次不等式の計算は難しくありません。

不等式では、同じ数で両辺を掛けたり割ったりしても答えは同じになります。またマイナスを掛ける場合、不等号の向きが逆になります。これら基本的な知識があれば、連立一次不等式の問題を解くことができます。

例えば、以下の連立一次不等式の答えは何でしょうか。

\(\begin{eqnarray} \left\{\begin{array}{l}2x+4<6\\-3x-1<2\end{array}\right.\end{eqnarray}\)

連立一次不等式では、それぞれの式を解くようにしましょう。以下のようになります。

\(2x+4<6\)

\(2x<2\)

\(x<1\)

また、もう一方の式を計算すると以下のようになります。

\(-3x-1<2\)

\(-3x<3\)

\(x>-1\)

連立一次不等式では、2つの式の条件を満たす必要があります。そのため、答えは\(-1<x<1\)です。

絶対値を含む一次不等式の計算

それでは、次に絶対値を含む一次不等式の計算をしましょう。絶対値を外すとき、マイナスの場合は必ず-1を掛けるようにしましょう。そのため絶対値を含む一次不等式では、一次方程式と同様に場合分けをする必要があります。

例えば、以下の一次不等式の答えは何でしょうか。

  • \(|x-3|+|x-5|<x\)

絶対値を含む一次方程式と同じように、場合分けをすることで問題を解いていきましょう。

・\(x≧5\)の場合

\(|x-3|+|x-5|<x\)

\((x-3)+(x-5)<x\)

\(x<8\)

\(x≧5\)なので、不等式は\(5≦x<8\)となります。-①

・\(3≦x<5\)の場合

\(|x-3|+|x-5|<x\)

\((x-3)-(x-5)<x\)

\(2<x\)

\(3≦x<5\)なので、不等式は\(3≦x<5\)となります。-②

・\(x<3\)の場合

\(|x-3|+|x-5|<x\)

\(-(x-3)-(x-5)<x\)

\(-3x<-8\)

\(x>\displaystyle\frac{8}{3}\)

\(x<3\)なので、不等式は\(\displaystyle\frac{8}{3}<x<3\)となります。-③

①、②、③をすべて合わせると、答えは\(\displaystyle\frac{8}{3}<x<8\)です。

実数や絶対値、不等式を用いる計算方法

高度な数学では、実数の計算をするときに無理数を利用します。そこで、無理数の計算方法を学びましょう。解き方を理解していないと、解けない問題がほとんどです。

また無理数の計算と関係するのが絶対値です。平方根の二乗は絶対値となり、両方の関係性を理解しましょう。また絶対値を含む一次方程式については、場合分けすることによって答えを出すことができます。

さらに不等式を利用する計算方法も重要です。連立一次不等式では、両方の不等式が成り立つ条件を記しましょう。また絶対値を含む一次不等式では、場合分けすることによって式が成り立つ条件を記していく必要があります。

解き方を理解していない場合、答えを出せないのが実数の計算です。そこで無理数や絶対値、不等式を含む式の計算方法を理解しましょう。