数列の計算をする際、\(n\)の値を無限大に大きくするときにどのような答えを得られるのか学びましょう。こうした数列を無限数列といいます。
無限数列でどのような答えを得られるのか直感で判断するのは難しいです。そこで、数列の極限で得られる答えを計算できるようになりましょう。極限では多く場合、収束または発散することになるため、これによって答えを得ることができます。
なお、直接的な計算が難しいケースもあります。この場合、2つの数列を用いて挟み撃ちをします。これによって答えを得る方法をはさみうちの原理といいます。はさみうちの原理によっても答えを得ることができます。
それでは、どのように考えて数列の極限を計算すればいいのでしょうか。無限数列の基本を解説していきます。
もくじ
無限数列による数列の収束と発散
末項が存在しない数列を無限数列といいます。数列で\(\{a_n\}\)と記す場合、通常は無限数列を指します。無限数列では、多くのケースで収束または発散します。
・無限数列での収束
例えば\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{1}{n}\)はどのような値でしょうか。\(n\)の値を無限大(\(∞\))まで大きくする場合、値はほぼ0になります。そのため、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{1}{n}=0\)と考えます。実際には0ではないものの、0とみなすのです。
また\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \left(\displaystyle\frac{1}{n}+2\right)\)については、\(\displaystyle\frac{1}{n}\)が0になるため、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \left(\displaystyle\frac{1}{n}+2\right)=2\)となります。このように、特定の値に収束していくのです。
・無限数列での発散
一方、無限に値が大きくなる(または小さくなる)こともあります。例えば、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } n=∞\)となります。\(n\)の値が無限大に大きくなる場合、答えは\(∞\)となります。一方、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } -n=-∞\)となります。
数列\(\{a_n\}\)が特定の値に収束しない場合、正または負に発散することになります。それでは、第\(n\)項が\(5n-n^2\)の場合、数列の極限はどのようになるでしょうか。以下のように計算しましょう。
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (5n-n^2)\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } n^2\left(\displaystyle\frac{1}{n}-1\right)\)
\(=∞(0-1)\)
\(=-∞\)
こうして、答えは\(-∞\)とわかりました。
参考までに、場合によっては収束も発散もしないケースがあります。例えば\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (-1)^n\)の場合、\(1\)と\(-1\)を繰り返すことになります。この場合、「数列は振動する」といいます。
分数式、無理式、数列の和の計算
それでは、分数式や無理式、数列の和について計算できるようになりましょう。方法はどれも共通しており、最も大きい\(n\)の次数を用いて割ったり、分母の有利化をしたりして0に収束するかどうかを確認しましょう。
第\(n\)項が以下の式である場合、数列の極限はどのような値になるでしょうか。
- \(\displaystyle\frac{3n^2+4n}{2n^2-1}\)
- \(\sqrt{n^2+2n}-n\)
1)
最も大きい\(n\)の次数を利用して分母と分子を割りましょう。
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{3n^2+4n}{2n^2-1}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{3+\displaystyle\frac{4}{n}}{2-\displaystyle\frac{1}{n^2}}\)
\(=\displaystyle\frac{3+0}{2+0}\)
\(=\displaystyle\frac{3}{2}\)
2)
無理式については、最も大きい次数を利用して割り算をしたり、有利化をしたりすることで計算しましょう。
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (\sqrt{n^2+2n}-n)\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{n^2+2n-n^2}{\sqrt{n^2+2n}+n}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{2n}{\sqrt{n^2+2n}+n}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{2}{\sqrt{1+\displaystyle\frac{2}{n}}+1}\)
\(=\displaystyle\frac{2}{\sqrt{1+0}+1}\)
\(=1\)
次に、数列の和について無限数列を計算しましょう。以下の式について、極限の値は何でしょうか。
- \(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{2+5+…+3n-1}{1+3+…+2n-1}\)
公式を用いて以下のように計算しましょう。
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{2+5+…+3n-1}{1+3+…+2n-1}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}{(3k-1)}}{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}{(2k-1)}}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{\displaystyle\frac{3}{2}n(n+1)-n}{n(n+1)-n}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{\displaystyle\frac{3}{2}n^2+\displaystyle\frac{1}{2}n}{n^2}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \left(\displaystyle\frac{3}{2}+\displaystyle\frac{1}{2n}\right)\)
\(=\displaystyle\frac{3}{2}\)
このように計算することで答えを得ることができます。
極限の条件を利用して数列を決定する
それでは、極限の条件を利用することで数列を決定できるようになりましょう。ここまで解説したように、式を変形することで答えを計算します。以下の問題の答えは何でしょうか。
- 数列\(\{a_n\}\)が\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (3n-2)a_n=4\)を満たすとき、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } na_n\)を求めましょう。
条件式を利用する必要があるため、以下のように式を変形して計算しましょう。
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } na_n\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (3n-2)a_n×\displaystyle\frac{n}{3n-2}\)
\(=\displaystyle \lim_{ n \to \infty } (3n-2)a_n×\displaystyle\frac{1}{3-\displaystyle\frac{2}{n}}\)
\(=4×\displaystyle\frac{1}{3-0}\)
\(=\displaystyle\frac{4}{3}\)
こうして、答えを得ることができました。
はさみうちの原理:不等式の利用
ここまで、式を直接計算することによって答えを得る方法を解説してきました。ただ場合によっては、直接計算することで答えを得られないケースがあります。この場合、二つの数列を利用して両側を挟みましょう。
例えば\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n\)について、\(0<\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n<0\)であることがわかれば、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n=0\)となります。これがはさみうちの原理です。
それでは、はさみうちの原理を利用して答えを得ましょう。以下の式について、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n\)を求めましょう。
- \(a_n=\displaystyle\frac{1}{n^2+1}+\displaystyle\frac{1}{n^2+2}+…\)\(+\displaystyle\frac{1}{n^2+n}\)
\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n\)を直接計算するのは難しいため、以下の不等号を作りましょう。
\(a_n=\displaystyle\frac{1}{n^2+1}+\displaystyle\frac{1}{n^2+2}+…+\displaystyle\frac{1}{n^2+n}\)\(<\displaystyle\frac{1}{n^2}+\displaystyle\frac{1}{n^2}+…+\displaystyle\frac{1}{n^2}\)
分母が小さい場合、値は大きくなるため、この関係が成り立ちます。そこで、不等号の右側を解きましょう。
\(\displaystyle\frac{1}{n^2}+\displaystyle\frac{1}{n^2}+…+\displaystyle\frac{1}{n^2}\)
\(=\displaystyle\frac{1}{n^2}×n\)
\(=\displaystyle\frac{1}{n}\)
また、\(n\)は正の整数なので\(0<a_n\)です。そのため、以下の関係が成り立ちます。
- \(0<a_n<\displaystyle\frac{1}{n}\)
なお、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{1}{n}=0\)です。そのため、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n=0\)とわかります。こうして、はさみうちの原理を利用することで答えを得ることができました。
追い出しの原理:答えが無限大のときに利用
はさみうちの原理と同じように、不等号を利用することで答えを得るほかの方法に追い出しの原理があります。答えが正の無限大、または負の無限大であるときに追い出しの原理を利用できます。
例えば\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n\)を調べるとします。このとき\(a_n>b_n\)であり、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } b_n=∞\)であるなら、当然ながら\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } a_n=∞\)です。これが追い出しの原理です。それでは、以下の問題の答えは何でしょうか。
- 極限\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \left(\sqrt{n}+sin\displaystyle\frac{π}{5}\right)\)を求めましょう。
\(0<sin\displaystyle\frac{π}{5}\)であるため、以下の不等式を作れます。
- \(\sqrt{n}<\sqrt{n}+sin\displaystyle\frac{π}{5}\)
なお、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \sqrt{n}=∞\)であるため、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \left(\sqrt{n}+sin\displaystyle\frac{π}{5}\right)=∞\)となります。こうして、追い出しの原理を利用することで答えを得ることができました。
二項定理を用いる指数型の極限の計算
なお、はさみうちの原理を利用するときに二項定理を用いると計算できるケースがあります。指数型の極限を計算するとき、二項定理を利用できないか確認しましょう。復習すると、以下が二項定理の公式です。
\((a+b)^n\)
\(=_nC_0a^n+_nC_1a^{n-1}b+_nC_2a^{n-2}b^2…\)\(+_nC_ra^{n-r}b^r+…\)\(+_nC_nb^n\)
それでは、二項定理を用いて以下の問題を解いてみましょう。
- \(2^n>\displaystyle\frac{n^3}{6}\)を証明した後、極限\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{n^2}{2^n}\)の値を求めましょう。
\(2^n=(1+1)^n\)と考えて、二項定理を用いて以下のように式を展開します。
\((1+1)^n\)
\(=1+_nC_1+_nC_2+_nC_3+…\)
\(=1+n+\displaystyle\frac{n(n-1)}{2}\)\(+\displaystyle\frac{n(n-1)(n-2)}{6}\)\(+…\)
そのため、以下の不等式を作れます。
\(2^n>1+n+\displaystyle\frac{n(n-1)}{2}\)\(+\displaystyle\frac{n(n-1)(n-2)}{6}\)
\(2^n>\displaystyle\frac{n^3+5n+6}{6}\)
こうして、以下の不等式を作れます。
\(2^n>\displaystyle\frac{n^3+5n+6}{6}\)\(>\displaystyle\frac{n^3}{6}\)
二項定理を利用することにより、\(2^n>\displaystyle\frac{n^3}{6}\)を証明できました。そこで、以下のように式を変形しましょう。
\(2^n>\displaystyle\frac{n^3}{6}\)
\(\displaystyle\frac{1}{2^n}<\displaystyle\frac{6}{n^3}\)
\(\displaystyle\frac{n^2}{2^n}<\displaystyle\frac{6}{n}\)
また、\(n\)は整数なので\(0<\displaystyle\frac{n^2}{2^n}\)です。
- \(0<\displaystyle\frac{n^2}{2^n}<\displaystyle\frac{6}{n}\)
なお\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{6}{n}=0\)であるため、はさみうちの原理より、\(\displaystyle \lim_{ n \to \infty } \displaystyle\frac{n^2}{2^n}=0\)です。こうして、答えを得ることができました。
無限数列での答えを得られるようにする
数列の計算では、末項が存在しないケースがあります。そこで、無限数列の計算を行えるようになりましょう。
無限数列では特定の値に収束したり、発散によって値が無限大になったりします。直感では答えがわからないため、計算することによって答えを得ましょう。
なお、極限を直接計算できないケースがあります。この場合、はさみうちの原理や追い出しの原理を利用しましょう。場合によっては二項定理とはさみうちの原理を利用することにより、極限の答えを得られるケースもあります。
無限数列で答えを得る方法は決まっています。そこで、どのように数列の極限に関する問題を解けばいいのか学びましょう。